(2002.12.27号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No3

新法人諮問機関への薬害被害者の代表参加
12月26日に坂口厚労大臣が薬害被害者に約束

12月26日、薬害被害者と坂口厚労大臣との交渉が行われた。
 独法成立時からの約束であった薬害被害者と坂口厚労大臣との協議が12月26日厚労省内の大臣室で行われた。厚生労働省事務局は当初薬害被害者だけ、それも10人しか大臣室に入られないとの対応であったが、途中で被害者の他支援者や専門家も含めて25人まではOKしていた。ところが直前になってまた16人に制限。来ていた薬害被害者だけでも入れよとのことで大臣室の前で事務局と押し問答になった。中に入った被害者から事情を聞いた大臣が、みなさんどうぞということで、被害者は全員(21人)入室した(残念ながら医薬ビジランスセンターや薬害オンブズパースン会議のメンバーなど専門家や支援者らは事務局員に排除された)。
 協議は11時15分からはじまり、薬被連(註)が用意した5項目の要望事項について大臣が答え、それに対して薬被連が質問するという形で進められた。当初30分の予定が約45分間となり重要な約束、確認がなされたが、課題も残した。

薬被連の要望

薬被連が前もって提出していた要望と質問書の要旨はつぎのようなもの。
 国民の生命と健康を守るべき国が、企業の要請にのみ応え、薬害被害者や市民の声を聞くことなく「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」を成立させたことは断じて承服できない。法成立前も後も、許し難い憤り、疑念、危惧を抱く。大きな制度改革では、薬害根絶のため、薬害被害の教訓が生かされるよう制度の見直しと具体的方策が示されることを強く期待し、次の要望と質問をする。

  1. 被害者らとの定期的継続協議の場を設ける
  2. 研究開発振興部門と他部門の分離の具体的方策、運営体制、実施時期
  3. 新法人の諮問機関への、薬害被害者ら代表の複数参加
  4. 医薬品の承認過程、安全監視のための独立機関の設置(新法人人事の企業からの完全遮断を含む)
  5. より多数が救済されるような救済対象範囲や給付内容の見直し

大臣との協議の結果

  1. 新法人の体制が、事務局案が大筋でまとまり、がんじがらめになる(5〜6月)まで、つまり遅くとも4月までに、次回の話し合いを持つこととなった。直接厚労大臣が会うと約束。継続協議も、問題が予想される時必要に応じて持つことが約束された。
  2. 研究開発振興部門の分離は、新法人の成立とあまり時期的に違わない頃に予定。未定だが、たぶん別の独立法人となるであろう。
  3. あくまで任命権者は新法人の理事長(2003年11〜12月頃決まる予定)だが、諮問機関への薬害被害者代表が参加できるようにするよう約束したことを大臣から伝える。複数参加についても伝える(参加者の印象では、まずこれが外されることはないだろうとのことである)。
  4. 全体の監視は、現行の薬食審の充実と課横断の健康危機管理調整会議で対応する。人事の遮断については、企業を退職後、企業と関係を持っていないかどうか調査する、「一札」をとるなどの方法で企業との関連の排除に努めるとのことである。ただし、天下りの禁止については明言を避けた。
  5. 基準そのものの見直しは困難だが全体が充実するような見直しは必要。責任は厚労大臣。

得られた大きな成果

——薬害被害者の代表参加、大臣との継続協議——

とくに、諮問機関への薬害被害者の代表の直接参加が基本的に認められたこと、人事の遮断についても踏み込んだ規制がされる可能性が出てきたこと、研究開発振興部門が完全に分離される見通しが具体的になったこと、それに何よりも、次回の厚労大臣との交渉を含め、必要に応じ継続的に協議が持たれることが約束されたことは大きな成果であったと思われる。
 さらに重要なことは、今回はじめて、薬害被害者ら9団体が一同に会して大臣と交渉したことである(これまでの薬害被害者らと厚生大臣、厚労大臣との交渉は個々にであった)。

企業との人事遮断には重大な課題を残す

ただし、製薬企業出身者が新法人の審査承認過程に参入しうる点、その人物の製薬企業への天下りへの規制がほとんどない点は、未だ解決されていない。この新法人の最も重要な狙いについては、やはり最も困難を極めている。
 今後の交渉ではさらにつめた議論、細部にわたる規制の具体案を、被害者や市民の側から提案する必要があるのではないか。

重要な市民、専門家らの支援

——医薬ビジランスセンター、薬害オンブズパースン会議——

この間、NPO医薬ビジランスセンター、医薬品・治療研究会、薬害オンブズパースン会議は、医薬品評価の専門家、法律の専門家、市民として、有効で安全な医薬品の実現に重大に関わる新法人法案の阻止のため、薬害被害者の方々とともに連日闘ってきた。
 法案の阻止こそかなわなかったけれども、大変貴重なものを得た。薬害被害者どうしが力を合わせて闘ったこと、専門家を中心とした市民組織(NPO医薬ビジランスセンター、医薬品・治療研究会、薬害オンブズパースン会議など)と薬害被害者らがそれぞれの持ち味を発揮して闘った経験は、今後、日本から薬害をなくすため、また、よりよい医療を実現するために、必ず役立つはずである。

註:全国薬害被害者団体連絡協議会は、全国の下記の薬害被害者9団体の連絡協議会(略称:薬被連、代表:花井十伍)


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