HPVワクチン(いわゆる「子宮頸がんワクチン」)の接種後に発生している広範な疼痛や運動障害を気のせい(心身の反応)と決めつけて、厚生労働省が「再開」を強く打ち出す可能性が迫ってきています。「心身の反応」説の問題点について、これまでの当センターの分析結果を元に緊急にまとめ、近日中に提言を行う予定です。
それに先立って、20013年12月25日の厚生労働省審議会(注)に報告された重篤反応の件数を分析した結果を公開します。
注:平成25年度第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と平成25年度第7回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議
HPVワクチンの接種勧奨を中止した後、重篤害反応の報告件数が激増している。これは、症状があっても、患者(家族)あるいは医師が、HPVワクチンの害反応と思わず、報告されていなかった被害例が報告されるようになってきたためと考えられる。
*a:推定接種人数は、各メーカーが提出した推定接種回数を一人平均接種回数(サーバリックス2.7回、ガーダシル2.4回)で除した数
*b:4.1~9/30報告全例には、2013.3.31までの接種者における発症例を含み、推定接種人数は、その期間内接種者として計算(期間以前の接種者からの発症がある一方、期間内接種者の将来発症例は報告されないため、意味のある数字である)
*b:表の脚注の*bを参照のこと
サーバリックスでは、2013年8月1日から9月30日の2カ月間で217人が接種したと推定され、その中から、接種後に重篤な害反応を発症した人が2人いました。
その意味でも、2013年8月以降のサーバリックス接種109人に一人といった頻度(表)は、決して過大とは言えないのです。
また、4月以降の接種者を分母として、それ以前の発症例も分子に入れて計算すると約200人に一人といった発症の頻度と推定されます。この数値も、決して害を過大評価した数字とは言えないでしょう。
サーバリックスの臨床試験では、接種後3.5年経過後では、10万人当たり年間875人(1年間で114人に一人)が何らかの自己免疫疾患にかかっていました。この状態がその後4年間続くと30人に一人が自己免疫疾患になるというとんでもない頻度となります。
ところが、厚生労働省では接種後1か月以降の発症例は因果関係が乏しいとして、接種後長期経過後に発症したケースはすべて因果関係を否定しようとしています。これはとんでもないことです。
2013年8月1日~9月30日の2カ月間でサーバリックス接種後に200人あまりの中で発症した2人はいずれも、接種当日の発症例でした。したがって、サーバリックスの臨床試験で示されているように、将来発症する例があることを考慮すると、さらに頻度は高まると言えるでしょう。