(2022.04.27号)

『薬のチェック』速報版 No203  PDF スライド

ワクチン接種で非COVID-19死亡も減少

健康者接種バイアスの動かぬ証拠

薬のチェック編集委員会

まとめ

結論:COVID-19ワクチン接種でも健康者接種バイアスが明らか。

はじめに

COVID-19ワクチン接種後、特に20代、30代で心筋炎死亡率が少なくとも一般人口の14~20倍に上昇していたことを薬のチェック101号[1]で報告しました。

この倍率は、報告漏れや、ワクチン接種者が非接種者より、元々健康であること、不整脈や突然死として報告されている可能性(誤分類)などを考慮すると、実際にはさらに危険度が大きい可能性があります。

重い病気のある人や、当日に発熱がある人はワクチン接種を避けるため、ワクチン接種者は非接種者よりも一般に健康です。このため、ワクチン接種者と非接種者がその後に罹る病気の割合(罹患率)をそのまま比較すると、真実のとは異なる結果になります。

このように、ワクチン接種者が非接種者よりも元々の健康状態が良いために、結果に生じる歪み(偏り、バイアス)を、疫学用語で「健康者接種バイアス」と言います。したがって、特にワクチンの効果や害の調査では、この点に注意して、データを注意深く検討しなければいけません。

しかし、ワクチンに関するほとんどの疫学調査で、このことが考慮されずに、病者を多く含む非接種者と、健康な人が多い接種者を比較し、それが補正されないまま、「よく効く」「害はない」と結論しています。

報告漏れや誤分類の問題は比較的わかりやすいのですが、「健康者接種バイアス」は、その重要性の割には医療の専門家の間でも、十分には認識されていません。それほど難解ではないこの問題が広く理解されていない理由の一つは、「健康者接種バイアス」の理論的な検討が不十分であることです。

しかし、何よりも重要な理由は、「健康者接種バイアス」を疫学調査において適切に処理をすると、これまでに「有効」「無害」と評価してきたワクチンの多くが「無効」「有害」と、評価が逆転してしまうことになるからでしょう。

多くの国をはじめ、WHOなど国際的機関の専門家委員会は、「健康者接種バイアス」を考慮せずに実施してきた調査結果に基づいて「有効」「無害」としてきました。ところが「健康者接種バイアス」を適切に処理すると、結果が逆転することになります。このことも関係してか、ワクチン接種の効果や害に関する疫学的調査が、ほとんどこの問題を考慮せず、科学を無視した調査が論文となり、国やWHOの方針に採用されています。このようなことが続く限り、「健康者接種バイアス」は、世の中の大勢の意見にならず、多くの人が理解するのは至難な状態が今後も続くことになるでしょう。

しかし実際には、速報No198「HPVワクチンの利益と害について」[2]、No199「HPVワクチンの再開は大変危険」[3]で指摘したように、ワクチンに効果があるように見えたり、安全であるかのように見えたりする背景に、「健康者接種バイアス」が大きく関係しています。

HPVワクチンでいうと、病気がちの人はワクチン接種を避け、健康な人がワクチンを接種する(ワクチンを接種した人が接種しなかった人よりも元々健康である)ために、ワクチンでは防止できないHPV感染とは無関係の「がん」(非HPV関連がん)までもが、接種者には少ないように、結果のデータが歪んでしまうのです。さらには、さまざまな害についても、少なくみえるように歪んでしまいます。

この重要な問題、健康者接種バイアス(病者除外バイアス)について、改めて解説し、COVID-19ワクチンでもこの現象が明瞭に表れていることを示しましょう。

【1】健康者接種バイアス(healthy-vaccinee effects)と病者除外バイアス(frailty-exclusion bias)について

病気がちの人はワクチン接種を避け、健康な人がワクチンを接種することによって、ワクチンの効果は過大に評価され、害は逆に過小評価されます[2-5]。

このように、本来(真実)とは異なる歪んだ結果が生じることを、疫学的には、結果に偏り(バイアス)が生じるといいます。

このような偏り(バイアス)が生じる理由については、添付した資料のスライド番号11~17(図9~図15)に詳しく書きましたので、ご覧ください。

一般的に、この現象は、英語でhealthy-vaccinee effectsと言います。日本語では「健康者接種の影響」ということになります。ワクチンだけでなく他の薬剤にも適用できることを意識する場合には、健康者使用バイアス(healthy-user bias)という用語を使うのが適切でしょう。

