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 年をとると腰や膝(ひざ)、あちこちが痛む。高血圧も心配だ。そんな時、使う痛み止めや降圧剤の中に、心不全を起きやすくするものがある。心不全を改善する薬を飲んでいても、併用薬で効果がうち消しということもある。きょうは、心不全の視点から、薬の飲み合わせの注意点を。

 まず、おさらい。心不全は、▽体に水分や塩分が多くたまる▽高血圧が長く続く▽心臓の働きを鈍らせる▽逆に心臓を過剰に働かせることが原因になる。

 だから、こういった性質の薬は、心不全を起きやすくする可能性がある。

 その代表格が痛み止め、特に非ステロイド抗炎症剤系の鎮痛剤である。骨の変形などで慢性的な痛みがある高齢者に、よく使われるが、この薬剤には尿がでにくくなったり、むくみを起こしたりする性質がある。しかも、高齢になると腎臓は弱っているから、薬の排泄(はいせつ)も遅く、若い人に比べ、影響が出やすい。

 心臓に持病がある高齢者が、非ステロイド抗炎症剤を使った場合、使っていない高齢者に比べ10倍以上も心不全を起こしやすいという調査結果もある。

 むくみなどで利尿剤を使っている人が、非ステロイド抗炎症剤を併用するのも気をつけたい。併用しない人に比べ、心不全での入院が2倍になるというデータがある。また、心不全の治療にACE阻害剤を使っている人も、併用で、長期的な効果が薄れてしまいかねない。

 痛み止めをアセトアミノフェンに切り替えるか、それでは効かず非ステロイド系を使うなら症状に気をつけつつ少なめに。勝手に多めに薬を飲んだり、鎮痛貼(は)り薬をやたら貼る人がいるが、用量は守ろう。

 また、高血圧治療薬にも気を配ってほしい。代表的なカルシウム拮抗(きっこう)剤には、尿の量を減らし、むくみを起こしやすい性質もあるから、心不全傾向の人は注意が必要だ。むくみ傾向の人は、利尿剤系の降圧剤をうまく使おう。要は、選び方とバランス。微妙なさじ加減は医師の仕事だが、患者さんも気になる症状は、きちんと伝えてほしい。

 糖尿病治療に使われるアクトスも、むくみを起こし、心不全を悪化させる。厚生省が昨秋、注意を促す緊急情報を出した。個々の病気だけでなく、体全体のことを考えて薬を選びたい。


薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