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おなかに小さな穴を開けて内臓を観察する腹腔(ふくくう)鏡をいう医療器具がある。もともとは肝臓の用であった。内視鏡で見られる胃や大腸とちがって、腹腔内からしか覗くことができない肝臓のために開発された。 1987年に米国で腹腔鏡を使った胆嚢切除の手術が始まってから、腹腔鏡手術はあっという間に世界中に広まった。アメリカでは1992年には胆嚢摘出手術の85%が腹腔鏡下で実施されるようになったという。日本では89年頃から実施され始め、92年に保険適用が認められた。 おなかに4か所穴を開けて、直径が1cm 程度の太さの腹腔鏡をはじめ、手術のために必要な鋏やピンセット代わりの手術道具を入れ、内部を覗きながら手術を進めていく。胆嚢切除は、以前なら、みぞおちからへその上まで切る必要があり、入院期間も2〜3週間はかかっていた。それが痛みも少なく、数日から1週間程度で(米国ではその日のうちに)退院できる。多忙な現代人向けといえよう。 胆嚢切除以外に総胆管結石、胃や十二指腸、大腸など広く消化器科、泌尿器科や婦人科の病気などにも応用されるようになった。 しかし、いいことづくめではない。おなかの手術を受けたことのある人は癒着があるので不適切だし、見える範囲が狭く、遠隔操作のために思わぬ事故や出血が生じ、結局開腹せざるを得なくなる場合もある。新しい技術なのでだれもが習熟しているわけではないし、医師が細心の注意を払っていても、事故や術後の感染、麻酔の事故なども皆無ではない。 患者としては、放置した場合の危険、腹腔鏡による手術と従来の開腹手術とを比べて利益と起こりうる危険を医師から十分に聞き、情報を集めて、自分で適切に判断する必要がある。 1997年11月10日付け日経新聞夕刊 |
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