2006年度事業報告書

特定非営利活動法人 医薬ビジランスセンター

  1. 事業期間

    2006年1月1日~2006年12月31日

  2. 事業の成果

    1. 医薬品情報誌、ガイドライン等出版物の編集・発行

      1. 「薬のチェックは命のチェック」の編集発行

        「薬のチェックは命のチェック」第17号(がんの予防)、 第21号(大腸がん)、第22号(肺がん)、第23号(がんの痛みとモルヒネ)、第24号(メタボリックシンドローム)を発行した。

      2. 「インフォームド・コンセント その誤解・曲解・正解」の発行

        「薬のチェックは命のチェック」に連載中の「みんなのやさしい生命倫理」(谷田憲俊著)のうち、 インフォームド・コンセントに関する回をまとめ、大幅に加筆して2000部発行。

    2. 第5回医薬ビジランスセミナー開催

      2006年10月20日から21日の2日間、「科学的根拠に基づいたインフォームド・コンセントのために、 薬づくり・情報づくり・病人づくりを知ろう!」をテーマに第5回医薬ビジランスセミナーを大阪市北区の関西大学天六学舎にて 医薬品・治療研究会と主催した。特別ゲストにフランスの独立中立医薬情報誌「プレスクリル」国際版編集長であるクリストフ・コップ氏 を迎え、WHOのあり方にまで踏み込んだセミナーとなった。患者や一般の方々をはじめ、医師・看護師・薬剤師など医療従事者も参加し、 盛会だった。医薬ビジランス研究所、医療問題研究会、新薬学研究者技術者集団、全国薬害被害者団体連絡協議会(五十音順)の 4団体の共催を得た。

    3. 医薬品使用の実際面への具体的な働きかけと成果

      1. タミフル(リン酸オセルタミビル)

        抗インフルエンザ剤として日本で非常に多用されているタミフルであるが、服用後の異常行動やその結果としての 事故死、あるいは突然死などが生じていることを2005年11月の日本小児感染症学会で報告して以降、多数の問い合わせや相談が センターへ寄せられている。それらの情報を整理しつつ、さらに資料収集に努め、2006年3月1日、厚生労働省、日本小児科学会長、 中外製薬社長に対して「タミフルと突然死、異常行動死との因果関係は濃厚であり、被害拡大防止のため適切な措置が必要である」 との趣旨の意見書を「因果関係の考察」とともに提出した。また、日本小児科学会(4月)、日本小児感染症学会(11月)、 日本薬剤疫学会(11月)などでも報告し、医療者に実態を知らせ、警告した。

        一方、被害者への支援として、7月には薬害タミフル脳症被害者の会設立を援助し、8月24日の薬害根絶フォーラム にも参加し、被害者とともにその実態を訴え、11月17日の厚生労働大臣への要望書提出に際しても理事長の浜六郎が専門家として 側面支援のため同行し、医薬ビジランスセンターとしての要望書・意見書を提出した。

      2. 「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」に対する意見書提出

        厚生労働省医薬食品局が2006年11月24日まで公募していた上記意見書(11月23日付け)を24日提出した。

      3. イレッサ(ゲフィチニブ)

        肺がん用経口抗がん剤の危険性を2003年から指摘していたが、被害者の遺族がアストラゼネカ社と 国を相手取り提訴した。2004年12月には、イレッサは生存を延長せず無効であることが判明し、 さらに2007年2月1日には、第3相試験において従来薬ドセタキセルに比較し効果が劣ることが判明し、 当初からの医薬ビジランスセンターとしての取り組みが適切であったことが示された。

        また、医薬ビジランスセンターと薬害オンブズパースンと医薬品・治療研究会の三者が原告となって、 国を相手にイレッサの情報不開示の撤回を求めて提訴している裁判の地裁判決が2007年1月26日にあった。 裁判経過中に世論に押されて実質的に情報が開示された部分があるものの、原告敗訴であったため、控訴した。

      4. 日本のガイドラインを批判する

        日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン」の高血圧の基準値が低すぎること、 日本動脈硬化学会のコレステロール基準値の低い設定などが病気づくり・病人づくりを招いていることをさまざまな角度から 科学的根拠を示して批判した。第5回医薬ビジランスセミナーでもテーマの大きな柱として、 WHOさえもが製薬会社や専門家の意向を反映するガイドラインづくりに関わっていることを示した。

