柳沢厚生労働大臣(当時)が2007年3月に因果関係の見直しを明言し、4月4日の安全対策調査会において再検討のための、基礎ワーキンググループ(基礎WG)および臨床ワーキンググループ(臨床WG)をつくり、これまでに基礎WGを合計5回(第5回を2008年6月19日)、臨床WGを合計7回(第6回を2008年6月17日、第7回を7月10日)開催してきました。
ここでは、因果関係を示す結果が得られなかったとした2008年6月19日の第5回基礎WG検討結果、ならびに、基礎的なことを検討した第6回臨床WG(2008年6月17日)における臨床試験結果の問題点をまとめた記事を紹介します。なお、この記事は、8月上旬発行のTIP「正しい治療と薬の情報」誌2008年7/8月合併号に第3論文:「オセルタミビル(タミフル)の基礎的知見について」として掲載される予定ですが、重要性を考え、前もってインターネットで紹介します。
基本的な内容は、以下のようなものです。
『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No98タミフルの害:作業班に開示された情報は因果関係を示唆する
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直接脳室内に投与脳中平均濃度:最高926ng/mL(ng/g)=0.926μg/g 突然死用量(OT1000mg/kg)で死ななかったラットの脳中最高濃度=45μg/g したがって0.926μg/gは,その約50分の1という低い濃度に過ぎません。 これでは行動に変化が生じなくて当然です。
タミフルは、活性体になって、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを 阻害して抗ウイルス活性を発揮 するといわれています。ノイラミニダーゼは、ヒトも含めて、哺乳類のあらゆる細胞にあるのです。 細胞が若さを保つために必要な酵素です。
メーカーは、中枢作用や不整脈に関係する、重要な標的 (受容体やイオンチャネル、酵素など)を157種類調べた結果、30μMまで活性を示さなかったので、 中枢作用などはない、と結論付けています。
しかし、タミフルの毒性の特徴である突然死や異常行動は、睡眠剤や鎮静剤、 抗不安剤、抗けいれん剤であるバルビタール剤やベンゾジアゼピン剤の作用とそっくりです。 これらの薬剤が作用するのは、ベンゾジアゼピン受容体ですから、 タミフルがベンゾジアゼピン受容体に作用するかどうかを調べるだけでも有用なくらい重要な受容体です。
これが調べられていないのでは受容体をなにも調べていないのと同じです。
と、最初に言ったのはこのことです。
インフルエンザにかかって発熱したときにこそ、血液-脳関門が障害されてタミフル (未変化体)が脳中に高濃度に移行すると考えられますから、 動物にウイルスなどを感染させて実験すれば、離乳前のラットが呼吸抑制で死亡したのと 同じ現象が成熟した動物でも再現されるはずです。
NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)では、 その実験の重要性を以前から提案してきました (『薬のチェック』速報No82)。 当初基礎WGでも、メーカーに指示したのですが、メーカーの都合で取り下げられました。
といったのはこのことです。
(割愛)
健康成人31人を対象とした臨床試験実験で、 睡眠に対して「明らかな変化は認められなかった」 とメーカーは報告しました。
しかし、 下記のグラフ で見る限り、覚醒時間は短い傾向があり(95%信頼区間の上限がのほとんど1近く)、 全睡眠時間と、全睡眠段階2(睡眠の段階として最も多いもの)が長い傾向がありました (95%信頼区間下限がほとんど1近く)。
タミフルが睡眠時間を増加させ、覚醒時間を短くさせる可能性をうかがわせます。
タミフルには中枢抑制作用があると考えられること、 また、成熟動物でも少しは脳中にタミフル未変化体が移行することなどを考慮すれば、 眠気を催すと考える方が順当です。
少なくとも影響がないと断定することはとてもできないデータです。