(2008.02.09号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No102

タミフル1万人調査の
解析方法・結果についての公開質問と要望

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表 浜 六郎

タミフルと異常行動との関連について検討するために実施された調査(いわゆる「廣田班調査」の第一次予備結果に誤りがあることを、『薬のチェック』速報版No.101で指摘しました。その後、さらに詳細に検討した結果をTIP誌1月号(2008年1月28日発売)「原稿版(正誤反映済)pdf版(正誤未反映)正誤表」に掲載しました。

この問題についての廣田班としての考え方を聞きたいと考え、2月8日、平成19年度厚生労働科学研究「インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究」の代表者、廣田良夫氏(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教授)に公開質問状を提出しました。

また、インフルエンザの季節の最中であり、今後さらにインフルエンザが流行すると考えられるため、早急に解析方法の誤りを訂正し、有意な関連があるという結果を、班として公表することを求める要望書も同時に提出しました。

要望事項:

2007年12月25日、平成19年度第5回安全対策調査会において公表された平成19年度厚生労働科学研究「インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究」の第一次予備解析結果を訂正し、正しい結果を至急公表されることを要望いたします。

要望理由の要約

  1. 第一次予備解析データを用いた適切な解析(処方群と非処方群の比較)では、タミフル処方の異常行動発症オッズ比は1.37(95%信頼区間1.18-1.58,p<0.0001)であった。
  2. 廣田班第一次予備解析の解析方法にはタミフル群の異常行動が過小となり、非タミフル群の異常行動が過大とさせる3つの重大な誤りがある。
    1. タミフル処方群(以下「処方群」)からタミフル服用前の異常行動「早期発症薬剤非服用イベント」を除き、タミフル非処方群(以下「非処方群」)にもあるタミフル以外の薬剤服用前の「早期発症薬剤非服用イベント」を非処方群から除くことなく解析した。
    2. 処方群の「早期発症薬剤非服用イベント」を、異質な非処方群にいれて解析した(しかも、その数は全年齢では非処方群のイベント数よりも多かった)。
    3. 処方群でタミフルの服用(時間)が記入されていない例のうち、異常行動が起きた例はタミフル群から除き、異常行動が起きなかった例はタミフル群に含めて解析した。
  3. 処方群と非処方群の比較データは危険度を少なめに見積もった推定値

    異常行動発症割合を処方群と非処方群で比較したオッズ比は、服用群と非服用群における、薬剤服用後(タミフル群はタミフル服用後、非タミフル群はタミフル以外の薬剤服用後)の異常行動発症割合の比較により得られたオッズ比よりも少ないため、小さめに見積もった推定値である。しかし、絶対リスク増加や、NNH(Number Needed to Harm:純粋にタミフルは何人に1人異常行動が起させるか)の値は変わらない。

  4. 1日目のオッズ比は、より大きいと推測される

    2日目以降はほとんど差がなく、異常行動や突然死、嘔吐などは、1日目に集中しているので、1日目だけを集計すればオッズ比はより大きな値となるであろう。

  5. タミフル処方群の異常行動発症増加は10歳未満でも認められた

    全体から10代の数字を差し引いた値で10歳未満の危険度を推計すると、オッズ比1.28(95%信頼区間1.08-1.52,p=0.0041)で関連は有意であった。

  6. 廣田班調査は10歳未満についても使用禁止の措置をとる根拠となる

    予備解析とはいえ、小児の全年齢でタミフルと異常行動との関連が認められ、10歳未満についても有意な関連が認められた。国は「因果関係が否定的」とした段階でも10代について「原則禁止」としたのだから、関連が認められた段階では10代はもちろん、10歳未満についても「全面禁止」とするべきである。

今回のデータは,その根拠となる重要なデータです。現在インフルエンザ・シーズンの最中であり緊急性を要することに鑑み、貴研究班(廣田班)は解析結果を至急訂正し、速やかに正しい解析結果を公表すべきと考えます。


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