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書評コーナー

季刊誌47号より

潜入 閉鎖病棟 「安心・安全」監視社会の精神病院

潜入 閉鎖病棟

■柳田勝英著/現代書館
 ■ISBN-10: 4768456731
 ■ISBN-13: 978-4768456736
 ■四六版 198頁 価格1800円(税別)


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第一部は、2002年5月から9月まで著者が精神病院に入院したときの経験である。「潜入」とあるが、 詐病なのか本当に精神を病んでいたのかは、わからない(文学賞に応募して落選した、とある)。 ここで、彼は、障害者や病人等、ハンディを持つ人たちの生きにくさを実感する。彼の場合は、 家族が退院を受け入れてくれたけれども、家族のいない人や、家族が受け入れを拒否する人などは、 病気が治ってもずっと病院の中で暮らさなければならない。

本書の特色は第二部、第三部にある。著者は、精神病院と、かつて自分が勤務していた 特別養護老人ホームが抱える問題の根は一つであることを、身を以て知る。 病院では著者は看護(という名の限りなく拘束)される側であり、ホームでは介護・看護する側にいて、 利用者本位という仮面をかぶった日本社会のむごさに突き当たる。

著者の潜入から10年、今も、およそ人権とはほど遠い収容施設で、約7万2000人といわれる社会的入院患者を、 地域へ戻すといいながら計画は遅々として進んでいないのでは? これからは、 高齢の障害者が非人間的な扱いを受けるだろう。本書で、実態を知って、考えてほしい。という著者の思いを受け止めたい。(は)