COVID-19用ワクチンおよびワクチン候補の問題点については、薬のチェックNo92(2020年11月発行)[1]で詳しく取り上げました。ワクチン候補の効力と安全性は?新製法の候補ですでに神経障害が高頻度Free(PDF) 関連資料[2]もご覧ください。
2021年2月5日現在、COVID-19予防用のワクチンを正式承認した国はありません。承認は正式でなく、すべて緊急使用承認(Emergency use authorization)によるものです。いわば仮承認なので「ワクチン候補」の段階とすべきものですが、煩雑なので以下「ワクチン」とします。
2020年12月3日、ファイザー社とビオンテック社が開発したRNAワクチン(BNT162b2、以下「BNT」と略)を英国が緊急使用を許可し[3]、その後米国をはじめ世界各国で緊急使用承認による接種が進行しています。モデルナ社のRNAワクチン(mRNA1273、以下「MOD」と略)[4]が2020年12月18日米国で緊急使用許可(EUA)を得、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン(AZD1222、以下「AZD」と略)も2020年12月30日、英国で緊急使用許可[5]されました。
これまでにBNTの大規模第Ⅲ相試験の中間報告(NEJM、12月10日[6])およびMODの大規模第Ⅲ相試験の中間報告(NEJM、12月30日[7])、AZDの第Ⅲ相までの4試験を合わせた中間報告(Lancet、12月8日[8])が公表されています。また、主に米国FDAから緊急承認の際の評価結果の文書が、BNT[9]およびMOD[10]に関して公表され、EU規制当局からAZDの情報[11]が公表されていますので、これらをもとに評価します。
イスラエルではCOVID-19の感染が急速に拡大し、1月末ですでに人口930万人のうち14人に1人(2週間で国民の1%超)が感染しています。ワクチン接種が積極的に進められ、人口の3分の1が少なくとも1回接種し、19%は2回接種を終え、70代の人口の92%が1回、80%は2回の接種が終了したと報じられています[12]。毎日20万回のペースで接種が進んでいるといわれています。
その一方で、ノルウェーでは75歳以上の42000人に接種し33人が死亡したと報じられており[13]、これは冒頭で述べたように1300人に1人という極めて高頻度の死亡になります。
これらのワクチン(候補)の効力と安全性について、検討を加えました。
検討で注意した点は、95%の予防効果があると報じられたことの真偽と、安全性の検討がきちんと行われているかどうか、そのバランスが評価されているかどうかです。多数に接種されてからの害の報告についてもできる限り情報を集めました。
さらに、最も重要な点は、日本で広く接種がなされた場合に、COVID-19による重症化、特に死亡する人を減らすために、何人が接種しなければならないかを、年齢別に検討しました。
2021年2月3日現在の累積死亡者数、感染確認者数の年齢別データ[14]が、厚生労働省(厚労省)から報告されているので、これを用いました。
ファイザー・ビオンテック社製のワクチン(BNT)と、モデルナ社製のワクチン(MOD)は、いずれもRNAワクチンです。一方、アストラゼネカ社のワクチンは、ウイルスベクターワクチンです。
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の遺伝子情報はRNAという核酸で、タンパク質を作る設計図はメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれます。COVID-19用のmRNAワクチンは、SARS-CoV-2が人の体に侵入する際にその受容体(ACE)に結合するウイルスの突起部分(これを「スパイクタンパク質」という)の設計図(mRNA)を脂質ナノ粒子に封入して製剤化したものです。mRNAワクチンが抗体を作る様子を、ビオンテック社[15]および米国CDCの情報[16]をもとに解説します。
