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インスリンの必要性を根気よく説明しても注射を嫌がって逃げていた糖尿病の患者が、数年ぶりに這うようにして受診した。インスリンを開始したら「こんなに楽になるんだったら、あの時、言うことを聞いて注射したら良かった」と後悔しきり。視力が著しく低下していたが何とか持ち直し、失明は免れた。その後10年以上になるが、不自由ながら失明せずに過ごしておられる。 「注射はいや」「飲み薬で治らないか」と思う糖尿病患者は多い。「インスリンは麻薬みたいなもので、いったん打ちはじめたら止められない」と周囲から囁かれるとその思いは決定的になる。 間違ってはいけない。インスリンは、麻薬や覚醒剤ではない。歯がなくなれば入れ歯、老眼になれば老眼鏡が必要になる。入れ歯を入れるから歯が段々悪くなると思う人はまずない。眼鏡をかけるから老眼が進むのではない。老化現象で進むだけだ。同じように糖尿病患者にはインスリンが不足しているから補うだけのことである。 糖尿病の飲み薬がいろいろ出ているが、インスリンと比べると、いずれもはるかにその価値は低い。インスリンの大切さを、もっともっと重視すべきだ。 日経新聞97年7月7日付改編 |
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