NPOJIP 設立趣旨書

 


                特定非営利活動法人 医薬ビジランスセンター
                             設立代表者 浜 六郎
                               1999年11月23日

 日本は世界にまれに見る大規模の薬害を何度も経験したが,今もこの国から薬害の芽は断たれていない。サリドマイドの薬害を経験した後,世界各国で薬害を防止するために臨床試験の規制なども含めて種々の安全対策がとられてきたが,まだほとんどその成果をもたらしているとはいえない。一方,医療費の増加は世界的な問題であり,経済的な観点からも,医療の適正化は時代の最重要課題となりつつある。
 日本では,薬価は概して高く設定され,国際的に評価の高い価値ある薬剤の評価が低く使用し難く,効果の疑わしい新薬や問題ある薬剤が高価なため多用され易い構造がある。そのような医療構造のもとで,未だ無駄な医療,危険な医療が蔓延している。

これまでの薬の適正な使用とは,一般によいと信じられていた薬を適切に使用することであった。しかし,数々の薬害を経験し,新たな研究結果が明らかになるにしたがって,これまで一般によいと信じられてきた薬が,本当によいものであったのかどうかが怪しくなってきている。したがって,いまわれわれが行うべきことは,その根拠を改めて問い直す作業を含め,「適切な医薬品の適切な使用」を考え直すことである。

“よいくすりの適切な使用”と“科学的証拠に根ざした意味ある保健・医療”
 良質の医療を行うために,行おうとする医療技術の根拠を問い直す大きな動きが始まっている。あらゆる医療技術の「良」「悪」を評価し直す一大プロジェクトであるコクラン共同計画,確かな科学的証拠に根ざした意味ある医療・保健(EBM/EBHC)の動きが世界的に急速な勢いで展開している。

 医薬品・治療研究会は1986年から国際医薬品情報誌協会(ISDB)に加盟する日本で唯一の独立医薬品情報誌として“The Informed Prescriber”(TIP;邦文名「正しい治療と薬の情報」)を発行し,医療現場に情報を提供してきた。その情報づくりの中で,国際的に通用しない日本独自の薬剤について,系統的な再検討を開始したが,なお一層の系統的検討を行う必要性がでてきた。そこで,そうした時代の要請に応えるため,医薬品・治療研究会の緊密な提携組織として,新たに医薬品の評価監視研究機関を作るという構想が生まれ,1997年4月医薬ビジランスセンターが発足した。ビジランスvigilanceとは「寝ずの番」「民間による監視」の意味である。
 2年半にわたる活動で,世界的な水準で日本の医薬品の「良」「悪」を区別するための評価を実施し,医療現場で必要とされる治療ガイドラインをシリーズで翻訳,編集,発行し,医療従事者のみならず,患者・市民(医療消費者)をも対象に,適切な医療に必要な薬の知識,薬の質を見分けるための研修を実施してきた。

 そのような取り組みをなお一層組織的に実行していくために,医薬品そのもの,医薬品使用,医薬品行政に関して,情報収集,調査,評価,研究し,医療従事者のみならず,医療消費者が必要とする医薬品および医薬品使用に関する良質の情報を提供し,相談に応じ,啓発,研修を行うなど,医薬品に関する総合的な情報収集,研究,研修を行う機関として,特定非営利活動法人医薬ビジランスセンターを設立する。


 特定非営利活動法人医薬ビジランスセンターの目的と事業の種類
(定款第3条,第5条より抜粋)
 
 目的
 この法人は,医薬品,および医薬品使用,医薬品行政に関する情報収集,調査,研究を行ない,その活動の成果を医療関係者および市民に還元することにより,薬害を防止し,科学的に確かな証拠に根ざした患者・市民にとって意味ある適切な医療の普及をはかり,医療の向上に努めることを目的とする。

 事業の種類
 この法人は,特定非営利活動に係わる次の事業を行う。
1.治療ガイドライン等刊行物,情報媒体等の編集,発行
2.セミナー,研修会等の開催
3.定期刊行物(機関紙,情報誌)の編集,発行
4.インターネットウェブサイトによる情報提供
5.医薬品に関する情報の収集,調査,研究
6.医薬品使用に関する情報の収集,調査,研究
7.医薬品行政に関する情報の収集,調査,研究
8.医薬品,医薬品使用等に関する相談業務等
9.その他,目的を達成するために必要な事業

 

  

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