このワクチンを上腕の筋肉に注射すると、生体にとっては異物ですから、免疫細胞(マクロファージ、抗原提示細胞:APCともいう)がこれを取り込みます。マクロファージ内でmRNAは脂質から解放され、これを設計図としてスパイクタンパク質が合成されます。タンパク質が作られた後、mRNAはマクロファージ内で分解されて除去されます。しかし、マクロファージは細胞表面に異物であるスパイクタンパク質を抗原として提示します。このスパイクタンパク質は、もともと人の体内にはない異物ですから、体の一連の免疫反応によって抗体を作ります[15,16]。
サルを使った動物実験[17,18]では、ワクチン候補群の気管支洗浄液中のウイルス量の減少程度に比べて、鼻や喉のウイルス量の減少程度は少ないものの、ある程度は抑制され、肺炎症状も減少していました。
一方、アストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチンは、チンパンジーのアデノウイルスの毒性を示す遺伝子の代わりにSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の遺伝子情報をアデノウイルスのDNAに組み込み製剤化したものです[19,20]。筋肉注射すると体内の細胞に取り込まれ(感染し)ますがそれ自体は増殖しなくなっています。しかし、その細胞内でDNAから読み取られてmRNAができ、これをもとにしてスパイクタンパク質が作られます。どのような細胞に取り込まれるかは不明ですが、いずれにしても感染した細胞は異物として体の免疫反応で壊され、細胞内で作られたスパイクタンパク質が放出されます。放出されたスパイクタンパク質はマクロファージ(抗原提示細胞=APC)に取り込まれ、一連の免疫反応によって抗体が作られます。
アストラゼネカ社製剤をサルに使った動物実験で、筋肉注射ではワクチン候補群の気管支洗浄液中のウイルス量は減少しましたが、鼻のウイルス量はほとんど減少しませんでした[21]。しかし、鼻に投与すると、気管支洗浄液中とともに鼻のウイルス量も減少しました[22]。中国で開発されたカンシノ社のベクターワクチンでも同様の動物実験結果が得られています[1,23]。人での接種は、いずれも筋肉注射で実施されています。少なくともアストラゼネカ社製のベクターワクチンの臨床試験の結果は、これら動物実験結果をよく一致しています。
3製剤の特徴(基本的性質、効力・効果、害、保管方法)を表1にまとめておきます。以下に、各製剤について、表1を参照しながら解説します。
BNTの第3相試験[6,9]は16歳以上の対象者の約半数にBNT、残り半数に生理食塩液(生食)を注射したプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)です。1回以上注射を受けた人が約2万人ずつ、2回目接種後1週間以上観察し、試験開始時にはCOVID-19の感染が認められなかった人が1.8万人ずつで、平均観察日数は46日間、観察人年は約2300人年ずつでした。
背景因子については2群で特別の違いは認められませんが、ランダム割り付けがされて1回以上試験製剤を用いた43,448人から、中間値で2か月間追跡した37,706人の過程での脱落者は5742人います。脱落理由の詳細が不明であることが、最も疑問な点です。
接種7日以降に発熱や咳、咽頭痛、味覚・嗅覚異常、下痢、嘔吐など、COVID-19に伴う何らかの症状が認められた人について、PCR検査で陽性が確認された例をCOVID-19の顕性感染者として、両群で比較しました。
次式に示す「プラセボ群の顕性感染リスクに対するワクチン群とプラセボ群とのリスク差の割合」を顕性感染抑制率(%)とし、これをワクチンの有効率とみなしています。
ワクチン有効率(顕性感染抑制率)=(プラセボ群顕性感染率-ワクチン群顕性感染率)/プラセボ群顕性感染率
1回目接種後の有効率(顕性感染抑制率)は82%(BNT群50/21314 対プラセボ群275/21258)でした。主アウトカムである2回目接種7日目以降の有効率(接種時既感染者を除く)は95%(8/18198対162/18325)でした。年齢別に大きな違いはありません(93.7%~95.6%)。
