2007年3月、タミフルと副作用の因果関係の調査を担当していた責任者の教授(横田俊平氏)が、タミフルの輸入販売元である中外製薬から多額の奨学寄附金を受け取っていたことが明るみになり、研究の中立性と公正さに対する疑問が社会的に指摘され、その後、利益相反の問題に関して検討が開始されました。
これまでに、薬事分科会に設けられたワーキング・グループにより、審議会に参加する研究者の利益相反問題に関して、「審議参加と寄附金等に関する基準」(申し合わせ)案が作成され、パブリックコメントが求められてきましたが、1月22日の申し合わせ(案)に対してもパブリックコメントが求められました。
当初の申し合わせ(案)(2007年12月3日付)では、この問題の発端となった奨学寄附金を提供資金の対象にしないというものでしたので、奨学寄附金を含めるべき、と、この問題に絞って意見書(2007年12月16日付)を提出しました。
薬害オンブズパースン会議や薬害タミフル脳症被害者の会からも同様の指摘があり、2008年1月22日付で示された改定案「審議参加に関する申し合わせ(案)」では、奨学寄附金が提供資金の対象になりました。
ところが、今回は審議に参加できないのは、審議対象となっている当該薬剤の製造企業(あるいは競合企業)からの1年間の受領総額が500万円を超える場合のみ(1企業1年間500以下なら審議に参加でき、50万円以下なら議決に参加できる)となっていました。また、特許や株式保有者の扱いが適切でないこと、薬害への反省が全くないこともわかりました。
そこで、今回は、申し合わせ(案)全般にわたって意見書を作成し、2月21日厚生労働省担当部局(医薬食品局総務課)へ提出いたしました。その骨子は、以下のとおりです。
医薬品は、現代の医療には不可欠ですが、日本では多くの薬害を繰り返し、歴代の厚生労働省はその責任を認め反省を繰り返してきました。薬害の発生してきた原因をたどると、そこには、研究者に対する製薬企業からの利益供与が大きく関係し、医薬品の有効性と安全性評価、承認、害反応(副作用)との因果関係の有無の判断、承認取り消しや回収の判断などを大きくゆがめてきたことが明らかです。
そこで、もう一度基本に立ち返り、医薬品の有効性と安全性評価、承認、害反応(副作用)との因果関係の有無の判断、承認取り消しや回収の判断は、国民(公衆)の健康に関わる、国としての判断、すなわち国の(公的な)重要業務であることを再認識し、これらの判断が、製薬企業と研究者と金銭的関係によってゆがめられることのないよう、その防止策として、利益相反の規定が必要となったといえます。すなわち、これら、重要な公的業務に携わる人は、私的企業のために、いささかも国民の健康を犠性にするようなことがあってはなりません。そうした趣旨を貫くために、利益相反に関して厳しく規定する必要があると思い、今回の意見書に盛り込んだつもりです。
今回の案では、特許・株保有者は寄附金・契約金と同様の扱いとされていますが、特許・株保有者は企業と利害を共にするものですから、薬事分科会の規定により審議会委員にはなれない「当該企業の役員や職員」と同様の扱いとすべきと考え、1項を設けて規定するよう求めました。
なお、
を添付しておきます。