(2007.5.18号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No85

タミフルによる異常行動死・突然死
5.20薬剤疫学会シンポジウムで徹底討論

来る5月20日、1時〜5時、東京大学医学部構内において、日本薬剤疫学会が主催して、タミフルと異常行動死・突然死などとの因果関係に関する議論の場がもたれる。

日本薬剤疫学会
特別シンポジウム「インフルエンザ罹患後の異常行動と薬剤疫学」

この議論の場には、横田班の研究結果とそれに対して批判し、撤回を要求している浜(NPO法人医薬ビジランスセンター:薬のチェック代表)がシンポジストの一人となっている。

浜代表:

特別シンポジウムのタイトルは「インフルエンザ罹患後の異常行動と薬剤疫学」だが、私は、このシンポジウムが持たれることになった経過は、「異常行動死・突然死とタミフルとの因果関係」を議論するためであると理解している。

それは、3月22日に柳沢厚生労働大臣が、異常行動だけでなく突然死も含めて因果関係を再討論することを国会の場で明言した。そうした経過もあってこの検討回が提案されたと聞いているからだ。

因果関係を否定する論者だけでなく、因果関係を根拠を示して2年以上も前から強く主張してきた私をも含めた検討会がもたれることになったのは、本格的な議論をすることを目指したものと考えられる。

発表予定のスライドを事前に公開する

<スライド1>

タミフルは中枢抑制作用(dyscontrol, 呼吸抑制)により
異常行動死や突然死を起こす
2007.5.20薬剤疫学シンポジウム
インフルエンザ罹患後の異常行動と薬剤疫学
というより、
「異常行動死・突然死とタミフルとの因果関係に 関する検討会」
との理解で臨む

浜 六郎 NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)

<スライド2>本報告の概要(1)
  1. 薬剤疫学、調査の実施/解析に必須のこと
  2. かぜ脳症と非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)
リン酸オセルタミビル(タミフル)とは:
  1. わずかな効果(治療/予防)(略)
  2. 大きな害:
    1. タミフルは中枢抑制剤
    2. dyscontrol(脱制御)で異常行動/幻覚、せん妄
    3. 呼吸抑制で低酸素性ケイレン、突然死、
    4. 肺水腫(解剖で)
    5. 感染症時、急性期にのみ脳中移行
 これらは、→疫学調査において考慮が必須

<スライド3>本報告の概要(2)
  1. 「タミフル使用と異常言動との関連性認ず」は誤り
      最重要の初日午後の相対危険:約4〜5(有意)
  2. 他事実と矛盾なく説明可能(整合性)→因果関係支持
  3. 結論:タミフルは
    1. 中枢抑制作用(dyscontrol, 呼吸抑制)により
          異常行動死や突然死を起こす。
    2. タミフル服用後の異常行動、事故死、突然死、
         ケイレン後後遺症例は、タミフルが原因と考えるべき
<スライド4>疫学とは 平易にいえば、
  1. 世の中に
  2. 流行している(重篤かつ多い)病気の予防対策につながる要因を解明して
  3. 予防対策を実施し
  4. その効果を確かめる 学問
(浜六郎:日本の薬剤疫学の課題を考える、薬剤疫学 1(2):87-95、1996より)

<スライド5>薬剤疫学とは、日本の薬剤疫学の課題

薬剤疫学とは 日本の薬剤疫学が優先して扱うべき課題: (浜六郎:日本の薬剤疫学の課題を考える、薬剤疫学 1(2):87-95、1996より)

<スライド6>

本件についての薬剤疫学の課題は?
<スライド7>本件疫学調査に不可欠のこと
  1. 調査には仮説が必須
  2. 仮説設定に:疾患、薬物、交絡因子
      疾患=インフルエンザ 薬物=タミフル 交絡=他薬剤
  3. 特徴
     疾患:(1)感染時:高サイトカイン血症でBBB障害
     薬物:(2)タミフル未変化体は条件により脳に高濃度移行
        (3)タミフル脳中移行は急性期のみ(成人でも)
     交絡:アセトアミノフェン、非ステロイド抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤(テオフィリン,エフェドリン,β刺激剤)、鎮咳剤、制吐剤
  4. 横田班調査:重要手続きを無視(計画/解析)。
<スライド8〜16>

