(2022.01.18号)

『薬のチェック』速報版 No201

COVID-19情報

ワクチン接種で死亡は減らない PDF

薬のチェック編集委員会

はじめに

COVID-19ワクチンに限らず、ワクチンには、利益と一定の頻度で現れる害があります。ワクチンで防止する感染症による死亡を減らしたとしても、ワクチンの害で他の病気による死亡を増やすことがあります。速報No198[1]、No199[2]で述べたように、HPVワクチンを25歳以上の女性に使った場合、アジュバントを注射した対照群の女性に比較して、死亡危険度が5倍も高くなっていました。ワクチンで子宮頸がんが減ることは、まだ確実な証拠がない中、害については確実な証拠があることがわかっています。

COVID-19ワクチンでは、COVID-19以外の病気による死亡を増やすことなく、COVID-19による死亡を減らすことができているでしょうか。検証しましょう。

発病、重症化を95%程度減少したが

ファイザー製のCOVID-19ワクチンは、数万人規模で実施したプラセボ(生理食塩液)を対象としたランダム化比較試験の結果、COVID-19の発病を95%抑制し[3]、モデルナ製でも94%抑制した[4]とされています。

ファイザー製ワクチンの合計約4.4万人を対象としたランダム化比較試験(RCT)[3]については、接種後6か月間の結果が報告されました[5]。

遮蔽期間終了後、プラセボ群にワクチン接種

2回目のプラセボ(生理食塩液)注射の約2か月後(明確でないが、おそらく約2か月程度)には、この試験の遮蔽期間が終了しました。そして、遮蔽が外された後は、もともとプラセボ群に割り付けされていた人(元プラセボ群の人)にも、ワクチンが提供され、その後はどちらに割付けられていたか、対象者も、観察者も知った状態で追跡がなされました。

元プラセボ群に接種後もワクチン効果持続??

ところが、2回目接種から4か月以降において、ワクチンの有効率(発症抑制率)は84%と報告されています。報告論文のFigure2(図)に示されたデータから計算すると、ワクチン群のCOVID-19罹患率は23.3人/1000人年(2回目接種から4か月目当初の人数12670人)、プラセボ群は143人/1000人年(同11802人)であり、罹患率比は0.16と計算できますから、有効率=(1-罹患率比0.16)×100=84%となります。


図の上部は、初回接種後に発生した最初のCovid-19の累積発生率曲線である(12歳以上の評価可能対象者の有効性分析集団)。各記号はCovid-19各症例の発病日を表し、塗りつぶし記号は重症Covid-19例を表す。日付が重複していて複数症例を示す場合もある。挿入図は、21日間について軸を拡大して表示したもの。

図の下部は、Covid-19の発生までの期間別の、人年(1000人年)で示した各群の合計観察期間である。

Covid-19症例の発生期間は、全体の行については初回接種後から観察期間の終了まで、その他は各間隔の開始から終了までである。ワクチン有効性は100×(1 – 発生率比IRR)として計算される。IRR(発生率比)は、プラセボ群に対するBNT162b2群の確認Covid-19症例の発生率(/1000人年)の比である。ワクチン有効性の95%信頼区間は、観察期間を調整したClopper-Pearson法で求めた。

訳註:赤下線部は2回目接種から4か月以降であり、元プラセボ群のほとんどにワクチンが接種されていたなら、本来は差がなくなるはずであるが、84%の有効率を示している。このプラセボ群は、未接種者か?そうすると、見接種者には死亡者はいないことになる。果たして本当であろうか?

元プラセボ群のほとんどの人がワクチン接種を受けたとすると、遮蔽が外れてから2か月以降のこの期間には、元プラセボ群の人にもワクチンの効果が出てきて、ワクチン群とプラセボ群でCOVID-19の発症率に差はなくなるはずです。

84%も効果があったということは、この比較対象となったプラセボ群の人は、遮蔽が外されてからもワクチンを接種しなかった人達かもしれません。しかし、そのことは、論文のどこにも書かれていません。

元プラセボ群の人が、遮蔽が外れてから、何日目に何パーセントが接種を受けたのか、詳細な数字はもちろん、概略の数字すら示していません。

死亡者数はワクチン群に多い傾向

死亡者数は遮蔽期間中にワクチン群15人、プラセボ群に14人でした。遮蔽が終了後に、ワクチン群に3人、元プラセボ群でワクチン接種後に2人の死亡があったと報告されています。もともとの群分けでいくと、ワクチン群18人、プラセボ群16人でした。分母はほぼ同じ2.2万人ずつなので、ワクチン群のほうにわずかではありますが、多い傾向がありました。

遮蔽終了後に、元プラセボ群の参加者の何人にワクチンが接種され、観察人年が何人年になり、2人の死亡があったのか、ワクチン未接種者が何人年であったのかのデータが報告されていないので、正確な比較ができません。