日本語で表す場合、薬のチェックでは主に「健康者接種バイアス」を用いています。

一方、同じ現象ですが「病気がちの人はワクチン接種を避ける」という側面に注目して、病者選択バイアス(frailty-selection bias)が用いられることもあります。しかし、この用語は、「病気の人が選ばれて接種を受ける」と誤解されるおそれがあるため(実際そのように誤解した論文もありました)、薬のチェックでは2016年5月(65号)のHPVワクチンの分析に際して、病者除外バイアス(frailty-exclusion bias)を用いることを提案しました[4]。

ただ、その後は、健康者接種バイアス(healthy-vaccinee effects)のほうが分かりやすいという意見が医師も含めて多いため、健康者接種バイアス(病者除外バイアス)と表現してきました

したがって、健康者接種バイアスと、病者除外バイアス表裏一体の現象です。同じことを、ワクチン接種を受ける側、あるいは、ワクチン接種を避ける側という、異なる側面からみたものです。

今回は、この健康者接種バイアス(病者除外バイアス)が、COVID-19ワクチンについても顕著に表れていることを、英国の死亡率のデータを用いて論じます。

【2】方法の概略

(1)基本的な方法(別添:スライド2)

COVID-19ワクチン接種における健康者接種バイアス(病者除外バイアス)を検討のために用いた基本的な方法は、

①英国の2021年の予測年齢調整死亡率を2019年までの英国の公的統計データから推定し(後述図1、スライド3)[6]

②ワクチン接種者と非接種者(接種回数別)の2021年の年齢調整死亡率のうち、特に、死因がCOVID-19以外の死亡率(すなわち「非COVID-19死亡率」)および

③両者の比、すなわち「死亡率比」(リスク比)  を求めて比較しました(データの出典は添付資料スライド2、3参照)[7,8]。

主に、非COVID-19死亡率を比較

年齢調整死亡率は、総死亡率だけでなく、COVID-19による死亡率、および、今回主に分析の対象にした「非COVID-19死亡率」が報告されていました。非COVID-19死亡率は、ワクチンに害があれば増加する可能性があり、COVID-19死亡が非COVID-19死亡に分類されて増加することもありえます。しかし、COVID-19ワクチンによって減少することはないはずです。そこで、この死亡率を中心に検討します(スライド5~8;図3~6)。

(3)月ごとの年齢調整死亡率を用いる

ワクチンの接種率は、刻々と変化しています。幸い英国では、月ごとに、非接種者と接種者別(接種回数別)に、観察人年と、死亡者数から、年齢調整死亡率が計算されて公表されていましたので、月ごとの年齢調整死亡率を用いました。

(4)ワクチン接種者の接種回数別、接種後20日以内と以降で区別

年齢調整死亡率は、ワクチン接種者については、1回目接種20日以内と21日以降、2回目接種20日以内と21日以降、ブースタ(3回目)接種の20日以内と21日以降に分けて報告されていました。

これらの意味を少し解説しておきます。

①1回目接種20日以内の死亡は、ほとんどは2回目接種前の死亡と考えられます。

②1回目接種21日以降の死亡は、何らか(主に健康上)の理由で2回目が接種できなかった人の死亡、と考えることができます。

③2回目接種20日以内と21日以降の死亡は、初期の頃はワクチンを接種できた健康な人で、しかも1回目の接種にトラブルなく2回目も接種できた健康な人であったと考えられます。しかし、ブースタ接種が始まってからは、何らかの理由でブースタ接種を避けた、健康に問題がある人を意味します。

