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心臓は血液を送り出して全身に酸素を供給する大切な役割をもっている。この心臓の状態が悪くなると呼吸困難などの特有の症状が現れて活動が制限され、日常生活も困難になる。このように、心臓の働きが悪くなった状態を「心不全」という。 心不全になると、心臓から血液が送りだせないだけでなく、心臓に戻るべき血液が手足をはじめ全身にたまってしまう。このため、手足がむくんでくる。そして、全身に血液を送りだす主なポンプ(左心室)の手前、つまり肺に血液がたまり、肺の中までむくんでくる。このために呼吸困難となり、息がゼーゼーという。このような状態は一般に「喘息」と呼ばれるが、気管支が原因で呼吸困難になる気管支喘息と区別する意味で、心不全による喘息状態を「心臓喘息」という。 心不全には急性と慢性がある。心筋梗塞などで急激に心臓の働きが悪くなり、心不全症状も急に現れるのが本来の急性心不全だ。突然死亡し、死因よく分からない場合に「急性心不全」と言う病名がつけられることもあるが、これは厳密な意味の心不全ではない。 一方、慢性心不全では、徐々に心臓が悪くなっていく。慢性心不全の症状の出始めは、コンコンと軽い咳が出ることが多く「かぜ」と間違われることがある。そのうち動く時にだんだん息切れするようになったり、横になると息苦しく座ると楽になるという症状(起座呼吸)になり、次第に呼吸が苦しくなって病院を受診することになる。突然ゼーゼーと「心臓喘息」の状態になる人もいる。 慢性心不全が急に悪化した場合は、医学的には「慢性心不全の急性増悪(ぞうあく)」という。 種々の原因とその程度により、症状も様々だが、急性、慢性、慢性の急性増悪によって治療方法もそれぞれ異なる。原因を詳しく調べ、それぞれの状態にあった検査、薬の選択とさじ加減(用量の決定)が重要。内科医の腕の見せ所である。 日経新聞1999年4月19日付改編 |
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