重症化予防率は89%(1/21314対9/21258)でした。ただし、この重症化予防率は、450人中で年間1人が重症化するという、高頻度に重症化するような集団で、年間500人に1人の重症化を防止できた、ということを意味しています。試験期間中に死亡した人はBNT群2人、プラセボ群3人(または4人)であり、COVID-19に関連した死亡ななかったとされています。顕性感染者が重症かどうかは、対象者がどちらの群かを知らないファイザー社内の医学専門家3人が判定した、とされています([6]プロトコルより)
不顕性感染者の比較データはなく、その防抑制効果は不明です。
重篤な有害事象は両群で同程度と報告されています。しかし、詳細は不明ですが、関連ある何らかの有害事象(害反応)が21%対5%(オッズ比約5、p<0.00001)、重症有害事象(severe AE)が1.7倍生じていました。痛みや発熱のために解熱・解熱剤が必要であった人が、2回目接種時には特に多く、プラセボ群10%に対して、BNT群は38%とオッズで5.6倍必要としていました。
MODの第3相試験[7,10]は18歳以上の対象者の約半数にMOD、残り半数に生理食塩液(生食)を注射したプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)です。1回以上注射を受けた人が約1.5万人ずつ約3万人いました。試験開始時にはCOVID-19の感染が認められず、2回目接種2週間以降も観察できた人が両群で2.7万人いました(各群3400人年観察)。
MODの第3相試験では、対象者と医師との二重遮蔽ではなく、対象者と観察者の遮蔽とされていて、正式の二重遮蔽でないようです。詳細不明ですが、接種を担当した医療関係者は、どちらを注射したかを知っていたということでしょう。対象者への接し方に微妙な差がありうるといえます。
1回目接種後の有効率90%、2回目接種14日目以降の有効率は94%と、BNTの結果とほぼ同様でした。不顕性感染者の比較データはなく、その防抑制効果は不明です。
害については、何らかの重症の反応が20%ありました。また、関連のある重症有害事象(害反応)が71人(0.5%)対28人(0.2%)と、MOD群に2.5倍ありました。また、40℃を超える発熱もしくは命を脅かすほどの嘔吐がMOD群で1000人に1人の割合で生じていたことが特筆されます。これらは、特に高齢者の死亡の原因となりうるために、重要です。
AZDの報告[8,11]は、第2/3相試験と第3相試験が主ですが、第1/2相試験2件をも加えた報告です。主な第2/3相試験と第3相試験はどちらも、遮蔽は対象者だけで、接種者も結果の観察者も遮蔽されていません。それでも、最大で1300人年、2回目接種後2週間以降からでは680人年の観察にとどまり、有効率も約60%と、他の2つのワクチンに比較して低い有効率にとどまっています。サルを使った動物実験の結果とおおむね一致した成績でした。
不顕性感染者(無症状または症状不明者)は、AZD群34人、対照群37人で、防止効果は7.8%(有意差なし)と報告されています。しかし、何らかのPCR陽性者(102人対189人)から有症状者(63人対150人)を除いた数で比較すると、両群とも39人ずつとなり、防止率は0%でした。
一方害は、1280人年の観察(註1)で、横断性脊髄炎が1人、多発性硬化症の顕在化例1人と、合計2人の自己免疫性神経疾患が報告されました。これは、10万人年あたり156人(95%信頼区間:18.9-563)であり、多発性硬化症の自然発症の罹患率が10万人あたり2~12人ですので、その10~80倍であり、非常な高率となります。
註1:本誌92号の記事では、1600人年程度と推定したが公表データ[8]で1280人年であった。
