2005年1月18日

ゲフィチニブ検討会委員 殿

ゲフィチニブの問題に関して、来る1月20日に厚生労働省において検討会がもたれるとお聞きしております。

NPO法人医薬ビジランスセンター(NPOJIP)および、医薬品・治療研究会(TIP)は、適切な医薬品情報を提供するため、医薬品企業からの援助を全く受けずに運営されている非営利団体です。NPO法人医薬ビジランスセンターは『薬のチェックは命のチェック』(市民・患者向け)を、医薬品・治療研究会は『正しい治療と薬の情報』(医療専門職向け)をそれぞれ発行しております。

私たちは、当初よりゲフィチニブの問題点を指摘して来ており、今回公表されたISEL試験に関しても、重大な関心を寄せております。

そこで、要望書「イレッサ(ゲフィチニブ)問題検討に際して考慮いただきたいこと、ならびに、緊急要望事項について」を提出させていただきましたが、 そのなかでも特にご留意いただきたい点を以下に述べさせていただきました。なお、17日にFAXにてお送りした文書と若干変更がありますのでご注意ください。

  1. すでにお気づきと存じますが、ISEL試験について、最も重要な問題点は、
    1. 東洋人「喫煙歴なし」群,プラシーボ群の生存期間中間値が異常に短いことです。 非東洋人では、喫煙歴なし群7.1か月の方が、あり群4.8か月より長いのに、東洋人では、これが逆転して、「喫煙歴なし群」(4.5か月)の方が、「あり群」(6.3か月)より、かなり短いことが目立ちます。
    2. したがって、東洋人「喫煙歴なし」群における背景因子に大きなかたより、あるいは不明の重大なバイアスがあると考えるのが順当なことです。
    3. また、IDEAL-1でもそうでしたが、登録例がすべて解析の対象となっており、臨床試験ではつきものの脱落例がありません。これは極めて不自然です。脱落例についてもその理由を沿えて情報が提供されなければなりません。
  2. IDEAL-1との関係で特に考慮していただきたい重要な点は、
    1. 日本人と非日本人とで反応率に有意の差はなく、民族差は基本的にないと考えられたことです。
    2. しかもこの結果は、喫煙歴を多変量解析の因子とせず得られたものです。

日本人肺癌患者における喫煙が欧米人より低いことは事実ですし、喫煙歴がないことは予後良好の因子であることが分かっていますから、喫煙歴で補正すれば、民族間の差はより少なくなる方に向かうはずです。したがって、IDEAL-1の結果から、「基本的に民族の差はない」ということはまず間違いないといえます。

  1. ISEL試験の現在の結果とIDEAL-1の結果の矛盾について 今回提示されたISEL試験結果は、IDEAL-1の結果と大きく矛盾しています。このため、ISELには大きなバイアスが存在する可能性が濃厚と考えます。
  2. さらに, IDEAL-1の生存期間の中間値がよすぎるのは不自然と考えます。その理由は、承認前の臨床試験における有害事象死や害反応(副作用)死亡率の少なさが、市販後の死亡の多さと比べて不自然なこと、それに、割付け後の脱落例が3例であることなど、IDEAL-Iには不自然なことが目立ちますが、これがIDEAL-1の予後の良さの理由はないかと考えるからです。
  3. なお、ISEL試験でも登録後の脱落例数も脱落理由も示されていません。

その他、これまでの私たちの解析結果も踏まえて、検討会において、考慮していただきたい点をまとめましたので、ぜひとも事前に目を通していただきたくようお願いいたします。

日本において、より安全な医薬品使用が可能となりますよう、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

2005年1月18日

NPO法人医薬ビジランスセンター  理事長  浜  六郎
〒543-0062 大阪市天王寺区逢阪2−3−1 502
TEL 06-6771-6345 FAX 06-6771-6347