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star01e.gif 離脱症候群 使用していた薬剤把握をstar01e.gif

 

  

  

 体に影響のある物質(アルコールやホルモンなど)を使用し続けていると、その物質がなければ正常な活動ができない状態になってくる。その時その物質がなくなる(その物質から離脱する)と、なくなったことによる激しい症状や障害が生じるようになる。そのようにして生じた症状や障害を離脱症候群という。一般には禁断症状と呼ばれている言葉の否定的なニュアンスを和らげた医学的な用語である。

 禁断症状というのはアルコールや睡眠剤、精神安定剤の長期連用で依存症になった人が、急に中断して生じる症状によく使われる。一方、離脱症候群という言葉は、たとえば糖質コルチコイド(いわゆるステロイドホルモン)を長期使用していた場合などに急に使用を中断した時に出現する一連の症状を指すためによく使われる。

 女性の閉経は急激におとずれ、卵胞ホルモンの分泌が急激に低下する。この更年期のホルモンの変化は生理的な現象ではあるが、一つの離脱現象であり、更年期障害の症状は離脱症候群と言える。

 モルヒネは麻薬として恐れられていたが、癌患者の痛みの緩和にはいまや無くてはならない大切なくすりである。モルヒネは使い方によっては癌があっても離脱症候群を起こすこともなく、しかも痛みのない快適な生活を過ごすことを可能にしている。

医療機関では、もともと使用していた薬をきちんと把握すべきだが、それができない場合には、離脱症候群の診断をきちんとできない場合もある。患者さんや家族の方は、それまで使用していた薬剤や常用していたものなどは、きちんと医師に告げるようにして欲しい。それが、離脱症候群の正確な診断と適切な治療につながるからである。

日経新聞1999年10月25日改編

 

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