かぜ脳症と非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)など
 かぜ脳症・インフルエンザ脳症重症例の大部分は非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)
 脳症はインフルエンザ以外のウイルス感染症でもNSAIDs使用で生じる
 せん妄・ケイレンは、かぜに用いる抗ヒスタミン剤・鎮咳剤、など他の薬剤でも生じる

<スライド17>NSAIDs使用減少で死亡脳症割合激減(タミフル導入前)

<スライド18、19>タミフルの効果について

 タミフルの効果はわずか、無効なA香港型には無効であった

<スライド20>

 タミフルによる嘔吐は初日のみ有意に増加(オッズ比3.4)
 タミフル使用終了後、肺炎が有意に増加(オッズ比8.1)

<スライド21>

 喘息小児には無効、長引く子が多い。

<スライド22>タミフルの毒性試験

 タミフルで、動物は中枢抑制、呼吸抑制を起こして死亡・・・用量-反応関係あり
       死亡動物に肺水腫

<スライド22−b>

 未変化体タミフル(リン酸オセルタミビル)濃度と死亡割合と相関関係あり

<スライド23>症例1(突然死・肺水腫)
<スライド24>症例2 (突然死・肺水腫)
<スライド25>厚生労働省、報告症例より 他に、呼吸困難(チアノーゼ)と痙攣、意識消失(失神)・転倒と痙攣例など多数(ほとんどの例が関連あるとみるべき)

<スライド26>症例3(意識消失痙攣後、発達障害)
<スライド27>症例3(続き)
<スライド28>症例4(意識消失痙攣後完全回復)
<スライド29、30>

タミフル使用後ヒトに生じた中枢抑制症状や死亡と、動物実験における中枢抑制症状・死亡の類似点

<スライド31>

タミフルの中枢抑制作用はバルビタール剤、ベンゾジアゼピン剤類似であり、ベンゾジアゼピン受容体(BZD)に作用する?

<スライド32>タミフル服用後の突然死・心肺停止、後遺症例、完全回復例は連続
  1. 心肺停止・死亡(肺水腫ない例は超短時間のため?)
  2. 睡眠中突然死し、解剖で肺水腫あり(症例1、2)
  3. 長時間心肺停止後蘇生。X線上肺水腫、再酸素化で肺水腫は急速消退、重症の後遺症(寝たきり) (4月4日の厚労省開示症例を検討し判明)
  4. 一時的に心肺停止、痙攣重積状態、回復後後遺症(重度発達障害:退行・遅延:症例3)
  5. おそらく重症低酸素症による痙攣を2度にわたり生じたが完全回復 (症例4)
  6. 興奮・呼吸困難/痙攣後、完全回復(厚労省例に多数)
  7. 単に、脱力や呼吸困難・チアノーゼのみで痙攣なく、完全回復 (厚労省例に多数)
<スライド33>症状の重症度や後遺障害:

重篤度および後遺障害の順に並べると

A)せん妄・異常行動系反応:
  1. 一過性せん妄・異常行動(極めて短時間な例〜持続する例:一旦治まり、アセトアミノフェン服用し、解熱後に増悪した例など)(厚労省報告で指摘されたアセトアミノフェンとの関連は、タミフルとの交絡につき未調整)
  2. 窓から飛び出そうとするなど危険な行為があったが事故に至らなかった例、
  3. 危険行為を遂行し、軽傷であった例、
  4. 危険行為を遂行、重傷を負い救命された例
  5. 事故死例であるが自殺とは考えられない例、
  6. 事故死例中、自殺が疑われる例(中枢抑制剤のADR)
  7. 精神症状の1週〜3か月(以上)持続例(入院を含む)など。
<スライド34>タミフルによる精神神経症状の特徴(米:FDA)

  大部分は、初回〜2回目服用後、6時間以内に発症

<スライド35>せん妄発現時の体温

熱せん妄(薬剤非服用) vs タミフルせん妄
      高熱時         解熱時が圧倒的に多い

<スライド36>害反応(副作用)死亡例内訳 (2007.4.4現在)

