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薬価 国際的に高すぎる水準 |
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日本は医療費の約三割、八兆円を薬に使っている。人口換算するとドイツより3兆円以上多く、英国の4倍に相当する。薬の値段(薬価)が高いか、使いすぎているかに違いない。1997年9月から薬剤費の一部が患者負担となったが、薬価はどのように決められているのだろうか。 薬の価格は個々に薬価基準表で定められている。その案は厚生省が作り、中央社会医療協議会(中医協)で決定する。医療機関は健康保険組合に対して、患者に使用した薬剤費を薬価基準どおりに請求する。医療機関の仕入れ額は薬価基準より安いので、この差額いわゆる「薬価差益」が医療機関の収入になる。薬漬けの原因と言われている薬価差益だが、今や薬価の10%程度でメリットは少ない。 むしろ問題は、薬価基準自体が高いこと。世界的に使われる良い薬の価格は米独と同じ程度で英仏の約2倍。新薬は独米の2倍前後で英仏の3〜4倍ということが私たちの調査で分かった。 また、安く良い薬の代わりに高価な他の薬を使わせる構図も厳然と存在している。欧米で心筋梗塞の予防に欠かせない鎮痛剤のアスピリンの価格は1日6円だが、日本ではアスピリンは正式には使えず、400〜700円もする100倍も高い薬が使われる。 厚生省は1997年8月に、薬価基準廃止とそれに代わる参照価格制の導入が提案したが、個々の薬の真の価値を科学的に再検討し、真の価値と乖離した高薬価は是正する必要がある。また、医療現場では真に価値ある薬を使用するエビデンス・ベースド・ヘルスケア(科学的根拠にもとづく医療)の普及こそが急務だ。 日経新聞97年8月11日付改編 |
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