12月26日、薬害被害者と坂口厚労大臣との交渉が行われた。
独法成立時からの約束であった薬害被害者と坂口厚労大臣との協議が12月26日厚労省内の大臣室で行われた。厚生労働省事務局は当初薬害被害者だけ、それも10人しか大臣室に入られないとの対応であったが、途中で被害者の他支援者や専門家も含めて25人まではOKしていた。ところが直前になってまた16人に制限。来ていた薬害被害者だけでも入れよとのことで大臣室の前で事務局と押し問答になった。中に入った被害者から事情を聞いた大臣が、みなさんどうぞということで、被害者は全員(21人)入室した(残念ながら医薬ビジランスセンターや薬害オンブズパースン会議のメンバーなど専門家や支援者らは事務局員に排除された)。
協議は11時15分からはじまり、薬被連(註)が用意した5項目の要望事項について大臣が答え、それに対して薬被連が質問するという形で進められた。当初30分の予定が約45分間となり重要な約束、確認がなされたが、課題も残した。
薬被連が前もって提出していた要望と質問書の要旨はつぎのようなもの。
国民の生命と健康を守るべき国が、企業の要請にのみ応え、薬害被害者や市民の声を聞くことなく「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」を成立させたことは断じて承服できない。法成立前も後も、許し難い憤り、疑念、危惧を抱く。大きな制度改革では、薬害根絶のため、薬害被害の教訓が生かされるよう制度の見直しと具体的方策が示されることを強く期待し、次の要望と質問をする。
とくに、諮問機関への薬害被害者の代表の直接参加が基本的に認められたこと、人事の遮断についても踏み込んだ規制がされる可能性が出てきたこと、研究開発振興部門が完全に分離される見通しが具体的になったこと、それに何よりも、次回の厚労大臣との交渉を含め、必要に応じ継続的に協議が持たれることが約束されたことは大きな成果であったと思われる。
さらに重要なことは、今回はじめて、薬害被害者ら9団体が一同に会して大臣と交渉したことである(これまでの薬害被害者らと厚生大臣、厚労大臣との交渉は個々にであった)。
ただし、製薬企業出身者が新法人の審査承認過程に参入しうる点、その人物の製薬企業への天下りへの規制がほとんどない点は、未だ解決されていない。この新法人の最も重要な狙いについては、やはり最も困難を極めている。
今後の交渉ではさらにつめた議論、細部にわたる規制の具体案を、被害者や市民の側から提案する必要があるのではないか。
この間、NPO医薬ビジランスセンター、医薬品・治療研究会、薬害オンブズパースン会議は、医薬品評価の専門家、法律の専門家、市民として、有効で安全な医薬品の実現に重大に関わる新法人法案の阻止のため、薬害被害者の方々とともに連日闘ってきた。
法案の阻止こそかなわなかったけれども、大変貴重なものを得た。薬害被害者どうしが力を合わせて闘ったこと、専門家を中心とした市民組織(NPO医薬ビジランスセンター、医薬品・治療研究会、薬害オンブズパースン会議など)と薬害被害者らがそれぞれの持ち味を発揮して闘った経験は、今後、日本から薬害をなくすため、また、よりよい医療を実現するために、必ず役立つはずである。
註:全国薬害被害者団体連絡協議会は、全国の下記の薬害被害者9団体の連絡協議会(略称:薬被連、代表:花井十伍)