(2003.1.31号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No8

発熱に非ステロイド解熱剤は使用しないで

厚労省安全対策課の注意(1月30日)は最低限守るべき

2003年1月30日

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)  浜 六郎

厚生労働省医薬局安全対策課は、2003年1月30日「インフルエンザ等による発熱に対して使用する解熱剤の慎重な使用についての注意喚起の依頼について」と題する文書(別紙A:こちら参照)を、日本医師会、日本薬剤師会、日本小児科学会、日本臨床内科医会、日本小児科医会、日本製薬団体連合会に対して送付し、非ステロイド抗炎症解熱剤の使用上の注意を遵守して安全を確保するよう、注意を喚起した。

この文書では、サリチル酸剤や非ステロイド抗炎症剤系解熱剤などとインフルエンザ脳症との関連に関し、これまでにジクロフェナ製剤に関する緊急安全性情報(2000年11月)、添付文書注意事項の改訂(2001年5月ジクロフェナク、2001年6月メフェナム酸)をしてきたことに触れ、「本年もインフルエンザの流行期となり、感染症動向調査等などでもインフルエンザの増加がみられつつありますので、再度ジクロフエナクナトリウム含有製剤及びメフェナム酸製剤のインフルエンザ等の治療への使用について医療に従事される方々へ注意喚起をさせていただき、安全対策に万全を期したいと考えております。」と述べている。

インフルエンザの流行期に入り、緊急安全性情報や使用上注意の記憶が薄れつつあることが懸念されるなか、今回の厚労省安全対策課の警告は、時期を得た適切な措置であると評価したい。

しかし、厚生労働省の「メフェナム酸を小児インフルエンザに使用しない」、「ジクロフェナクを小児インフルエンザなどウイルス性疾患に原則禁忌」という趣旨の措置については、評価はできるが、つぎのように、種々の点で不完全であることを、機会あるごとに指摘してきた(NPOJIP参照)。

要約すると

  1. 過去の厚生省研究班の研究から、非ステロイド抗炎症剤とライ症候群(インフルエンザ脳症)との関連を示す明白なデータが数多くある。
  2. インフルエンザ等ウイルス感染症に「原則禁忌」ではなく「禁忌」とすべき ウイルス感染症と区別がつかない「上気道感染」も適応症から外すべき
  3. 全ての非ステロイド抗炎症剤との関連を認め、すべての非ステロイド抗炎症剤を対象にインフルエンザ等ウイルス感染症に「禁忌」とすべき
  4. 小児だけでなく、大人にも(とくに高齢者)「禁忌」とすべき
  5. 解熱剤を使用せざるを得ない場合は、アセトアミノフェンのみとすること

今日でも、その意義は全く薄れていない。

とくに、大人のインフルエンザなど感染症への使用も危険であることにかわりはない。 実際、本年1月初旬、「インフルエンザにボルタレン(ジクロフェナク;錠剤および座剤)とバッファリン(アスピリン製剤)などを使用して脳症になり死亡した40歳代の男性」に対して、因果関係が認定されて遺族年金の支給が決定された。この方の副作用被害救済制度に対する申請時、医薬ビジランス研究所(浜)が書いた意見書が添付された。この件に関しては、また別の機会に詳報したい。

さらに強調すべきは、2001年5〜6月のジクロフェナクやメフェナム酸の注意事項改訂の根拠となったデータでは、15歳以上が42%を占めていたことである。

インフルエンザ脳症全体に占める大人の割合は決して小さくない


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