2009年1月1日~2009年12月31日
2009年度の「薬のチェックは命のチェック」の大きなテーマを子どもに役立つ特集として 「ワクチン」とし、第33号:禁煙とくすり、第34号:はしか・風疹ワクチン、第35号:BCGと結核、 第36号:インフルエンザはかぜ!と発行した。
タミフルによる突然死や異常行動の危険性を当センター(薬のチェック)は2005年2月から指摘し、 薬害タミフル脳症被害者の会と連携してタミフルの全面的使用禁止を求め、最終的には、承認取り消し、 回収を求める要望書を厚生労働省に提出した。また、厚生労働省の研究班や、安全対策調査会の作業部会 の「因果関係を示唆する所見は得られなかった」「安全」とする報告に対してそのつど鋭く批判してきた。
「10歳代への原則禁止」は2009年も維持されたが、4月に始まる09Aインフルエンザ、 いわゆる「新型」インフルエンザの発症をWHOが「パンデミック」としたことから、 世界中でタミフルの使用が促進される結果となった。そして妊婦に対してまでWHOが推奨するに至ったため、 あらためて胎児・新生児への毒性を再検討したところ、新生児死亡の危険が高まりうることが確認され、 日本産婦人科医会などに対して要望書を提出した。
一方、林敬次理事の提案がコクラン共同計画で採用され、タミフルの合併症予防効果に関する 全面的な見直しがなされ、タミフルが肺炎などの合併症予防効果は認められなかったとの結果が公表された。
『薬のチェックは命のチェック』No35、36、37で09Aインフルエンザは軽症であること、 死亡率は例年に比し5~10分の1に過ぎないこと、しかも、死亡の約半数にタミフルが関係している可能性があることを掲載した。 その後の解析結果も含め、読売新聞(大阪)が大きく取り上げた。これらの活動で、タミフルの害を警告することができたと考える。
薬害タミフル脳症被害者の会と連携して、たびたび要望書を提出した。 ますます因果関係は固まりつつあり、害反応(副作用)の起きる仕組みがほぼ解明されるに至っていると考える。
肺がん用経口抗がん剤の危険性を2002年から指摘し、アストラゼネカ社と国を相手とする 被害者遺族の訴訟を医学的側面から支援してきた。2008年6月、メーカーはようやく症例報告カード(被害者とその支援者が メーカーに提出を求め、裁判の過程でも求めていた)を提出した。カードの有害事象死亡例などの分析作業を行ったところ、 初期の頃から多数の劇症型肺傷害例があったことを確認でき、 アストラゼネカ社と国の責任は初期まで遡ることができるようになってきた。
原告本人の尋問も行なわれ、原告側証人(濱)への3度目の尋問、 被告側から専門医による2通の意見書と、それに対する反論の意見書(濱による3通目)が提出され、裁判は最終段階を迎えている。
2009年には、パキシルの他害行為と、生殖毒性に関して大きな進展があった。 他害行為に関する厚生労働省の報告を再分析したところ、パキシルは他のSSRIに比較して約4倍危険度が高いことが判明した。 また、生殖毒性に関しては、「パロキセチン(パキシル)の生殖毒性に関する調査研究——胎児・新生児への毒性、 とくに新生児離脱症候群および 新生児持続性肺高血圧症について——」と題する医薬ビジランス研究所の報告書を、 ホームページ上に掲載し、警告した。
2000年8月にインターネットウェブサイトを開設し、これを通じて情報提供している。 2009年の1日平均アクセス数は約179件(2008年実績126、2007年実績194)。医薬に関する問題が表面化したときは アクセスが増える。今年多いのは「09/Aインフルエンザ」流行のためと考えられる。 一昨年(2007年)が多いのはタミフルによる異常言動などがマスメディアで大きく取り上げられたからだろう。
2010年2月15日午前10時現在でアクセス件数は432,119件(昨年同期366,858)。
「薬のチェックは命のチェック」の特集テーマおよび、事業の成果の2.医薬品使用の実際面への 具体的な成果の項に上げたテーマに応じた情報を収集、調査し、分析した。検討した薬剤は、 タミフル、イレッサ、パキシル、ニコチンガム、チャンピックス、BCG、MMR ワクチン、MR ワクチンなどである。
上記ⅳや下記ⅵと重複、関連するので省略。
個別の薬剤については、Ⅱ.事業の成果の 2.医薬品使用の実際面への具体的な成果で挙げたとおりであるので、 項目のみ記す。