TIP誌8/9月合併号で報告(速報No34に詳報)した、プロトピック軟膏使用中に皮膚悪性リンパ腫が発見された16歳の少女について、10月5日大阪読売新聞が、表記タイトルで、下記のように報道した。
アトピー性皮膚炎治療用の免疫抑制剤「プロトピック軟膏」=写真=(一般名タクロリムス)による治療を約三年間受けていた奈良県の少女(16)が、がんの一種の悪性リンパ腫を発症したことがわかった。少女は以前から悪性リンパ腫だった可能性があるが、プロトピックは悪性リンパ腫などのがんを増やす可能性があることがメーカーの動物実験データなどから指摘されている。診察した医師の一人は「薬の影響で症状が急激に進んだ可能性がある」とみて厚生労働省に副作用として報告、同省は診療経過などの調査を行う。
母親らによると、少女は一九九七年ごろから大阪府内の病院で主にステロイド剤による治療を受けていたが効果がなく、二〇〇〇年六月からプロトピックを併用した。当時は成人用しかなく、主治医は「本来、子供には使えないが、効くかもしれない。顔だけに塗る」と説明したという。
先月、兵庫県内の病院の検査で悪性リンパ腫と診断された。その中でも皮膚に症状が出る「セザリー症候群」の疑いが強いという。
プロトピックを処方した大阪の病院によると、少女は最初に入院した九七年末、体中のリンパ節がはれており、別の専門病院の組織検査でも悪性リンパ腫の疑いを指摘されていたが、発しんや血液中の異常が一時消えたため、「ウイルス感染などが原因だろう」と説明していた。当時の担当医は「悪性リンパ腫だった場合に悪化の可能性があるとは思っていた」という。
少女の母親は「医師には『薄く塗れ』と言われたが、娘は治りたい一心でたくさん塗ることが多く、体にも塗った。まさかがんだったなんて」と話している。
成人用プロトピックでは因果関係は不明確ながら、海外で悪性リンパ腫三例、 皮膚がん三例の副作用報告がある。今年七月に小児用が承認された際は、▽発がんの可能性を添付文書で警告する▽処方はアトピー専門医に限る▽使用患者の長期追跡調査▽さらなる動物実験——が条件になった。
副作用報告をした京都市の島津恒敏医師(アレルギー科)は「皮膚に現れる小児の悪性リンパ腫は初期の診断が難しく、重症のアトピー性皮膚炎とされることも多い。免疫抑制剤を使うと免疫力が落ち、潜在しているがんが急速に進行する恐れがある」としている。
メーカーの藤沢薬品工業の話「現在、因果関係は明らかでない。薬を使う前から悪性リンパ腫だった可能性があり、こうした情報をもとに厚労省に中間報告を行う予定で、専門家の意見も聞いて薬と発症の関係を調べたい」
臓器移植時の拒絶反応を抑える免疫抑制剤「タクロリムス」を外用薬に転用したもので、1999年6月に濃度0・1%の成人用が承認され、ステロイド剤を使えない顔などに使われている。0・03%の小児用も今月から市販される見込み。
(出典明記で転載可につき、読売新聞(大阪版)2003年10月5日朝刊より転載)