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 セラチア菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)ノノ院内感染はあとをたたない。

 院内感染は、もとの病気とは関係のない感染症が入院中に起きることをいう。患者同士、職員が介在したもの、これが狭義の院内感染だが、患者体内にもとからあった菌やウイルスが、抗生物質の使用で異常に繁殖して感染した場合も入る。

 最も問題になるのは、職員自身の清潔の不徹底だ。100人中99人が守っても、1人が不潔な操作をすれば、起こりうる。

 かつて病院の風物詩だった手洗い用消毒液も、液中で菌が増え感染源になることがあった。

 相変わらずよく感染源になるのが注射だ。注射液は原則、直前にその患者用に調製する。だが今でも、経済性や効率性から注射液の濃度調整などのための生理食塩液を、点滴用の大きなボトルからとって、多数の患者に使う病院がある。実際、こうして、透析施設でC型肝炎が流行したこともある。これは、一種の「注射の使い回し」。集団予防接種で同じ注射器を複数の人に使い、肝炎を流行させたのと同じである。してはならないことだ。今回のセラチア菌感染も、このような注射液の共用が、主な原因であるようだ。

 経済的な効率のため、数千人分の血漿(けっしょう)から作った非加熱凝固因子製剤によって、薬害エイズが起きたこととも通じる。数千人中1人でもHIV感染者であれば血漿全体がHIVウイルス入りとなり、注射された患者は感染する。同様のことが、点滴ボトル内でも起きる。100回刺す針のうち1回でも汚染されると、点滴液が汚染され、中で菌が増殖、それを注射された人が感染・発病する。抵抗力が落ちている入院患者はひとたまりもない。

 空調設備を介して、あるいは加湿装置内で菌が増殖したなど、院内感染の機会は多い。

 院内感染の予防には、無駄な抗生物質を使用しないこと、流水による手洗いの励行、消毒用アルコールによる手指の消毒が最も効果的だ。病室の入り口でみかけるスプレー式消毒薬は、院内感染防止に欠かせない。

 院内感染対策委員会の活動、調査や監視、感染制御チームなど、院内あげて取り組む病院も増えている。そのような活動を実行しているかどうかも、病院を選ぶ一つの目安になる。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