(2003.06.19号)
『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No20
小児用0.03%プロトピック軟膏不承認を求める
要望書提出
NPO法人医薬ビジランスセンターと医薬品・治療研究会は、6月17日付けで「プロトピック(タクロリムス水和物)0.03%軟膏の不承認を求める要望書」を、坂口厚生労働大臣と薬事・食品衛生審議会、薬事分科会各委員(別紙)に郵送した。
両要望書(大臣宛、薬事分科会各委員宛)の趣旨は基本的に同じであるが、緊急性の高い後者の要望事項と要望理由のまとめをまず紹介する。
- 要望書全文はPDFでもご利用頂けます。
なお、両要望書中の図1〜図4は速報No19の図1、図2、図3、図4と同じです。
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薬事分科会各委員あて要望事項
来る2003年6月26日に開催される予定の薬事・食品衛生審議会、薬事部会において、プロトピック(タクロリムス水和物)0.03%軟膏(小児用)の製造・販売を承認しないこと(医薬品第一部会に検討の差し戻しをしていただきたい)
要望理由のまとめ
- 免疫抑制剤として使用した場合のタクロリムス水和物(プログラフ)による悪性リンパ腫発生率は成人で数%、小児では10%にのぼることが報告されています。
- プロトピック軟膏のマウス2年間がん原性試験でメーカーが有意な増加はないとしている0.03%濃度は、全部位がんと悪性リンパ腫を有意に増加しています。全部位がんのオッズ比は2.7(95%信頼区間;1.5-4.7,p<0.001)、悪性リンパ腫はオッズ比2.7(95%信頼区間;1.2-5.8,p<0.01)であり有意でした。
なお、有意の差がないとの結論の根拠となったPeto mortality prevalence 解析は、多重解析の弊害を解決するために行われるものです。免疫抑制によって全部位のがん増加が予想されるこの実験で、実際に全部位のがんが有意に増加しているのですから、部位別に多重解析する必要はありませんし、意味がありません。
- 免疫抑制による発がん促進であっても、臨床的にはがん発生を増加させることにかわりなく、きわめて危険なことです。免疫機能が未発達の小児には、発がんリスクは特に高く出るものと憂慮されます。
- 血中濃度が臓器移植で使用される濃度に達するヒトが6人中2人、長期使用例でも、臓器移植使用濃度の2分の1から10分の1という危険域になる人が相当数にのぼります。しかも、検出限界以下とされる0.5ng/mLでも免疫抑制は起きます。
- メーカーは「本剤に起因した感染症はほとんどない」としていますが、感染症は動物でもヒトでも有意に増加しています。たとえば、細菌性心内膜炎がマウスで有意に(p<0.05)増加しています。ヒト臨床試験でもインフルエンザ様症状をはじめ、種々の感染症が0.1%群だけでなく、0.03%群でも有意に増加しています。
- プロトピック軟膏の使用目的はアトピー性皮膚炎ですが、2年間マウス発がん試験では、小児製剤予定濃度の0.03%プロトピック軟膏が、皮膚炎(皮膚炎症細胞浸潤、皮膚肥厚)を有意に高率に起こしています(オッズ比4〜6、p<<0.001)。皮膚炎を起こさない濃度は0.03%よりもはるかに低いと想定されるため、長期に使用して皮膚炎を起こさない濃度は、短期的にアトピー性皮膚炎に有効な濃度でない可能性があります(このほか、心筋の線維症や血栓症など死亡につながる変化も増加していますが、詳細は添付参考文献を参照ください)。
- したがって、プロトピック軟膏0.1%は、不適切な根拠と解釈によって、あたかも安全であるかのように判断された結果承認されたもので、実は極めて危険なものと考えるべきです。
- 小児用とされる0.03%の濃度でも長期使えば皮膚炎そのものが新たにでき、がんや感染症が多発する危険性が高く、死亡率まで増えると考えられます。小児への承認は極めて危険であり、承認すべきではありません。
たとえば、2歳で使用を開始した場合には、成人するまでに発がんする危険も否定はできません。もしそのことが現実のものとなった場合には(その可能性は高いのではないかと推察されます)、薬事・食品衛生審議会、薬事分科会および各委員の方々の責任は重大と考えます。
- なお、成人用0.1%製剤も、長期的にみて危険の方が大きいと考えられ、中止すべきと考えますが、この件に関しては、別途厚生労働大臣あてに要望書を提出いたしました。
また、すでに使用したことのある患者や、現在使用中の患者はすべて登録し、悪性リンパ腫をはじめ、すべてのがんや入院を要する感染症の罹患状況を追跡調査すべきと考えます(非使用者との厳重な比較が必要です)。この件に関しても、別途厚生労働大臣あてに要望書を提出いたしました。
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