自動車はガソリンを燃やして走るが、人はぶどう糖を燃やしてエネルギーを得る。ぶどう糖の完全燃焼に絶対に必要なのがインスリンだ。不足すると余ったぶどう糖が血液中に残り、血糖値(ぶどう糖の濃度)が高くなる。 一方、車に丈夫な車体が必要なように、人の骨格や血管、神経などをつくるには原料のたんぱく質と脂肪が欠かせない。その利用にもインスリンが絶対に必要である。
糖尿病はこの大切なインスリンが不足する病気。3大栄養素がうまく利用されないため、原料の供給(食事)やインスリンの補給(治療)が不適切だと、長年かかって血管や神経が脆くなる。血管の豊富な目の網膜、腎臓もやられて失明、尿毒症、神経障害など合併症を生じる。
しかし、健康な人と同じ快適な生活を送ることが可能な病気だ。血糖値に合わせて食事を調節するのではなく、体格と運動量から必要な食事量を決め、必要量を毎食バランスよくとることが重要。
適切な食事量で血糖値が高くなるなら、それはたいていインスリンが不足しているため。インスリンを注射で補給する必要がある。
過食は禁物だが、血糖値を下げる目的で粗食にすることは逆効果。血糖値は下がっても、かえって血管や神経をもろくして、糖尿病を悪化させる。くれぐれも間違わないように。糖尿病は、血糖値が高くなるだけの病気ではないのだ。
日経新聞97年6月30日付改編 |