green35_back.gifgreen35_up.gifgreen35_next.gif


 3週間前の本欄で睡眠剤ハルシオンについて、「英国、オランダではすでに禁止」と書いたところ、販売元のファルマシア社から「そのような事実はない」との指摘を受けた。調べてみると、オランダでは80〜90年、英国では91〜93年、販売承認が取り消されたが、その措置は解除されている。

 ただ、英国では今も売られておらず、オランダでもほとんど使われていない。英では厳しい使用条件が受け入れがたいなどの理由で同社が営業活動をしておらず、オランダでは保険で使えないからだ。

 ハルシオンはもともと1ミリグラム(mg)錠で販売が始まった。しかし、精神症状の副作用が問題化して、各国で少量化が進んだ。世界80カ国で使われているというが、今は多くの国が0.125mgか0.25mgだけを厳しい警告つきで販売、0.125mgだけの国もある。

 大切なのは国の姿勢だ。

 例えば、米国の患者向け説明書の抜粋をしよう。

<<排泄の早い睡眠剤、例えばハルシオンは離脱症状(薬をやめたり減らしたりする事による症状)をおこしやすい。服用後数時間の記憶障害が他よりも起こりやすい。2〜3週間で依存が生じることもある。夜間に目覚め、日中不安が増す症状は、ハルシオンで特によく報告される。離脱症状は、不眠が前より悪化、嘔吐、発汗、ふるえ、まれに痙攣など・・・>>

 一方、世界最大のハルシオン使用国・日本。年間売上75億円。世界の6割をしめる。医師向けの添付文書には<<服用後に、もうろう状態が現れることがある>>など3行警告があるが、患者に渡す注意書きには<<就寝の直前、寝る支度をすっかりすませてから服用してください>>など6項目。これでは副作用に関する情報は十分伝わらない。

 即効型の睡眠剤を使っている人でも、少量短期間なら、少し眠りにくいのを数日間我慢すれば抜け出せるはず。横になって目を閉じているだけで、睡眠の半分程度の効果があるから安心していい。長期間あるいは大量に使っている人は、いったん長く作用する薬に切り替えてから、それを徐々に減らしていくようにする。丁寧に話してくれる医師に相談して欲しい。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