しかし、上図(文献5のFigure 2)の2回目接種4か月以降のプラセボ群11802人がすべてワクチン非接種者とすると11802人中死亡者は0、ワクチン群12670人中3人が死亡したことになり、ワクチン接種群に死亡者が多い傾向が、さらに顕著になります。

死因の報告は遮蔽期間だけ

1回目の接種開始から約3か月間の遮蔽試験期間だけ詳しい死因病名が記載され、ワクチン群15人(17病名)、プラセボ群14人(19病名)と報告されました(病名複数登録あり)。

COVID-19による死亡はプラセボ群2件でしたが、ワクチン群にも1件あり、有意の差ではありませんでした(表)。

表:初回接種から遮蔽終了までの死亡原因


N(分母)は16歳以上の安全性評価集団

循環器死亡が多い傾向

死因で目立つのは心停止つまり突然死です。プラセボ群の1件に対しワクチン群は4件でした。

全病名数中の循環器疾患死亡の割合は、ワクチン群53%(9/17)、プラセボ群32%(6/19)でした。この差は有意ではないものの(p =0.19)、ワクチン群に多い傾向でした。日本のワクチン接種後の循環器死亡の多さ[6.7]と共通しています。

ずさんな試験の実施

ファイザーワクチンの第Ⅲ相試験を請け負った医薬品開発業務受託会社(いわゆるCRO)の一つに雇われて試験業務に携わっていた人から、ずさんな試験のやり方が告発されています[8]。

その人によると、このCROは、最も重要な第Ⅲ相試験のデータを改ざんし、試験対象者が受けたのがワクチンかプラセボかわかるようにしてしまい、十分な訓練を受けていない人を雇って注射業務に従事させ、有害事象の追跡に不熱心であった、などと英国医師会雑誌BMJに語ったとのことです。

また、この人がFDAにこのことをe-mailしたところ、その日のうちに解雇されたそうです。長年臨床試験業務に携わってきて、解雇されたのは初めてであると語っています[8]。

報告もずさん

試験の実施がずさんなだけでなく、報告も適切とは言えません。6か月間追跡結果の報告[5]には重要な基本的データが欠けているからです。

例えば、先述した遮蔽期間が終了後、元プラセボ群の人にもワクチンが提供されたので、ほとんどの人がワクチン接種を受けたとすると、2回目接種4か月以降には元プラセボ群の人にもワクチン効果現れるため、両群でCOVID-19の発症率に差がなくなるはずなのに84%もの効果が報告されていることです。これにみられるように、遮蔽終了後の接種状況が全く不明です。

さらに、非遮蔽期間中の死亡は遮蔽期間中の4分の1(ワクチン群)~5分の1(元プラセボ群でワクチン接種者の観察人年がワクチン群と同じとして)しか報告されていません。

また、非遮蔽期間にも、重篤な有害事象は報告することになっていますが、論文には(補足資料も含めて)報告されていません。

情報の公開が必要

プラセボ群へのワクチン接種後も、ワクチン群の発病がプラセボ群より少ないのはなぜか、非遮蔽期間に死亡報告がなぜ急減したのか、明らかにすべきです。

COVID-19ワクチンで、少なくとも死亡を減らすことができないことは明らかです。

参考文献

  1. 薬のチェック速報版 No198(2021.12.28号)、HPVワクチンの利益と害について-「性の健康医学財団」での講演記録を公開
  2. 薬のチェック速報版 No199(2021.12.30号)、HPVワクチンの再開はたいへん危険
  3. Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 31;383(27):2603-2615. Doi: 10.1056/NEJMoa2034577 PMID: 33301246
  4. Baden LR, El Sahly HM, Essink B et al. Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 30 Online ahead of print. Doi: 10.1056/NEJMoa2035389. PMID: 33378609
  5. Thomas SJ, Moreira ED Jr, Kitchin N et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine through 6 Months NEJM 2021;385(19):1761-1773. Doi:10.1056/NEJMoa2110345 PMID: 34525277,
  6. 薬のチェック編集委員会、COVID-19情報:ワクチン接種後に脳出血・血管病死が多発、脳出血・血栓・突然死に強い関連あり、薬のチェック、2021:21(96):89-91.
  7. MedCheck Editorial team. COVID-19 vaccine: Strong Association with cardiovascular death, especially, hemorrhagic stroke and venous thrombosis. MedCheck in English. 2021: 7(21/22):32-37.
  8. Thacker P. Covid-19: Researcher blows the whistle on data integrity issues in Pfizer's vaccine trial BMJ 2021;375:n2635 Doi: 10.1136/bmj.n2635 PMID: 34728500

市民患者が「ほんまもん」の情報を持つことが真の改革につながる

薬の「ほんまもん」情報は『薬のチェックは命のチェック』 で!!