(2007.12.25号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No98

タミフルの害:

作業班に開示された情報は因果関係を示唆する

(TIP誌最新号:12月号記事より)

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表 浜 六郎

タミフルと突然死や異常行動との因果関係見直しのための基礎および臨床作業班の中間結果には、厚生労働省(厚労省)の発表のまま流されたマスメディアの報道とは逆に、いずれも、タミフルと突然死や異常行動との因果関係を示唆する知見が多くえられている。

TIP誌最新号:12月号記事では、これらを紹介するとともに、そのギャップがなぜ生じているのかについても明らかにした。主な問題点を以下にまとめた。

まとめ

  1. 未変化体オセルタミビル(OT)の脳中濃度が計算ミスであったとされたが、訂正データを用いると、離乳前ラットの脳中濃度は、成熟動物脳中濃度の約64倍(Cmax)あるいは31倍(AUC)であり、訂正データを用いる方が死亡や症状との相関関係が強かった(相関係数はそれぞれr=0.992、r=0.999)(TIP誌では紙面の都合で割愛したが、元になったデータを資料1として示しておく)。

  2. 幼若動物が死亡したのは偶発的としたが、これは最低用量(300mg/kg)でのことであり、500mg/kg以上では偶発的といえない死亡が生じ、「瀕死状態」が認められている。しかし、分母(投与動物数)と分子(死亡数)、さらに、症状の詳細も示されていない。メーカーに問合せたが開示できない旨回答があった。これまでの結果(死亡も症状も用量-反応関係が明瞭)を覆すどころか補強するデータである。

  3. オセルタミビル(OT)の排出トランスポーターがP-糖タンパク(P-gp)であることを認識させる実験結果がメーカーの実験(in vitro)でも得られている。

  4. オセルタミビルカルボキシレート(活性型オセルタミビル:OCB)の哺乳類ノイラミニダーゼに対する活性阻害を示唆するデータが得られている。50mMで臨床的に問題となる阻害活性は認められなかったとしているが、10mM程度から低下傾向が認められるので、50mMでは十分低下している可能性がある(Liらの研究でも遺伝子多型のある場合には0.175mM程度で活性阻害)。

  5. 重症異常行動に関する臨床調査(後ろ向き調査)でタミフル服用者が60%であったことから、タミフルとの関連を示すデータが得られなかったとされた。しかし、対照群のないこの方法では関連を示すことは不可能で、むしろ、関連のあるデータを関連なしという印象を与えることが可能である(実際、ランダム化比較試験で初日のみ嘔吐が有意であったが、この方法を用いると、嘔吐者全体の61%がタミフル服用者であった、と表現される)。

市民患者が「ほんまもん」の情報を持つことが真の改革につながる
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