NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)は9月13日、 厚生労働省の「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種について(素案)」 に対し、以下の骨子の意見書を、医療機関問題研究会と共同で提出しました。 詳細は、ホームーページ、『薬のチェックは命のチェック』35号(2009.7発行)および同36号(2009.10発行予定)を参照ください。
輸入ワクチンを特例承認することは、1)その必要性、2)従来からのワクチンの効力、有効性、安全性、3)輸入が検討されているワクチンの効力、有効性、安全性、4)薬事法上の要件のいずれの観点からも、認められない。
09Aインフルエンザ(注)の症例死亡率は07年の3分の1。30歳未満の死亡はない。沖縄県のピークは過ぎ、冬の半分、全国でも増加速度は鈍化。オーストラリアでも流行は終了し13年前の2分の1。
米国、メキシコで多い肺炎は細菌やウイルスが原因ではない。サイトカインストームによる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)。非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)はサイトカインストームを誘発する。米CDCが推奨するNSAIDsが重症化に関係している可能性が高い。
また、サイトカインストーム時のタミフルが最も危険。NSAIDsとタミフルを使用しなければ、09Aインフルエンザの危険はさらに少ないと推察される。
日本では、インフルエンザワクチンの効力・有効性はランダム化比較試験(RCT)で検証されておらず、調査は集団内接種-非接種の比較のみである。最大の交絡因子である「普段の健康状態」で調整すると差はなくなる。
海外のRCTで見かけ上有効であるのは、ワクチン接種により抗体検査やウイルス証明による診断がされ、検査で証明されるインフルエンザが減少するだけ。適切な症状診断では差がなくなる。
日本のワクチンが無効であることは対象接種地域と非接種地域を比較した10万人規模の前橋調査で、差がなく、証明済みである。これを上回るエビデンスは今もない。
一方、インフルエンザワクチンによる重大な害はある程度の規模で確実に出ている。
新ワクチンの効力主張は、HI抗体価の上昇(代理効果指標)による。臨床的インフルエンザ罹患(真の効果指標)を防止しないことは証明済み。日本で未使用のアジュバントを使用しており、危険の可能性が否定できない。
今回輸入を想定したワクチンは、公衆衛生上の特例を想定しているが、薬事法上の特例承認の要件を到底満たすものではない。