2002年1月13日(日)読売新聞

ぜん息の噴霧吸入剤、副作用死を初認定

 

 患者の死亡例が相次ぎ、厚生省(当時)が子供への使用中止を呼びかけたぜんそくの 発作を抑える噴霧式吸入剤・フェノテロール製剤(商品名・ベロテックエロゾル)を使 用していて急死した3人の患者について、厚生労働省所管の「医薬品副作用被害救済・ 研究振興調査機構」は12日までに「副作用による心肺停止死」と初めて認定、公的救済 として遺族への一時金や年金などの給付を決定した。

 遺族の給付申請を支援している薬害オンブズパースン会議によると、給付が決定した のは、93年から96年に死亡した20代と60代の男性と、10代の少女。

 製薬会社の拠出金から、60代の男性には年金約240万円(年額)、あとの2人には一時 金700万円前後が、それぞれ給付される。

 遺族から副作用死と認めるよう申請があり、厚労省で検討を続けていたが、昨年12月 に「死因はぜんそく発作による可能性が高いと考えられる」としながらも「ベロテック エロゾルが関与した可能性を否定できない。総合判定の結果、救済給付の対象となる」 と結論付け、同機構が認定した。

 同剤は、患者が自分でのどに薬を噴霧するもので、気管支を拡張し、ぜんそく発作を 抑える作用がある。国内で使われている7種の同種のぜんそく薬の中でも心臓への負担 が強いことが指摘され、厚生省は97年5月、「過度の使用は心停止などを起こす可能性 がある」として、子供への投与を原則中止する緊急安全性情報を出した。厚労省による と、緊急安全性情報の後も会社側から14例の副作用報告があり、うち10例が死亡してい た。

 今回の認定について、薬害監視の民間団体「医薬ビジランスセンター」(大阪府)の 浜六郎代表は「適正使用していても、ベロテックエロゾルの毒性が強いことが認められ たもので、意義は大きい」としている。

 これに対し、販売元の日本ベーリンガーインゲルハイム(兵庫県)は「厚労省の検討 内容の詳細がわからないのでコメントできないが、適正に使用されている限り、安全性 に問題はない」と話している。

 同剤の使用は緊急安全性情報が出された97年以降、減少してきており、昨年の売上高 は96年の約4分の1の4億5000万円だった。

 

 

 

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