BMJ openは、先月(6月)に最もよく読まれたトップ10論文のリスト
the top 10 most read papers during the last month.
を公表した。さて、1位は?
Rank | Author(s) | Title |
---|---|---|
1 | Ravnskov et al. | Lack of an association or an inverse association between low-density-lipoprotein cholesterol and mortality in the elderly: a systematic review |
すなわち、
Ravnskov U, Diamond DM, Hama R, Hamazaki T, Hammarskjöld B, Hynes N, Kendrick M, Langsjoen PH, Malhotra A, Mascitelli L, McCully KS, Ogushi Y, Okuyama H, Rosch PJ, Schersten T, Sultan S, Sundberg R. Lack of an association or an inverse association between low-density-lipoprotein cholesterol and mortality in the elderly: a systematic review. BMJ Open 2016;6: e010401
が1位で、最もよく読まれた論文であった。
日本から、太字の4人(アルファベット順に、浜六郎、浜崎智仁、大櫛陽一、奥山治美)が参加した。
要旨を翻訳すると以下のとおり
目的:総コレステロールの総死亡や心血管死亡の危険因子としての傾向が加齢とともに少なくなるか、あるいはまったく危険因子でなくなることはよく知られている。しかしながら、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-コレステロール)は総コレステロールの構成要素の一つだが、高齢者で死亡率と関係しているかどうかに関しては、あまり分かっていない。そこで、我々はこの問題に関して調査することとした。
調査場所、参加者、アウトカム測定法:60歳以上の一般人口集団を対象として、各個人につきLDL-コレステロール値を検査し、その総死亡率もしくは心血管死亡率への危険度を比較したコホート研究をPubMedで検索した。
結果:19件のコホート研究が検出された。合計30コホート68,094人の高齢者が対象となっていた。総死亡率は28コホート、心血管死亡率は9コホートで調査されていた。16コホート(14コホートで統計学的に有意)で、総死亡率とLDL-コレステロールの間には逆の関連があった。この16コホートに総死亡が調査された全対象者の92%が含まれていた。残りのコホートでは、関連が見られなかった。2件のコホートにおいて、心血管死亡率は、LDLコレステロールが最低の四分位値で最も高く、統計学的に有意であった。7コホートでは関連が認められなかった。
結論:高 LDLコレステロール値は、60歳以上の人々の大部分で総死亡率と逆の関連がある。この知見は、従来の「コレステロール仮説」、すなわち、「コレステロール(特にLDLコレステロール)は粥状硬化を生成させる作用を本質的に有している」という考え方と一致しない。高齢者では、LDLコレステロールが低い人よりも高い人の方が長生きであるので、我々の分析結果は、「コレステロール仮説」の妥当性に疑問を投げかける、よい理由となる。さらに、我々の研究結果は、高齢者の心血管疾患を予防する戦略としての、LDLコレステロールに対する薬物療法ガイドラインを再検討することが適切であることを示している。
昨年(2015年4月)は、浜崎智仁医師を筆頭著者に、奥山治美、大櫛陽一、浜六郎の4人の共著によるコレステロールと総死亡率の総説論文を出版している(特に日本の疫学調査を中心に論を展開している)。併せて読んでいただければと思います。Freeアクセスです。
またスタチン剤がいかに心疾患を悪化させるかに関する奥山治美氏が筆頭著者の総説も、昨年出版されました。これもFreeアクセスです。