(2003.10.17号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No38

ジゴキシン中毒の治療について

ジゴキシン特異抗体(断片)が欧米では標準治療法

NPO法人医薬ビジランスセンター   浜  六郎

ジゴキシン中毒の治療について調べたところ、羊由来ジゴキシン特異抗体(Fab断片)による治療が欧米ではすでに標準治療になっていることがわかりました。そこで、さらに、名城大の大津さんのご協力を頂いて調べた結果、ジゴキシン過量あるいはジゴキシン中毒で生命に危険のある(あるいはその可能性のある)患者の治療用に、ジゴキシン特異抗体(Fab断片)を用いた療法が1980年代から確立していることが判明しました。米国では1986年に承認を受けています

イギリスでも1989年のBNFには掲載されていますので、1980年代にはすでに標準治療になっていたようです。

一般名: Digoxin Immune Fab (羊由来)
商品名:Digibind(米、英、豪、カナダ、スウェーデン)、Digitalis Antidot(独、オーストリア)など(Martindale 32nd ed 1999)

米国では、さらに以下が2002年に承認されて発売されています。

商品名: DigiFab(2002年米で承認)
適応症:生命に危険(あるいはその可能性)のあるジゴキシン中毒あるいはジゴキシン過量投与患者の治療(Treatment of patients with life-threatening or potentially life-threatening digoxin toxicity or overdose)

FDAによるジゴキシン抗体製剤(羊由来Digoxin Immune Fab:DigiFab)の説明です。

ジゴキシンの除去には透析も有効でないし、半減期も長いですから、有効な治療法は確かに、これしかないでしょう。しかも米国では年間約7500人のジゴキシン中毒事件があるそうです(明日の新薬1月号P-180〜181)から、日本でも表面には出ていない過量例が相当あるはずです。

したがって、このような薬剤の導入にこそ、希少薬としての優遇措置を大いにしていただいて、早期承認が必要ではないかと思います。


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