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書評コーナー

季刊誌49号より

ショージとタカオ

ショージとタカオ

■井手 洋子 著 /文藝春秋
 ■ISBN-10: 4163747907
 ■ISBN-13: 978-4163747903
 ■18.8 x 13.2 x 2.3 cm 246頁 価格1200円(税別)


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本書も、また本書の元になったドキュメンタリー映画も、いい意味でこちらの予想を裏切ってくれる。 45年前に起きた強盗殺人事件(布川事件)で犯人に仕立て上げられ、無期懲役判決を受けた2人の元被告が主人公。 29年の刑務所暮らしを経て、仮釈放で出所してきた50過ぎの中年男性たちのその後の生活を追ったものだ。

そう聞いただけで、なんだか暗い、重たいイメージを持つだろう。ところが本書を読み進めるにつれ、 読者はこの2人のオジサン(ショージ君とタカオちゃんと本書内では呼ばれている)のキャラにすっかり魅せられてしまう(評者がそうだった)。 金なし、職なし、選挙権なしの2人が、「めげない、あきらめない、立ち止まらない」を合い言葉に、 仕事や家庭など日々の暮らしをしだいに取り戻し、支援者と共に警察・検察の嘘をあばいて再審開始・無罪判決を勝ち取るまでの ハラハラ、ドキドキの展開に、一喜一憂してしまうのだ。

映画には盛り込めなかった井出洋子監督(著者)の思いや迷いが、ところどころに記されているのもいい。 映画は2010年度キネマ旬報文化映画部門ベストテン第1位などさまざまな賞を受賞している。 ぜひ自主上映会にも出かけてほしい。(く)