NPO法人医薬ビジランスセンターと医薬品・治療研究会は、小児用プロトピック軟膏の発がん性を指摘し、要望書(速報No20)や意見書(速報No21〜25)を厚労省や薬事・食品衛生審議会、薬事分科会に提出し、プロトピック軟膏を承認しないよう求めた。その結果、プロトピック軟膏小児用の承認に厳しい制限が加わることになり(速報No26)、マスメディアにも大きく取りあげられた(速報No27)。
その結果、各地の病院で、0.1%プロトピック軟膏の採用継続可否の検討が始まっている。検討のためには、単に『薬のチェックは命のチェック』や、TIP誌の情報だけでなく毒性試験データそのものの点検は欠かせない。そこで医療機関から藤沢薬品に対してデータの提出を求められたが、藤沢薬品は提出を拒否しているとのことである。
0.03%プロトピック軟膏に関する資料の提出については、2003年5月15、NPO法人医薬ビジランスセンターと医薬品・治療研究会からも求め、今回も求めたが、これにたいして、藤沢薬品から「社内で検討した結果、ご提供しないということになりましたので、ご連絡致します。」と、提供を拒絶する旨のFAXが7月28日届いた。
そもそも医薬品の評価を医師・薬剤師が独自に評価することは、自らが行う医療に責任を持ち、有効・安全な薬剤を使用するために必須の要件である。このため、薬事法第77条の3には、「医薬品の有効性及び安全性に関する事項その他・・・適正な使用のために必要な情報を・・、医師、歯科医師、薬剤師・・・に対し、これを提供するよう努めなければならない」と規定されている(平成14年版薬事法・薬剤師法関係法令集、薬務公報社、2002年)。
この趣旨は単に「努力目標」というものではなく、解説書にもあるように、「医薬品の製造業者の医療関係者に対する情報提供の責務・・・を定めた規定である」「本条に基づき提供するよう求められている情報は、添付文書の記載事項の補足、裏付けとなる情報又は、・・・緊急を要する情報などであり、一般に添付文書に記載して提供することが困難な内容であることから、別途提供することとされたものである。」(厚生省薬務局編、逐次解説「薬事法」<<改訂版>>1995年)。
また、医薬ビジランス研究所、NPO法人医薬ビジランスセンター、医薬品・治療研究会が検討した資料は、「プロトピック軟膏0.1%の概要」という、本来、少なくともインターネット上で公開されるべき資料である。ところが藤沢薬品は、これをインターネット上でも公開せず、医師・薬剤師からの資料請求にも応じようとしない。藤沢薬品のこのような不誠実な態度は、薬事法違反である。
その違反行為のために、真剣に責任ある医薬品の使用を考えている全国の医療機関が、このデータを公平な立場から検討しようとしてもできない状況となっている。
そこで、NPO法人医薬ビジランスセンターでは、保有している資料を公開し、この生データを検討したいと思う人々に提供することにした。
藤沢薬品が、「プロトピック軟膏0.03%がマウスで発がんを示さない」と主張するのであれば、そのデータを積極的に公に開示して、公平な検討を受けるべきである。それができないのは、ほとんど「0.03%での発がんを認めた」に等しいといえよう。
今回開示するデータは、藤沢薬品が作成しプロトピック軟膏0.1%承認申請に添付した資料「プロトピック軟膏0.1%の概要(輸入承認申請資料添付資料概要)」(合計516ページ)のうち、表紙と、とくに重要な議論のある、以下の部分である(紙媒体情報のみであり全資料公開は技術的に限界があるため、やむをえず部分公開とする)。
ニ.毒性医薬ビジランス研究所とNPO法人医薬ビジランスセンターによる解析の最新のもの(速報No25)は以下のデータを用いたものである、
p123表ニ−29 マウス塗布がん原性試験における原発腫瘍数 と、である。
これらをもとに多くの方々が独自に、公平な立場で検討されることを希望します。
なお、検討されたら、その結果をNPO法人医薬ビジランスセンターまで、ご一報いただけると幸いです(ご意見・ご感想はこちらへ)。