<スライド37>再び、本件疫学調査に不可欠のこと
  1. 調査には仮説が必須
  2. 仮説設定に:疾患、薬物、交絡因子
      疾患=インフルエンザ 薬物=タミフル 交絡=他薬剤
  3. 特徴
     疾患:(1)感染時:高サイトカイン血症でBBB障害
     薬物:(2)タミフル未変化体は条件により脳に高濃度移行
        (3)タミフル脳中移行は急性期のみ(成人でも)
     交絡:アセトアミノフェン、非ステロイド抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤(テオフィリン,エフェドリン,β刺激剤)、鎮咳剤、制吐剤
  4. 横田班調査:重要手続きを無視(計画/解析)。
<スライド38>厚労省報告書横田班報告書:タミフルと異常言動の関連認めず

報告書資料4-7(1) (p20),同4-15(1)-4-15(4)(p36-35)

<スライド39>異常言動の頻度比較 (タミフル使用 vs 未使用)

グラフ

<スライド40>報告書調査のその他の問題点

調査計画にも解析方法にも、タミフルによる異常言動の過小評価に働く多数のバイアスあり,データ解釈にも重大な誤り
  1. 調査票配布者総数の記載がなく回収率が不明(基本的欠陥)
  2. 非ステロイド抗炎症剤の記載欄がない,
  3. 軽症例が多く混入し重症例の検出が困難,
  4. タミフル中断例が分母から除かれない,→追加解析では実施
  5. ランダム化比較試験でタミフルを5日間使用した後で肺炎が有意に頻発したが,この調査では発症7日目までしか観察しない
  6. 分母と分子のとり方が間違い,
  7. 最大頻度の初日の昼間の大きな差を,差が逆転する時期で薄めて累積発症率として比較している,など バイアスを最小化した調査により,タミフルによる異常言動の害が生じやすいことがなお一層明瞭になると思われる.
<スライド41>過小評価に働くバイアス(例)
<スライド42〜44>タミフル使用後の異常言動発症オッズ比推移

  初日午後で有意。 他は有意でなく、同じ程度に。
  報告書どおりとすると、矛盾したデータとなる。

<スライド45>報告書批判のまとめ(1) いずれの症状も有意に高率に発症していた.

<スライド46>報告書批判のまとめ(2) したがって、横田班報告書は,タミフルが異常言動を生じることを強く確認したものといえる。
インフルエンザ罹患時の異常言動とタミフル使用との関連は認められなかった、との横田班結論は間違い。
一旦取り下げ再提出or第三者の再評価に付すべき。

<スライド47>結論(1)
  1. 重篤な感染後脳症は、NSAIDsの規制によりタミフル開始前に激減した。
  2. リン酸オセルタミビル(タミフル)は治療にも予防にも真の有効性は証明されていない。
  3. タミフルは、動物実験、臨床試験、症例報告、ケースシリーズの解析結果から、
      中枢抑制作用があり、
      dyscontrolにより異常行動や幻覚,せん妄を、
      呼吸抑制により低酸素性ケイレン、突然死を起こし、
        解剖等で肺水腫を認める起こしうることが明らか。また、それを否定する証拠はない。
<スライド48>結論(2)
  1. 「不使用10.6%、使用11.9%で有意差なし」から、
        タミフル使用と異常言動との関連性を認めなかった、
        との趣旨の横田班報告書の結論は誤りである。
        報告書データ中の、意味ある初日午前既使用例と、
        初日午後6時までの未使用例との、初日昼の頻度を
        比較すると、相対危険は、約4〜5(有意)であった。
  2. この結果は周辺事実(前項3:動物実験、臨床試験、
       症例報告、ケースシリーズ結果からみた性質)と矛盾
       なく説明可能(整合性あり)、因果関係があるといえる。
  3. インフルエンザ罹患時、タミフル服用後に報告されてい
       る異常行動、事故死、突然死、ケイレン後の後遺症例
       の大部分は、タミフルが原因と考えられる。

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