この情報は、40代の女性保健師さんがタミフルを服用していたことを前提として書かれています。その後、処方されたタミフルがそのまま残っていたことから「タミフルを服用していなかった」とされています。しかし、服用した可能性は完全に否定されたわけではないので、確実にそのことが判明するまでは、「タミフルを服用していた場合には、このような解釈が成り立つ」という意味で、参考までにこの記事は残しておきます。なお、服用していなかったことを前提とした解釈については、No130改訂版として別に示しましたので、ご参照ください。
北海道で8月30日、09年A型インフルエンザ(いわゆる「新型」インフルエンザ、以後「09Aインフルエンザ」と略)に感染した40代の女性保健師が死亡したと報道されました。
疑い例をふくめ、09Aインフルエンザに伴う死亡は全国で8人目となりました。 上記、厚生労働省のホームページや、報道情報から総合すると、下記のような状況でした。
女性は北海道利尻町在住の保健所職員。29日に38.7℃の発熱があり医療機関に受診した。その数日前から発熱があったが、島内で起きていたインフルエンザ集団感染の調査のために、患者や家族と対面していたとのことである。
29日に医療機関を受診し、インフルエンザA型陽性と診断され、タミフルが処方され、市内のホテルに1人で宿泊。翌日午後2時ごろ、ホテル従業員が意識のない女性を見つけ、医師が死亡を確認した。31日に精密検査(PCR法)で「09Aインフルエンザ」に感染していたことが判明した。
公式発表では死因は「急性心不全」とされていますが、典型的な「タミフルによる睡眠中の突然死」と考えられます。
病理解剖の医師の診断では、インフルエンザと死亡との因果関係は特定できないとされていますから、「肺炎」はなかったでしょう。もともと高血圧があったようですが、検診で指摘されたというだけで、治療歴はないようですし、問題になるものではないでしょう。そもそも、高血圧だけでは、リスク因子にもなりません。
解剖の結果、「急性心不全」とされたということですから、肺水腫あるいはその傾向が認められたのではないかと思われます。
ふつうの心不全は、「急性左心不全」といって、全身に血液を送り出す働きをしている心臓(左心)が血液を送り出せないために、心臓に血液が溜まり心臓が大きくなり、肺に血液と水がたまる肺水腫になります。だから、左の心臓が大きいのが特徴です。
しかし、タミフル服用後突然死された人の心臓は少し大きいだけです。それも右の心臓だけがすこしだけ大き目です。これは、タミフルで脳が麻痺して呼吸が抑制され、低酸素状態のために肺に水がたまるもので、これを、「低酸素性、非心原性の肺水腫」と言います。
これは、私が相談を受け詳細なカルテ情報が検討できた5人(大人3人、幼児2人)の突然死された方の検討結果から、自信を持って言えることです(『薬のチェックは命のチェック』速報No107;浜六郎、オセルタミビルによる精神神経系害反応死亡:ケースシリーズと因果関係の総合的考察)。
おそらく、この女性も、軽度の右心拡大があったために、急性心不全とされたのでしょう(あるいは、まったく死因が特定できなかったためかもしれませんが)。
7人目に死亡された方は、もともとてんかんがあったとはいえ、それ以外には病気は無い方ですが、タミフル服用し、その夜中の1時半ごろに急変して、呼吸停止されました。タミフル服用後の睡眠中突然死です。
てんかんの治療のためにはふつう、抗けいれん剤が使われます。抗けいれん剤の多くは、呼吸抑制作用があります。タミフルと重なると、より呼吸抑制を起こしやすくなるはずです。したがって、7人目の人もタミフルによる可能性が高いと思います。
2人目の人は、肺気腫がありましたが、タミフル服用後、未明(朝6時すぎ)に急変し亡くなられました(速報No129参照)。
この結果、死亡した8人中5人がタミフルを服用し、1人は服用せず、2人は服用状況が不明でした。
