去る2月28日、NPO法人医薬ビジランスセンター(浜六郎理事長)、医薬品・治療研究会(別府宏圀代表)、福島雅典(京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野教授)の三者が連名で、厚生労働大臣および、アストラゼネカ社に対して、イレッサ(ゲフィチニブ)の販売と使用の中止、回収および、臨床試験での使用も中止するよう要望書を提出した。また、同時に、両者に対して、動物実験データの詳細、臨床試験における重要な有害事象データの詳細、第Ⅲ相臨床試験の詳細データ(イレッサ群、対照群別の重症有害事象頻度データ)に関する公開質問書を提出し、3月18日までに回答するよう求めていた(イレッサ情報No10)。
3月19日に問い合わせたところ、厚生労働省からは、「情報公開の手続きをするように」との形式的回答が電話であったのみである。公開質問書に対して、厚労省からは2003年3月19日、「情報公開法に基づいて公開手続きをするように」という形式的答弁がなされただけである。坂口厚生労働大臣は3月25日、イレッサの承認審査過程を検証することを表明したが、情報公開もしないで、当事者の厚労省が検討した結果をだれが信用するだろうか。情報が開示され、第三者によってはじめて公正な検証が可能である。「使用・販売中止」「情報開示」こそ、まず厚労省がなすべき対策である。
また、アストラゼネカ社からは、3月19日、1週間程度待ってほしいとの返事があり、その1週間後(26日)には3月末には回答するとの返事があった。
3月31日、アストラゼネカ社からなされた回答は、「いずれの要望も受け入れることはできない。」というものであり、開示請求した情報に関しても、「いずれの情報も開示いたしかねます」と、全面的に開示を拒否する内容であった。
開示拒否の主な理由は、
いずれも、全く理由にならない。厚生労働省のウエブサイト上で公開されている情報だけでは、大きな疑問があるからこそ、開示請求をしているのである。企業秘密や臨床試験に参加した医師との約束、会社の方針を持ち出して、不都合な情報を開示しない姿勢は許されない。
このような全面的な拒否の回答をするのに、ほぼ3週間(厚労省)から、1カ月(アストラゼネカ社)もの期間が必要であったのであろうか。アストラゼネカ社からは、2週間もの延長が希望されたので、何らかの新たな情報の開示がありうるかもしれないとわずかな期待をし、厚生労働省への開示請求を見合わせていたのであるが、やはり全面的な開示拒否となった。
情報開示先進国アメリカにおいても、たとえば、パブリック・シチズン(ヘルスリサーチ・グループ)の情報開示請求に対して、企業秘密、企業の知的活動の阻害を理由に、企業やFDAはしばしば情報開示を拒否する。しかし、これに対して裁判で争われ、実質的に開示が進んできている。また、治験を中断した製剤の動物実験や臨床試験データでさえ、情報が開示されるようになってきている(『薬のチェックは命のチェック』No1〜2参照)。
日本の医薬品情報公開の今後にとって重要なこの情報開示請求は、ぜひともねばり強く迫り成功させる必要がある。
本日のアストラゼネカ社の返事を分析し、来る4月4日、厚生労働省に対して、情報公開法に則った開示請求をする予定である(薬害オンブズパースン会議は、イレッサの承認取り消しを求める要望書の提出を4月4日に予定しているが、開示請求も同日、共同で行う予定である)。