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star01e.gif ピリンショック 血液成分が減る病気もstar01e.gif

 

  

  

 1960年頃までの解熱剤にはアミノピリンやスルピリンなどピリン系と呼ばれるものが多かった。アンプル入りのかぜ薬を飲んだ後のショック死が社会問題になったのを記憶している方もいると思う。このため、市販の薬にはピリン系か非ピリン系かを表示しなければならなくなった。ただし、アスピリンは作用もほぼ同じでピリンという字があるが「ピリン系」ではない。いまでも発熱に医師が使用する解熱剤の多くはピリン系のスルピリンだし、ピリン系の内服や坐薬もある。しかし、現在解熱に最もよく使われるのはピリンとそっくりの非ステロイド抗炎症剤である。

 生体内が傷ついたり感染を起こすと、発熱や組織の修復、血管を広げるなど炎症に重要な役割を持っているプロスタグランディンという物質ができる。ピリンや非ステロイド抗炎症剤、アスピリンなどは、これが体内で合成されるのを抑えて作用を発揮する。だから、ピリンや非ステロイド抗炎症剤は痛みや熱も抑えるが傷ついた組織の修復も遅くなり、腎臓や胃の血のめぐりが悪くなる。胃腸の粘膜が荒れやすく潰瘍が出来やすくなり、出来た潰瘍が治りにくくなる。また、腎臓の血管が狭くなれば尿が出にくくなりむくみが起き、心不全の人は症状が悪化しやすくなる。

 過敏反応として白血球など血液成分が少なくなる病気が起きやすくなるのもピリンや非ステロイド抗炎症剤の副作用の特徴だ。

 ピリンや非ステロイド抗炎症剤のショックは過敏症によるショックもあるが、中には感染が急激に悪化したり低体温、低血圧など中毒によるショック、感染の悪化による敗血症性のショックもある。

 ピリンや非ステロイド抗炎症剤が日本では小児のライ症候群の有力な原因と考えられる。感染による痛みにはアセトアミノフェンを少量使用するに止めるのがよい。

日経新聞1999年2月15日付改編

 

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