ノルウェーでは、75歳以上の高齢者42000人がファイザー・ビオンテック社製ワクチン(BNT)の接種を受け、その後短期間に(within a few days)33人が死亡した、と報じられています[24]。ノルウェーの医薬品規制当局では、33人のうち13人について詳しく検討し、発熱や吐き気、あるいは下痢などのこのワクチン接種後によく起こる害反応の症状が、病弱な高齢者の死亡に関係している可能性があると、ワクチン接種との関係を指摘しました。そして、最重度の虚弱な高齢者では、比較的軽い反応でも深刻な結果をもたらす可能性があること、余命がわずかの人にとってワクチンの利点はほとんどなく接種は不適切、といった点が指摘されています。現場の医師に対して、虚弱な高齢者では、ワクチンの利点と欠点を慎重に検討することを要請しています[24]。
例えば、モデルナ社製剤(MOD)では1000人に1人は40℃以上の発熱あるいは命に関わるほどの吐き気が起こったことが臨床試験では報告されています[7]ので、これが病弱な高齢者に起これば、実際に死亡につながりうる、ということを示しています。
ハンク・アーロンさん(86歳)は、COVID-19用のモデルナのワクチンを、妻とともに2021年1月5日初回接種し、その様子がニュースで報道されました[25]。米国の黒人に対して、「ワクチンは安全」とのメッセージとなるはずでした。「今日、大学病院でCOVID-19ワクチンを打ったことを誇りに思います。皆さんも同じように打ちましょう。」と、その日ツイッターに記しています[26]。しかし、17日後の22日、睡眠中に死亡し、他に死因は特定されていないと報道されました[25]。
ハンク・アーロンさんの死亡報道の後、日本ではほとんど報道されていませんが、世界的には、ハンク・アーロンさんの死亡は自然の経過であってワクチンは無関係、というコメントで埋め尽くされています[27,28](22日の死亡報道[25]が4ページ目でようやく出てくる)。
乳児突然死症候群(SIDS)もしくは不測突然死(SUD)とワクチン接種との関連は、疫学的調査で指摘されています[29-31](註2)。
ヒブワクチン(2008年12月開始)や肺炎球菌ワクチン(2010年1月開始)による相次ぐ突然死で2011年3月に接種が一時中断され、1か月後に再開はしましたが、接種と突然死との関係は大いに疑われました[30,31]。これを契機に、日本で法医解剖によりSIDSと診断基準された50例を検討し、32例でワクチンの接種が認められ、うち7例は死亡の7日前にワクチンの接種を受けていたこと、最も多かったのはHibワクチンであったと報告され、ワクチンとの関連が強く疑われています[33]。また、双生児がワクチン接種後に同時(同じ日)に突然死することも多数報告されています[34-36]。したがって、ワクチン接種と突然死との関係は相当に深いと考えられます。
註2:症例-対照研究のメタ解析の結果[32]では、ワクチン接種はSIDSを半減させる効果があったとされている。しかし、それらの調査では、ワクチン接種者はふだん健康であり、発熱や体調が悪い子は接種しないこと、つまり「健康者接種バイアス(healthy vaccinee effect)」を考慮していない[28-31]。逆転した結果は、このためと考えられる。
この点は、本誌43号[31]やTIP誌2011年4月号[30]で論じました。何らかの原因で低酸素血症が生じると、通常は、脳の呼吸中枢がそれを感知して、「酸素が少ないからもっとしっかりと呼吸をしなさい」という呼吸を促進させる(呼吸駆動の)指示が出され、呼吸を強くして酸素濃度を上げます。ところが、この仕組みが、薬剤(タミフルや睡眠剤、オピオイドなど)や細菌の毒素、感染症による炎症状態などで障害されると、低酸素状態で呼吸駆動が働かず、低酸素状態が進んでしまい呼吸が止まる、と考えられています。
少し細かくなりますが、その仕組みを説明しておきましょう。感染症が起こると異物を排除するための炎症反応が起こります。炎症を起こさせる物質を炎症性サイトカインといいます。炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン-1(β)が、脳の毛細血管の細胞内でプロスタグランジンE2という炎症を起こさせる物質を作り、脳の内部に放出します。それが、延髄にある呼吸中枢に働き、呼吸駆動の働きを障害して呼吸を抑制します。低酸素状態になると、ますますプロスタグランジンE2が多くできるために、悪循環に陥って低酸素状態が進んでしまい、呼吸が止まると考えられています[37,38]。
