(2008.01.10号)

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No100

タミフル薬害: 新たに4人の死亡が判明
合計死亡者84人 突然死52人 事故死8人

突然死・事故死との因果関係 確立へ!

NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 代表 浜 六郎

タミフルによる死亡者数が、確認されただけで84人に上ることが分かった。厚生労働省(厚労省)は、2007年6月に副作用死亡例として発表した71人のうち、その後、2人の因果関係を否定し副作用死亡数から除いていた。しかし年末(12月25日)、開示された情報を詳細に検討した結果、この2人はやはり突然死であった。加えて当センターへ新たに相談のあった2人も、厚労省へ未報告の突然死であった。その結果、合計死亡者数は84人、突然死は52人に上る。異常行動後の事故死は8人のままである。

日を追うごとに新たな事実が加わり、これらの死亡をはじめ、タミフル固有の害の全貌が明らかになってきている。すなわち、タミフルは、服用1〜2回目に短期突発型(突然死、異常行動・事故死など)の反応を起こす。5日間服用した後に、遅発・持続型(感染増悪、糖尿病、出血、遅発・持続型異常行動)の反応を起こす(速報No97)。

さらに、それぞれの反応が生じる仕組みを知る鍵となる知見が得られたため、因果関係についても、いよいよ確立に向かっているといえる。

第一に、メーカーがタミフルの脳中濃度に関する動物実験のデータを修正したことである(速報No98および資料1)。このことによって、脳中タミフル濃度と突然死や症状との関連がより強まり、タミフル使用後のすべての現象がよりスムーズに説明できるようになった。

第二に、血液-脳関門における排出ポンプ(トランスポーター)機能を担うタンパクがP-糖タンパクであるとの知見が最近得られた。この知見は、インフルエンザにかかった時に、タミフルの脳中濃度が高まりうることを強く示す。

以上2つの知見を中心に、短期突発型反応の起きる仕組みが明らかになってきた(速報No97:下記訂正も参照ください)。

第三には、活性体タミフルの抗ウイルス作用を発揮する機序(ノイラミニダーゼ阻害)そのものが、ヒトの細胞のノイラミニダーゼを阻害し得るとの知見である。このため、ヒトの細胞を弱らせる働きをしている可能性が強くなってきたのである。その結果、遅発・持続型反応の起きる仕組みの解明に大きく踏み出した(速報No97:下記訂正も参照ください)。

「二度と薬害を繰り返さない」ためには

まず、タミフル薬害を認めること

薬害C型肝炎集団訴訟の解決のため、国会に提出された感染被害者救済特別措置法案が1月8日、全会一致で衆院を通過し、参院に送付された。10日に委員会で採決され、11日の参院本会議で成立の見込みであると報じられている。

法案には、原告らの強い要望に沿った形で、前文において「政府は甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、心からおわびすべきだ」と国の責任を明記している(各社報道:例 )。

また、福田首相も、舛添厚生労働大臣も、二度と薬害を繰り返さない、との趣旨の発言をしている。

しかし、サリドマイド、スモン、クロロキン、コラルジル、筋短縮症、薬害エイズ、薬害CJD(ヤコブ)、薬害C型肝炎と続いてきた薬害裁判で、国は、厚労省は「二度と薬害を繰り返さない」という文言を何度、繰り返してきたことか。

そして現在進行中のイレッサ薬害に関しても、コレステロール低下剤による神経障害の認定についても、国(厚生労働省)は争っている。

これらの争いを即刻やめて、自らの責任を認めてこそ、「政府は甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかったことについての責任」を本当に認めたことになり、「二度と薬害を繰り返さない」ことになるはずである。

国(厚生労働省)に対して、1日も早くタミフルと突然死・事故死との因果関係を認め、不要なタミフルの使用を全面中止する措置を講じるよう再度求めたい。

『薬のチェック』 速報号外!(2007年12月版)もごらんください。

タミフルの脳中移行に関して訂正(重要!)

速報No97では、TIP「正しい治療と薬の情報」2007年12月号(2007年12月28日発行)を紹介し、タミフルの脳中移行について解説しましたが、その記載に誤りがありますので訂正いたします(なお、「OT」はオセルタミビル=未変化体タミフル、下線部は、訂正箇所)。

表7の第2項

訂正前(誤)

  1. OTは脂溶性のため脳中に移行するが、血液-脳関門(BBB)、とくに排出トランスポーター機能が正常なら、低い濃度に留まる。OCBは非脂溶性のため、基本的には脳中に移行しない。

訂正後(正)

  1. OTは脂溶性のため、血液-脳関門(BBB)である毛細血管内皮細胞内に移行するが、内皮細胞の血液側細胞膜に存在する排出トランスポーター機能が正常なら、脳内にはほとんど移行せず低い濃度に留まる。OCBは非脂溶性のため、基本的には脳中に移行しない。

