2002年11月14日
殿
全国薬害被害者団体連絡協議会
代表世話人 花井十伍
NPO法人 医薬ビジランスセンター
理事長 浜 六郎
医薬品・治療研究会
代表 別府宏圀
薬害オンブズパースン会議
代表 鈴木利廣
日本消費者連盟
代表運営委員 富山洋子
私たちは、本臨時国会に提出されている「独立行政法人 医薬品機器総合機構法案」には、後記のとおり、多くの問題点が存すると考えます。つきましては、本法案を速やかに白紙撤回するとともに、医薬品等の審査、安全監視を安易に特殊法人の整理統合や規制緩和の脈絡においてのみ論ずることをやめ、食品・医薬品安全庁を創設するなど、国が自ら行う最も重要な業務として位置づけた体制整備を早急に検討することを要請いたします。
サリドマイド、スモン、薬害エイズ発生の反省に基づき旧厚生省は、旧薬務局を解体し、研究開発振興部門(現医政局研究開発振興課)と審査、安全監視部門(現医薬局安全対策課、審査管理課、監視指導課他)を分離した。しかるに、本独立行政法人は、国からの委託業務として審査・安全監視とともに研究開発振興をも行うとされ、さらには医薬品副作用等被害救済業務も同時に行う事とされている。これでは、薬害を繰り返した旧薬務局の時代に逆行していると言わざるを得ない。
本独立行政法人が創設されれば、公正な審査が求められる新薬承認審査や市販後監視の組織に、製薬企業からのよりスムーズな人的供給、資金流入が可能となる。人および資金の流入が容易になれば、製薬企業の影響をより強く受けることになることは疑いない。米国FDAにおいてもその運営資金の企業依存比率拡大が審査・安全監視業務の公正さを阻害している事が批判されている。本法案11条の役員資格等の規定のみではこうした問題点を解決することは全く不可能であるばかりか、「狐に鶏の番をさせる」ようなことになりかねない。
今、製薬産業はバイオ・ゲノムといった未知の領域に踏み込もうとしている。そのような状況の中で、厚労省は、本独立行政法人の設置によって、医薬品安全確保に関する自らの責任を回避しようとしている。厚労省は、最終的な行政処分等の行政措置は厚生労働大臣の責任において行うものであるから問題はないと主張するが、実態は本独立行政法人への審査・安全対策業務の丸投げに近いものであり、その適正な執行について厚生労働大臣が真に責任を負いうる体制になっていない。一方で、ずさんな承認審査によって薬害が発生したような場合に、その実質的判断を行った本独立行政法人の法的責任は問われないこととなり、無責任な判断を誘発するおそれがある。医薬品の安全性確保のための審査・安全対策業務は、国(厚労省)が、責任をもって、自ら行うべきである。
そもそも医薬品副作用被害救済基金法は、「薬害根絶」「ノーモア・スモン」を合言葉に、スモン被害者の命がけのたたかいによって成立した。本法案に盛り込まれている、生物由来製品の感染等被害救済についても薬害被害者らの粘り強い働きかけによるものである。国はこうした被害者の筆舌つくしがたい苦痛と努力を忘れ、医薬品副作用被害救済基金法の改定を繰り返すたびに、患者、国民の視点にたった救済業務の充実をおろそかにし、製薬企業の研究開発振興の拡大のみを図ってきた。こうした体制では、患者の視点にたった救済業務を行うことはできない。医薬品副作用等救済業務は、薬害被害者や患者などを役員として迎えた法人で行い、患者、国民の視点に立脚した充実した制度とすべきである。
以上からも明らかなとおり、本法案は、医薬品の安全確保という、国民の生命・健康に関わる重要政策の根幹を揺るがしかねないものである。かかる重要法案を、特殊法人等整理合理化計画の一環であるなどという形式的な理由のみで他の特殊法人等関連法案と一括審議に供するのは極めて不当である。本法案は、他の特殊法人等関連法案と切り離した上で、衆参両院の厚生労働委員会に付託し、十分な審議を尽くすべきである。
以上