12 月18日毎日新聞は、イレッサの臨床試験で死亡28人が報告されていたと報道し、12月19日の各紙夕刊は、厚労省が98年4月から7月5日承認までに、イレッサとの関連が完全に否定しきれない重い副作用症例として、死亡55人を含む193 人の情報を得ていた、と報道した。19日の報道では、同時に臨床試験以外でも世界中で1万人〜1.5万人が服用したともコメントされているので、1〜1.5万人に使用して死亡が55人(0.4〜0.6%)とも受け取れる発表になっている。
日本ではこれまでの発表では、1万8千人に使用して81人(0.45%)の死亡であった。したがって、この情報(1万人に55人の死亡)は、日本の死亡報告が、そう驚くべきことにはあたらない、とイレッサの危険性をむしろ薄める効果をねらったものではないかと思えるのである。
そこで、新薬承認情報集の情報から見た本当のイレッサの死亡の危険性を提供しよう。
イレッサとの関連が完全には否定しきれない例というのは、「有害事象」としてあげられているものをとるべきである。これでいうと、イレッサの第Ⅰ相から第Ⅲ相まで、合計2807人の臨床試験中、死亡に至る害事象が171 例(6.1 %)であった。このうち、日本からの報告では、死亡に至る有害事象は、133 人中1人(0.75%)であり、他の臨床試験とあまりにも違いすぎる。日本からの報告は、ちょうど1万人中55人(0.55%)や日本でのこれまでの副作用死報告(0.45%)と同程度である。
日本以外の臨床試験では、2674人中死亡に至る有害事象は170 人(6.4%)。肺炎や呼吸不全、呼吸困難、呼吸窮迫症候群、肺塞栓症などの呼吸器系の障害がこのうち約半数を占めており、87人(3.3 %)であった。もとの肺癌による死亡はさらに多く、対象者の約20%程度を占めているので、死亡に至有害事象というのは、イレッサの関連が完全には否定しきれないものと解釈するのが適切である。
したがって、厚労省が19日発表した55例というのは極めて少なすぎる。実際はこの10倍が、イレッサとの関連が否定できない死亡例と考えておくべきである。