タミフルを服用していたことが判明している5人中、人工呼吸管理がされてからタミフルが使用された1人を除く4人では、全員がタミフルが使用されてから悪化しています。うち、3人が、睡眠中に突然死された可能性があると考えられました。
人工呼吸管理がされてからタミフルが使用された人は、呼吸抑制がされても人工呼吸器がつけられているので呼吸が止まって死亡することはありませんが、タミフルを使用したにもかかわらず、まもなく死亡しています。いずれにしても、タミフルは無効であったということです。
タミフルの使用が記載されていなかった3人は、3人とも、高熱で医療機関を受診後、1〜2日後に悪化し肺炎を起こしています。きつい解熱剤(非ステロイド解熱剤)が使われて重症化する成人の典型的な経過と病像です。非ステロイド解熱剤を軽いウイルス感染症に使用すると、ウイルスを攻撃するインターフェロンなどサイトカイン類がたくさん出るようになるため、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という一種の「急性肺炎」を起こします。また、非ステロイド解熱剤は変異原性や発がん性もあるため、ウイルスの変異を強めて、サイトカインの攻撃を免れるような変異ができる可能性も否定はできません。
これらのことも考慮すると、タミフルが用いられていられずに悪化、あるいは死亡された人では、非ステロイド解熱剤の重症化への関与の可能性が伺えます。
人工呼吸管理実施後にタミフルが使用された人については、悪化して受診する前に、市販薬や、自分で残薬を服用するなど、事前に非ステロイド解熱剤が使用されていなかったか、きちんとした調査が必要でしょう。 (「くすりで脳症にならないために」参照)
北海道のこの女性は、特別な基礎疾患もなく普段元気な方です。高血圧症はありましたが、今の高血圧ガイドラインでは成人の半数が高血圧とされてしまいますから病気ともいえません。実際、「高血圧」は、リスク因子には入れられていません。
厚生労働省に報告のあった死亡例をはじめ、私が知りえた突然死は、これまでで合計57人でしたが、これで、ついに60人に達しました。
そして、タミフル服用後の睡眠中突然死が、09Aインフルエンザの経過中に死亡された8人中3人もいた、しかもタミフル服用者に限れば、5人中3人が睡眠中突然死であり、他の1人もタミフルによる死亡の疑いがあるのですから、大問題であると考えます。
これまでの突然死57人というのは本当に氷山の一角であり、この何倍、何十倍もの突然死による死亡者がいるのではないでしょうか。
世界の09Aインフルエンザの確認例の53%がアメリカ大陸からの報告で、死亡者は85.9%をアメリカ大陸が占めています。これは他の地域に比べて、5.5倍(オッズ比5.5)確認インフルエンザ中の死亡割合が大きいということを示しています。
そしてこの地域では、CDCが小児にも大人にも非ステロイド解熱剤(イブプロフェンとナプロキセン)の使用を推奨していますし、48時間以内でなくても、重症化した場合にはタミフルを常用量の2倍まで増量してよいとしています。
しかも、妊婦にも、新生児にまでも、こうした使用を推奨しています。
したがって、そのような使用方法を採用している地域では、インフルエンザの経過中に死亡例が多くなるのは当然といえるでしょう。
それならば、現実的な対応として、皆さんは自分を、家族をまもるために、
を守ってください。かかったかなと思ったら早く体を休めることが大切。決して無理をしないようにしましょう。休養をとり、くれぐれも、クーラーや冷たいもので、体や「のど」を冷やさないようにしましょう。
本来、タミフルや非ステロイド解熱剤の使用は中止すべきだが、 どうしても使用するなら、少なくとも国は、直ちに、
との関連について調査すべき
NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)では、非ステロイド解熱剤やタミフルは本来使用すべきでないと考えますが、WHOもCDCも推奨している状況では、当分は使われることになるでしょう。
それなら、国としては、直ちに
を徹底的に調査する必要があると思います。