ワクチン接種は、一種の「毒素」を接種しているのと同じですから、ウイルスや細菌による上記のような仕組みで睡眠中に無呼吸を起こすと考えられています。
これらの知見は、乳幼児に相当する動物実験から得られたものが主ですが[37,38]、ある程度成長しても影響がありました[39]。
また、成人の「睡眠時無呼吸症候群」でも、この機序が当てはまります。睡眠時無呼 吸症候群の発症機序は、主に肥満による気道の閉塞が挙げられています[40]が、それだ けではありません。高度肥満者ではTNF-αやインターロイキン(IL、特にIL-6やIL-1β )などのサイトカイン類が誘導され、体内に様々な炎症反応を起こし、心臓病や糖尿病 の原因になります[41]。一方、サイトカインによりプロスタグランジンE2が増え、睡眠 中の無呼吸や低酸素状態の原因にもなりうると考えられます。睡眠時無呼吸症候群では 、TNF-αやインターロイキンなどサイトカインが増加していますが[42]、肥満による高 サイトカイン状態は、無呼吸の原因となりうるとともに、無呼吸で低酸素状態になると 高サイトカインを生じ、プロスタグランジンE2を増やして炎症を起こす原因ともなり[4 2]、悪循環を生じます[37,38]。
肺炎球菌ワクチンを接種すると、40%近くの子が発熱し、数%から10%の子は39℃を超え、接種後に毎回5分の1から3分の1の子が傾眠状態になります[31]。
COVID-19用のワクチンBNTやMODでは発熱は10数%から20%程度ですが、異物に反応して、局所が腫れ、それ相当の炎症性サイトカインが出て関節炎なども生じ炎症状態が起こっています。軽度のウイルスあるいは細菌感染は、SIDS例の70~80%にも認められるといいます[31]。ワクチンは、そうした感染状態の代わりになるものですから、関係があって当然であるわけです。
ハンク・アーロンさんのように86歳ともなると、さすがに体の機能は衰えてくるために、ワクチンで軽い炎症状態が起こり、低酸素状態になっても呼吸駆動が働かずに低酸素が進んで突然死した可能性がありうると考えます。規制当局やメディアでは、「自然の経過」として因果関係を否定していますが、「ワクチンを打ちましょう」とテレビで元気に呼びかけた人が、接種2週間後に老衰で呼吸が止まるとはだれも予想しなかったはずです。「無関係」とするには、あまりにも無理があるでしょう。
COVID-19用のワクチンBNTやMODはmRNAを封入するためにポリエチレングリコール(PEG)という脂質を用いているため、アナフィラキシーの危険があります。
米国では1月初めに29人のアナフィラキシーの報告があり、これは100万回の接種で、5.5人の割合だと報道されました[43]。通常1人に2回接種しますから、10万人に1人の割合でアナフィラキシーが起こったということです。何らかのアレルギーの既往のあった人にアナフィラキシーは起こっていますが、全くアレルギーやアナフィラキシーを経験したこともない人にも起こっている点は注意が必要です。
アナフィラキシーは、接種直後に生じ、速やかに適切な治療(アドレナリンとステロイド剤)をすることで救命が可能ですし、死亡者はこれまでのところ報告はさていませんが、治療が遅れたり間違っていたりすると、死亡の危険性もあります。十分な注意が必要です。
米国マイアミで診療していた産婦人科医(56歳)は、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンの1回目を2020年12月18日に接種し、3日後に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を発症。接種16日後に脳出血で死亡した、と報じられています[44]。
ワクチン接種後の自己免疫疾患は、多発性硬化症など神経系をはじめとして、長期にわたって生じることが特徴です。これまでのところ長期にわたる観察はされていませんので、COVID-19によるワクチンの害の本当の姿は、まったく未知数と言わざるを得ません。