上記のように、訂正前は、一旦脳中に移行した未変化体タミフルが、排出トランスポーターによって脳外に排出される、との趣旨で記載しました。しかし、排出トランスポーターは、血液-脳関門である毛細血管内皮細胞の、血液に接する側の細胞膜にあるため、通常状態で脂溶性の未変化体タミフルが、一旦入り込むのは、毛細血管の内皮細胞内です。そして、排出トランスポーター(P-糖タンパク)が排出するのは、内皮細胞内に入り込んだ未変化体タミフルであり、これを内皮細胞外に排出する、というのが正確です(末尾の他の訂正箇所も参照ください)。

メーカーによる脳中濃度訂正で
全ての現象が矛盾なく説明できるようになってきた

言い訳になるようですが、筆者が当初、タミフルが脳内に一旦移行するのではないかと推察した最大の原因は、メーカーが当初公表していたデータにあります。

2007年12月10日にメーカーは訂正しましたが、それ以前のデータによれば、未熟ラットではタミフルの脳中濃度が血中濃度の400倍にも達し、成熟ラットでも血中濃度と同程度の濃度になっていたからです。

この現象を説明するためには、一旦脳中にタミフルが移行する必要があると考えました。しかしながら、訂正されたデータによれば、血中濃度に対する脳中濃度の割合は最高でも(未熟ラットで)80%、成熟ラットでは8.2%でした。この現象なら、通常状態においてタミフルが脳中に一旦移行する必要はありません。

データが訂正されたことによって、メーカーのデータと、他の研究者によるタミフルの脳中移行に関するデータがほぼ一致してきましたし、血液-脳関門としての毛細血管内皮細胞内と脳への移行などタミフルの挙動が矛盾なくスムーズに説明できるようになってきました。そしてさらには、TIP誌12月号(速報No98)で述べたように、脳中濃度と反応(死亡率や有症状割合)との相関係数もより大きくなりました。

このように、メーカーによるデータの訂正で、タミフルによる突然死や異常行動事故死、遅発型反応などにつながる全ての現象が、矛盾なく説明できるようになってきたのです。

他の訂正箇所

なお、基本的な訂正箇所は上記ですが、関連する他の部位も以下のように訂正いたします。

4.タミフル服用後に生じた反応の発症機序 

(1) 服用1〜2回の後に生じる突発型の突然死や異常行動の機序、

第1および第2段落

訂正前(誤)

インフルエンザ時の高サイトカイン状態ではヒト肝カルボキシエステラーゼ(HCE-1)の活性が低下し、オセルタミビル(OT:未変化タミフル)が血中に高濃度になり、濃度勾配により脳中にもより多く移行する。

また、通常は働いているOTの排出トランスポーターであるP-糖タンパク(P-gp)の活性もインフルエンザ時の高サイトカイン状態で低下し、脳中に移行したOTを脳外に排出できず、脳中に高濃度となる。

訂正後(正)

インフルエンザ時の高サイトカイン状態ではヒト肝カルボキシエステラーゼ(HCE-1)の活性が低下し、オセルタミビル(OT:未変化タミフル)が血中に高濃度になり、濃度勾配により血液-脳関門内(血管内皮細胞内)に多く移行する。

また、通常は働いているOTの排出トランスポーターであるP-糖タンパク(P-gp)の活性もインフルエンザ時の高サイトカイン状態で低下し、血液-脳関門内(血管内皮細胞内)に移行したOTを血液中に排出できず、脳中に移行し高濃度となる。

表9の第7項

訂正前(誤)

  1. OCBによりガングリオシドが劣化すれば細胞膜機能の低下を招き、これはP-gpの機能低下を招き、脳中に移行したOTの脳からの排泄を減少させ、OTの脳中濃度を上昇させ、その結果、遅発型の異常行動、遅発型の突然死、遷延する精神神経症状等を生じうる。

訂正後(正)

  1. OCBによりガングリオシドが劣化すれば血管内皮の細胞膜機能の低下を招き、これはP-gpの機能低下を招き、内皮細胞内に移行したOTの排泄を減少させ、OTの脳中濃度を上昇させ、その結果、遅発型の異常行動、遅発型の突然死、遷延する精神神経症状等を生じうる。

参考文献

改訂前(誤)

  1. Morimoto K, Nakakariya M, Shirasaka Y, Kakinuma C, Fujita T, Tamai I, Ogihara T. Oseltamivir (TamifluTM) efflux transport at the blood-brain barrier via P-glycoprotein. Drug Metab Dispos. 2007 Oct 16
  2. 伊藤元貢、楠原洋之、杉山雄一ほか、オセルタミビルおよびその活性型分子の体内動態を支配する代謝酵素・トランスポーターの解明(第29回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム)

改訂後(正)

  1. Morimoto K, Nakakariya M, Shirasaka Y, Kakinuma C, Fujita T, Tamai I, Ogihara T. Oseltamivir (TamifluTM) efflux transport at the blood-brain barrier via P-glycoprotein. Drug Metab Dispos. 2008 Jan;36(1):6-9. Epub 2007 Oct 16
  2. Ose A, Kusuhara H, Yamatsugu K, Kanai M, Shibasaki M, Fujita T, Yamamoto A, Sugiyama Y. P-glycoprotein restricts the penetration of oseltamivir across the blood-brain barrier. Drug Metab Disps. 2007 Dec 3; [Epub ahead of print]

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