(2007.7.13号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No91

タミフルの害反応
突然死50人:おそらく中枢抑制が関係

英医師会誌BMJ論説へのコメントがレターとして掲載

2007年6月18日号BMJ(英国医師会雑誌)の「タミフルと思春期における精神神経症状-未証明だが要注意」と題するの論説[a]に対してrapid response[b]を投稿し掲載されましたが、このほど、そのサマリーがBMJ2007年7月14日号(註1)に掲載された[c:html,pdf]ので、その訳文を紹介いたします。

註1:電子媒体のrapid responseはPubMedに掲載されないが、paper版(印刷媒体版)BMJに掲載されたletterはPubMedに掲載される。


オセルタミビルの害反応
突然死50人:おそらく中枢抑制が関係

Oseltamivir's adverse reactions
Fifty sudden deaths may be related to central suppression

リン酸オセルタミビル(タミフル/オセルタミビル-p)と思春期の精神神経系障害との関連について言及した論説[1]でMaxwell氏は、関連は証明されていないが注意が必要であると述べている。2007年6月16日, 日本の厚生労働省(厚労省)は、オセルタミビルを販売開始した2001年以来、07年5月31日までに1377人の害反応(副作用)の報告を受けたと発表した[2]。

このうち567人は重篤な精神神経系反応であり、211人が異常行動を伴うものであった。厚労省が報告した死亡数は71人であった。これらは単に有害事象死亡ではなく、医師が「おそらく関連あり」、あるいは、少なくとも「関連が否定できない」として報告した害反応死亡(副作用死亡)である。ところが厚労省は、4例のアレルギー性の死亡を除いてすべて「否定的」とした。

このほか、71人に含まれない死亡例として、厚労省が「副作用」と認識していない突然死が9人いる。

合計80人の死亡者中、50人が突然死あるいは突然の心肺停止による死亡である(10歳未満が18人、32人は20歳以上)。また、8人は異常行動から事故死した(5人が10代、3人は20歳以上)。これら58人の突然死や異常行動からの事故死を厚労省はすべて「否定的」としたが、これらは、多くの医師の分類——おそらく、あるいは少なくとも「否定できない」害反応(副作用)——と完全に異なっている。

4人はおそらく呼吸抑制に引き続き肺炎が悪化し敗血症を生じて死亡したと考えられる。10人(註2)は主に肺炎が悪化したため死亡したと考えられる。他の8人は、肝不全、汎血球減少症、消化管出血などによる死亡であった。

したがって、タミフルによる害反応(副作用)は大きく以下の3種類に分類されるであろう。

  1. 突然発症型反応:未変化体タミフル(oseltamivir-P) の中枢作用により、サイトカイン・ストーム中に生じる突然死や異常行動など急性の精神神経異常症状[3,4]。
  2. 遅発型反応:肺炎、敗血症、高血糖、遅発性精神神経系障害など、活性体タミフル(オセルタミビルカルボキシレート:oseltamivir-C) のヒト細胞質ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)阻害作用[5]に基づく可能性が考えられる反応。
  3. その他:アレルギー反応など......

である。

浜 六郎  医薬ビジランスセンター 代表

Japan Institute of Pharmacovigilance, No 402 Osaka 2-3-2, Tennoji-ku Osaka, Japan 543-0062

gec00724@nifty.com

利益相反:なし

註2:rapid responseでは9人としていたが、単純ミスであり、10人が正しい。

References

  1. Maxwell C. Tamiflu and neuropsychiatric disturbance in adolescents. BMJ 2007;334:1232-3. (16 June.)[Free Full Text]
  2. Advisory Committee on Drug and Food. Second annual meeting of the Sub-Committee on Safety of Medicine for 2007 held on 16 June 2007 (in Japanese)
  3. Hama R. New type of influenza-related encephalopathy or new adverse drug reaction?
  4. Hama R. Limited benefit and potential harm of oseltamivir including sudden death and death from abnormal behaviour.
  5. Li CY, Yu Q, Ye ZQ, Sun Y, He Q, Li XM, et al. A nonsynonymous SNP in human cytosolic sialidase in a small Asian population results in reduced enzyme activity: potential link with severe adverse reactions to oseltamivir. Cell Res 2007;17:357-62.[CrossRef][Medline]

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