      5. メタボリックシンドローム批判

        上記ⅲとも関連するが、国が健康政策として乗り出しているメタボリックシンドローム対策は何ら 医学的根拠のないことを「薬のチェックは命のチェック」24号で特集するとともに、第5回医薬ビジランスセミナーでも取り上げた。 上記ⅲと合わせて、マスメディアの関心も高く、ガイドラインが必ずしも適正とはいえないことを示すことができた。

      6. 「治験審査委員会に係る医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改訂する省令案」に関する意見書を提出

        NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック:代表浜六郎)と、医薬品・治療研究会 (代表別府宏圀)は3月14日、「治験審査委員会に係る医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改訂する省令案」 に関する意見書を厚生労働大臣および治験のあり方検討会に対して提出した。

  3. 事業の実施状況

    1. 特定非営利活動に係る事業

      1. 事業名 「インフォームド・コンセント その誤解・曲解・正解」編集発行

        対象者 一般および医療専門家

      2. 事業名 セミナー、研修会、研究会等の開催

        1. 医薬ビジランスセミナー
          実施時期
          2006年10月21日(土)、22日(日)
          実施場所
          関西大学天六学舎(大阪市北区)
          対象者
          不問(一般から医療従事者まで)
        2. 医薬ビジランス研究会
          実施場所
          医薬ビジランスセンター事務所
          実施時期
          ほぼ2か月に1回(1/15,2/26,4/9,7/9,8/26,10/8の6回)
          対象者
          正会員および賛助会員その他希望者
      3. 事業名 医療消費者および医療従事者向けの医薬品に関する書籍発行

        1. 季刊誌「薬のチェックは命のチェック」編集・発行
          1、4、7、10月の各20日
          対象者
          一般市民、患者とその家族および医療関係者など
          1. 第21号:特集「大腸がん」
          2. 第22号:特集「肺がん」
          3. 第23号:特集「がんの痛みとモルヒネ」
          4. 第24号:特集「メタボリックシンドローム」

      4. 事業名 インターネットウェブサイトによる情報提供

        2000年8月にインターネットウェブサイトを開設し、これを通じて情報提供している。 2006年の1日平均アクセス数は約146件とかなり増えている(昨年実績113件、一昨年105件)。薬剤による 副作用の記事が新聞に載るなど、 薬に関する問題が表面化したときはアクセスが増える。昨年はタミフル報道や理事長の浜の高血圧や コレステロールに関する著作が出版されて以降増えている。 2007年2月25日午後2時現在でアクセス件数は247,758(昨年同期191,927)。

      5. 事業名 医薬品に関する情報の収集、調査、研究

        「薬のチェックは命のチェック」の特集テーマおよび、Ⅱ.事業の成果の 3.医薬品使用の実際面への具体的な 働きかけと成果の項に上げたテーマに応じた情報を収集、調査し、分析した。テーマは、タミフル、 大腸がん治療剤、肺がん治療剤、イレッサ、モルヒネ、高血圧治療、SSRIなどである。

      6. 事業名 医薬品使用に関する情報の収集、調査、研究

        ISDBとの連携はⅴからⅶまで関係するがこの事業の一環としている。

      7. 事業名 医薬品行政に関する情報の収集、調査、研究

        Ⅱ.事業の成果の 3.医薬品使用の実際面への具体的な働きかけと成果で挙げたとおりであるので、項目のみ記す。 (これも医薬ビジランス研究所代表:浜 六郎の成果を活用するという形をとっている)。

        1. タミフル(リン酸オセルタミビル)
        2. 厚生労働省医薬食品局へ「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」に対する意見書を提出
        3. イレッサ(ゲフィチニブ)
        4. 日本のガイドラインを批判する
        5. メタボリックシンドローム批判
        6. 「治験審査委員会に係る医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改訂する省令案」に関する意見書を提出

      8. 事業名 医薬品、医薬品使用等に関する相談業務等
        実施場所
        医薬ビジランスセンター事務所
        内容
        不特定多数の方々からの電話・ファックス・手紙・電子メール等による相談(原則無料)