厚生労働省(厚労省)は3月26日、ワクチン副反応検討部会と医薬品副作用調査会の合同部会で、COVID-19用ワクチン(ファイザー社製)を接種後、2人の死亡例の報告を受けたとの情報を公開しました。
それと同時に3月21日までに、約58万回接種が行われ、アナフィラキシーの報告が181件あり、専門家の評価でブライトン基準(註1)で47例がアナフィラキシーとされたことも公表しました。
今回の速報では、2人の死亡例に焦点を当てて、当センターの評価を速報します。
2人の死因がどちらも「クモ膜下出血」というのは、偶然の一致といえるでしょうか。珍しいことが連続して起こった場合、よく「2度あることは3度ある」といいます。これは、偶然とはいえず、因果関係がありうることを、経験的に言い表したことわざで、統計学的にも意味あることです。
特に、26歳の持病もない健康な女性がくも膜下出血で死亡したというのは、偶然で済まされない可能性があります。おおざっぱな確率を計算してみましょう。
2019年の人口動態統計で、25~29歳の女性286万人中、くも膜下出血死亡は10人いました。10万人年あたりに直すと、0.35人となります。
ワクチン接種後のくも膜下出血による死亡率はどうでしょうか?
2021年3月21日までにCOVID-19用ワクチンを接種した約58万人のうち、77%が女性と推定されます。この45万人のうち25~29歳の女性はその9分の1、約5万人と推定されます(註2)。
症例2の26歳の女性は、3月19日から4日後に発症して死亡しました。接種後4日間の観察で1人死亡の死亡率(/人年)を計算しましょう。
5万人×4/365(日)=540人年の観察中に、1人のくも膜下出血死亡があったことになります。したがって、10万人年あたりでは184人です。
単純に184人と0.35人の比を求めてリスク比とすると、危険度は約500倍となり、統計学的にも有意です(p<0.00001)。
4日間の観察ではなく半年間観察したとしても、危険度は約12倍で、統計学的にも有意でした(p=0.003)。
くも膜下出血や脳出血は、脳の血管の分岐部に強い圧力がかかり、動脈瘤が徐々に大きくなり、ついには破裂して出血が起こります(図参照)。
症例1では、日頃から頭痛をよく訴えていたとのことですが、ワクチン接種後にも頭痛があり、その他局所の痛みや、体調不良のさらなる悪化で、血圧が上昇し、ついには動脈瘤が破綻した可能性があります。
症例2では、頭部CTで、小脳左半球の小脳橋角部にかけて直径3.5cmの血腫と、その周囲にくも膜下出血の広がりがあり、血腫は動脈瘤の可能性が指摘されています。いずれにしても、ワクチン接種後の様々な不快な症状で血圧が上昇したことで、血管の破綻が生じた可能性が否定できません。
さらに重要なことは、20代女性で、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)で死亡した人は、2020年1月以来、1人もいませんが、ワクチンを約5万人に接種して、4日目に1人が死亡した、という事実です。
死亡した2人はいずれも医療関係者です。接種前後の体調の異常に気付きやすいでしょうし、発見後の対処も素早いでしょう。しかし、今後、医療従事者以外に接種が広がるにしたがって、COVID-19による死亡よりも、ワクチンによる死亡が多くなる可能性を具体的に心配する必要がある、ということを示しています。