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書評コーナー

季刊誌43号より

嘘をつくコレステロール

嘘をつくコレステロール

■林洋著、重松洋監修/日経プレミアシリーズ
 ■ISBN-10: 4532261074
 ■ISBN-13: 978-4532261078
 ■18cm 235頁 価格850円(税別)


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突っ込みどころ満載の本。先ずタイトル。コレステロールが嘘をつくはずもなく、 嘘をつくのはヒトであり、特に利益相反のある専門家が嘘をつくのはよく知られた事実です。

第1章の“低過ぎてもダメという「伝説」が生まれた理由”と“「下がり過ぎ」と「死亡率」の因果は逆だった” には、『(略)つまり、コレステロールが低い人とはこういう人たち(評者注:肝機能障害患者と末期の癌患者)で、 コレステロールが下がったから死亡率が上がったのではなくて、もともと死亡率が高い人たちで、 コレステロールが低いのです』とあります。多くの疫学調査では、調査開始から数年以内に死亡した人は除いて (まさに“こういう人たち”の影響を除くため)検討していますので、この批判はまったく的外れです。

第5章の“下げれば、動脈硬化はよくなる”では、コレステロールを下げた結果、 死亡するような他の病気が逆に増える、という論に対して「この論議に決着をつけるためには、 もっとコレステロールを下げるしかないのです」と、凄い論理の飛躍がみられます。

数字のウソを駆使しようとして、かえって支離滅裂になっています。(き)