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硝酸化合物を総称して硝酸剤という。以前は亜硝酸剤ともいわれていたが、現在では亜硝酸塩は医療にはほとんど使わない。ニトログリセリンがその代表であり、患者さんの間でも「ニトロ」と呼ばれている。 心臓の動脈を広げて、血液や酸素の供給を増やす作用があり、この作用によって、狭心症の発作に効くと言う説明が一般的だが、実は本当に重要な作用は、末梢の静脈を拡張させて、心臓に帰る血液を一時的に少なくし、心臓への負担を軽くする作用である。 事業にたとえれば、行き詰まった事業(血管が詰まって起きる狭心症)を、借金をして(酸素吸入や血管の拡張で)これまでの事業を維持する方法と、事業を縮小して(心臓帰る血液を少なくして)負担を軽くする方法の違いに近い。心臓に対する硝酸剤の作用はどちらかといえば、この地味な作用の方が、大きな役割をしている。 硝酸剤は、この他、心臓への負担を少なくする作用を利用して心不全に対して長期に使用されてきた。しかし、現在では、長期に使用すると耐性(慣れの現象による効果の減退)が生じることと、より効果的な血管拡張剤(ACE 阻害剤)が利用されるようになったため、心不全治療での位置づけは低くなってきた。 飲んで効く硝酸剤もあるが、最も即効性のニトログリセリンは飲むと肝臓で分解される。舌の下に含ませて溶かすと早く吸収されて良く効く。徐放錠や、はりぐすりもあるが、1日中効くようにすると耐性が急速にできる。1日に8時間、体内に薬がない状態をつくると耐性ができにくい。徐放錠なら1日1回にし、張り薬は、1日10時間程度は剥がしておく。昼だけ症状が出る人は夜は使用しないようにする。夜に症状が悪化しやすい人は、夜だけ使って昼は使用しないようにする方がよい。 硝酸剤は一般に、動脈も広げるので、舌下錠を立ったままで使用すると一気に血圧が下がって失神することさえある。必ず腰をかけるか、座って使用する。座っていてもめまいがするようなら、横になるか、膝の間に頭を入れて手で膝をかかえるようにしていると治まる。 頭の血管を広げる作用が強いので、頭痛がすることがあるが、使用し続けると慣れてくる。 硝酸剤は使用方法が微妙だ。バイアグラで問題になったことだが、併用で血管拡張が起こりすぎて、ショック状態になったりすることがある。医師の注意をよく守るようにして欲しい。 日経新聞2000年1月24日付改編 |
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