イレッサ情報No8で症状発現日からの期間が経過すればするほど、死亡割合(副作用症例死亡率)は増加するということを数字で示したが、10月の緊急情報発出後約1カ月間のデータが判明したので、その結果を報告する。
イレッサによる間質性肺炎性・肺障害を起こしたと報告のあった人のうち死亡した人の割合(肺傷害症例死亡率)を、肺症状が起こり始めた日で区分すると、以下のようなものであった。
緊急情報発出前の41.7%は48.5%となった。
緊急情報発出後の約1カ月間の症例死亡率は、12月に公表された時点では14.7%であったが、今回好評された資料では35.7%となった。10月の緊急情報発出後約2カ月間の症例死亡率は31%である。
12月末の対策後1カ月間の症例死亡率が20%であったことは、何ら対策の有効性を証明するものではない。この20%が、緊急情報発出後1カ月時のように、3〜4カ月後には30〜40%にも上昇する可能性が十分に残されているからである。
このことは、表1で明瞭に示されている。
A)2002.12.5 | B)2003.2.6 | C)2カ月後 | |||
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厚労省説明 | 公表時説明 | ||||
(%) | (%) | ||||
情報発出前(10/15日まで) | 41.3 | → | 48.5 | → | ? |
情報発出後(10/16〜11/25(23)) | 14.7 | → | 35.7 | → | ? |
情報発出後(10/15頃〜12/25(23)) | 31 | ||||
12月末対策後(12/26以降) | 20 | → | ? |
註a:副作用例数に対する副作用死亡数の比率(%)
イレッサの副作用死亡に対する影響の大きさの推移を検討するために最もよい指標が、イレッサ使用者数(または使用錠数)に対する副作用死亡者の比率を時期別に見ることであると、イレッサ情報No8で述べた。
その計算に必要なデータとして、時期別の使用者数と使用錠数(販売錠数)をアストラゼネカ社に問い合わせていたことも前回報告したが、推定処方錠数(売上錠数)は公表していない旨、2月18日に回答があった。
12月の対策をとった後に副作用が現れた患者は、症状が現われてからまだあまり期間が経っていない。早々と回復した患者は早く報告されるが、重症で死ぬかどうか分からない患者は報告が控えられるだろう。また、死ぬかもしれない重症患者がこの時期に報告されれば、生存例に含まれてしまう。だから、集計時期に近いほど、生存例が多く報告されるのは必然である。
したがって、このような集計をすれば、対策が全くなくても死亡割合(副作用症例死亡率)は下がる。
これだけ「イレッサの害」が言われているのに、医師の対処が遅れて不幸にも死亡した場合、医師の気持ちはどうだろう。あまり報告したくない気持ちになるだろう。では、死亡せず回復した例はどうであろうか。これほど問題になっているのであるから、回復した副作用例は「報告しなければ」という気持ちになるだろう。以前は副作用とは認識されなかった比較的軽い副作用も、イレッサによる副作用と認識されやすくなったにちがいない。
このことも、死亡割合(副作用症例死亡率)低下の理由に十分なりうる。
厚労省は必要な数字をアストラゼネカ社に求め、正確な死亡率を計算すべきである