医薬ビジランスセンター(NPOJIP)へようこそ

書評コーナー

季刊誌56号より

学校英語教育は何のため?

学校英語教育は何のため?

■江利川春雄ほか著/ひつじ英語教育ブックレット2
 ■ISBN-10: 4894767279
 ■ISBN-13: 978-4894767270
 ■20.8 x 14.6 x 1 cm 163ページ 価格1000 円(税別)


こちらから購入できます


小学校でも英語を教えるようになったとは聞いていたが、ここまで酷いことになっているとは!
英気教育政策を提言した自民党の教育再生実行本部や安倍首相の私的諮問機関である教育再生実行会議には、英語教育の専門家が一人も入っていないことを本書で初めて知った。

2014年末、文部科学省が出した“グローバル化に対応した英語教育改革実施計画”には、何と「東京オリンピック開催に合わせて2020年度から全面実施」 とあるのだそうだ。単なる4年に一度の“運動会”に合わせて、国家百年の大計を決めるずさんさ!

英語ができる子を育てるというより、英語嫌いを増やす仕組みを作っている、という現場からの指摘は当たっているように思える。

つまり、英語能力の高い子とそうでない子というように、差別化の指標として英語を採用して、日本社会の階層化を効率的に推し進めようとしているようだ。 日本の翻訳文化は世界に誇れる文化資本だという内田樹(うちだたつる)の指摘は、今後の本誌の英語版と日本語版の方向性への示唆と受け止めたい。

ブックレットでは珍しい163ページの厚い読み応えのある本である(き)