6月26日に開催された薬事分科会において、小児用の0.03%プロトピック軟膏が、条件付きで承認(の方向)が確認された。安倍道治審査管理課長や報道関係者の情報を総合すると、検討された内容は以下のようなものであった。
NPOJIP(医薬ビジランスセンター)とTIP(医薬品・治療研究会)、アトピーステロイド情報センター、及び薬害オンブズパースン会議らの、プロトピック0.03%軟膏不承認(医薬品第一部会への差戻し)を求める要望書や、 NPOJIPが送付したタクロリムスが短期使用でも生涯のがんを5倍に増やすなどの危険性を示す詳細な情報に接し、安全性に疑問をもった複数の委員からの指摘で危険性に関する認識はかなり浸透した。報告事項であったにもかかわらず、異例とも言える40〜50分にわたる議論で第一部会へ差し戻すべきとの意見も出された。しかし、薬事分科会委員でもある第一部会長(河村信夫東海大医)が、差し戻されても拒否すると主張し、また、薬事分科会委員で皮膚科医の溝口昌子氏(聖マリアンナ医大)からは、プロトピック軟膏の利点が強調され、最終的には「厳しく条件をつける」ということで承認の方向で了承されたようである。その条件は、
分科会では、がん原性試験をやり直す必要性を認めた。この情報も安倍課長自身から得た情報である。安倍氏は、「0.03%のがん原性試験だけで結論が出せないため、企業に対して、「0.03%以下の濃度でのがん原性試験を指示する」という。これは、0.03%軟膏によるがん増加を公式に認めたわけではないが、実質的に認めたことになる。プロトピック軟膏の安全性大前提が揺らいだわけで、その意義はたいへん大きい。
提供する危険情報には、この成分でがんが生じうるとの内容が盛り込まれるはずという。また、処方記録の保存は予後を懸念してのことである。したがって、危険性に関する認識はNPOJIPを中心とする情報に接した委員に相当浸透したことは間違いないと思われる。その意義はたいへん大きい。
また、がんが生じうる点をどの程度まで現実に起こりうることとして、患者向け情報の具体的内容に盛り込むか、記録保存の具体的方法などは決まっていないため、今後審査センターと企業が協議し、最終判断は薬事分科会長預かりとなった。つまり、上記条件が決定され、薬事分科会長が了承するまでは正式決定ではないということである。
さらに重要な点は、安全性の最大の根拠である動物実験での発がん安全量の根拠が崩れたのであるから、やり直し「がん原性試験」結果が出るまで待つのが筋である。薬事分科会長、各委員はその点の認識を新たにし、再検討すべきと考える。
「今一度、2歳で使用を開始した場合を想定してみてください。成人するまでに発がんする危険も否定はできません。途中で中止したとしても比較的若くして、がんにかかるかもしれません。もしそのことが現実のものとなった場合には(その可能性は高いのではないかと推察されます)、薬事・食品衛生審議会、薬事分科会委員の方々の責任は重大と考えます。」
この呼びかけと、複数の委員からの危険性の指摘、差し戻しの主張、毒性試験の不備を実質認めながら、薬事分科会が正式承認するとすれば、重大責任を負うことになる。
アトピー児を生涯「がんと免疫異常のリスク」にさらしてはならない
薬事分科会が正式承認され販売されれば、その重大な責任は、歴史が証明することになろう。しかし、市販されるまでにはまだ、いくつかの通過点がある。
小児用に実施された臨床試験データなども未公表である。厚生労働省は、プロトピック軟膏に関するすべてのデータを公表し、医薬品第一部会および、薬事分科会の全議事録を公開し、第三者の検討に供し、第三者による公正な評価を受けるべきである。NPOJIPとTIPでは、承認根拠情報が公表され次第、それらの情報をもとに、再度批判的に評価するつもりである。1人1人が監視を強め、プロトピック軟膏の危険性を認識し、広めていただきたい。