日本では、2月中にも、医療従事者を対象にワクチンの接種が開始されようとしています。BNTとMODの公表された試験では、年間7~8%の人が症状を呈するCOVID-19に罹患するような人を対象にしてワクチンの効果が試されました。一方、日本では、無症状の人も含めて年間0.3%の人が感染する程度であり、症状のある人はこれよりも少ないはずです。したがって、試験の対象者に比べて、日本では30~40分の1、死亡者も30分の1程度です。
本当は、重症者をどの程度減らすことがでいるかも検討したかったのですが、残念ながら、累積の重症者数が公表されていませんし、年齢別の累積重症者数もわかりません。年齢別に検討が可能なのは死亡者数のみです。なお、2020年6月、厚労省は、死亡者がPCR検査でSARS-CoV-2が陽性ならば、すべて報告するように都道府県に通達を出しています[45]。厳密にはCOVID-19による死亡でなくとも、死亡者数に入れられているため、実際のCOVID-19の死亡者は、公表データよりも少ないはずですが、一応厚生労働省が公表したデータを用います。
一方、臨床試験の規模と、観察期間から、COVID-19による死亡者はMODの試験で対照群に1人いただけで、死亡者の減少効果を直接推定することは不可能でした。
そこで、BNTとMODの有効率95%が、死亡の予防効果にも適用でき、また予防効果が1年間は同様に続くと仮定した場合に、日本でどの程度役立つかを推測します。日本に住む人の中でCOVID-19による死亡を1人減らすために何人に接種する必要があるかを計算しましょう。
これまで日本では、<a href="https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000734265.pdf">2021年2月3日現在の累積死亡者数、感染確認者数の年齢別データ[14]として、表2に示すように、年齢別の死亡者数が公表されています。昨年の冬と比較して今年の冬は非常に寒かったせいもあり、これまでの2つの時期(4月と7~8月)よりも流行がはるかに大きく、死亡者も2月8日現在でもまだ減少傾向が見えていません。したがって、この2020年秋から第3期の死亡者数は、第3期の始まりからこれまでの死亡者数の2倍を超える可能性があります。
そこで、第3期の終息までの1年間の死亡者数が、本年2月3日までの死亡者の2倍になると仮定します。これは、ワクチンの効果が過少評価にならないようにとの配慮です。
それをワクチンで95%減らすことができると仮定して、COVID-19による死亡を1人減らすために何人に接種する必要があるかを計算しました(表2)。念を押しますが、ワクチンで減らすことができる死亡者数をかなり多い目に推定した結果ですので、間違わないようにしてください。
1人のCOVID-19による死亡を減らすために必要な接種者数は、80歳以上では1700人、70代は6400人、60代は2万人、50代は6万人、40代は20万人、30代は60万人、20代は200万人と推定されました。20歳未満での死亡者はこれまで0人ですから、死亡を減らすことはまったくできない、という結果です。
80歳以上の高齢者ではワクチンを接種して救えるCOVID-19による死亡者数よりも、ノルウェーの75歳以上のワクチン接種後の短期間の死亡者数の方が多い、ということになります。
ハンク・アーロンさんのような、当局はワクチンとの関連を否定した睡眠中の突然死も含め、また、今後増加する可能性のある、米国の産婦人科医師のような自己免疫疾患も含めると、高齢者だけでなく、比較的若い年齢層でも、害の方が大きい可能性があります。
特に、30歳未満の人たちは、1人の死亡を減らすためには600万人に接種しなければならないのです。1人の死亡を減らすために、これだけ多数に接種すれば、何人にアナフィラキシーや自己免疫疾患、睡眠中の突然死も起こるか測り知れません。
感染機会が大きい医療や福祉関係の従事者では、利益が害を上回る可能性もあり得ます。しかしながら、これら高リスク者の死亡率のデータがありませんので、正確な判断ができません。個別に、手探りで考えなければいけないでしょう。当センターでは、たゆまず情報収集に努め、解析に必要なデータが入手でき次第、順次発信するつもりです。