④3回目接種者は、2回だけでなく3回目も接種できた、健康な人ということがいえます。

【3】結果

(1)2021年予測年齢調整死亡率

2021年にCOVID-19が流行しなかったと仮定した場合の予測年齢調整死亡率の計算には、英国のOffice for National statisticsの以下のデータを用いました。Dataset:Deaths registered in England and Wales[6]

2010~2019年の年齢調整死亡率の回帰直線(y = -6.3552x + 13776)を延長した直線と2021年の交点は、932/10万人年であり、これを2021年の予測年齢調整死亡率推定値としました(図1:スライド3)。


データの出典:スライド2の1. または参考文献[6]参照

(2)COVID-19死亡者数とワクチン接種者数・割合の推移

参考までに、英国の2021年におけるCOVID-19による1日の死亡者数の推移と、ワクチン接種者数、およびワクチン2回接種の割合の推移を図2に示しておきます。 データの出典はOur world in Data(OWID)、Coronavirus Pandemic (COVID-19) [7] です。


英国では2021年の1月末にCOVID-19による死亡者数のピークがあり、同年4月~6月にはCOVID-19による死亡者数は極めて少なくなっていました。

参一見、ワクチン接種割合の増加に伴って死亡者数が減少したように見えますが、他の国の状況とも考え合わせると、ワクチンの効果とは言えません(註1)。

いずれにしても、4月~6月にはCOVID-19による死亡者数は英国でもほとんどなかったという点を、記憶しておいてください。

次項(3)で詳しく述べますが、4月~6月には、非接種者や、1回接種者で接種後21日以降に、非COVID-19死亡率が増加していることと、対比して考えてほしいからです。

註1:例えば、シンガポールはワクチン接種に非常に熱心で、2021年の8月には2回接種の割合が70%を超えましたが、そのころから特に大きい流行が始まり、9月末には死亡者が1億人あたり100人を超え、11月には最大400人(/億人)を記録しました。また、2022年の1月半ばに追加(ブースタ)接種割合が50%を超え、2月下旬には69%に達しました。ところがピーク時には感染者も死亡者数も1月半ばの20 倍に増え、1日最高約4万人が感染しました。日本の人口に換算すると80 万人相当します。ワクチン接種がCOVID-19の流行や死亡に、ランダム化比較試験で示されたほど役立っていないことが伺えます(スライド18参照)。

(3)非COVID-19年齢調整死亡率

COVID-19ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による発病者や重症者や、あるいはそれによって死亡する人を少なくする効果があるとされていて、前2者についてはランダム化比較試験で効力が証明されています。

しかしながら、COVID-19以外の感染症や心臓病、がんなど他の病気については、ワクチンの害によって増やす可能性はあっても、減らすことはまず考えられません。

したがって、もしも、ワクチン非接種者の非COVID-19死亡率が2021年予測年齢調整死亡率を上回っていれば、それは病者除外バイアスによる死亡率の増加と推定されます。

また、ワクチン接種者の非COVID-19死亡率が2021年予測年齢調整死亡率を下回っていれば、それは健康者接種バイアス(病者除外バイアス)による死亡率の減少と推定できるはずです。

この項目のデータの出典は、Office for National Statistics, Dataset[8]です。

1)非接種者の非COVID-19死亡率(図3)

図3に、非接種者の月別の
A.非COVID-19年齢調整死亡率、参考に2021年予測年齢調整死亡率、および、
B.2021年の予測年齢調整死亡率を基準(1.0)とした死亡率比(リスク比)
の推移を示します。


死亡率比が年平均1.8、COVID-19死亡が極めて少い4~6月の平均1.9など、非接種者の死亡率が約2倍であったのは、病気勝ちな人の多くが接種を避けた=病者除外バイアスの結果。

2021年1月から12月まで、一貫して予測死亡率よりも高くなっていました。年間平均で死亡率比は1.77でした。COVID-19死亡率が極めて少なかった4~6月では、1.9と、予測死亡率の2倍近くになっていました。

病気を抱えている人の多くが接種をしなかったため、つまり、病者除外バイアスの結果と考えられます。

2)2回接種後、3回目接種後の非COVID-19死亡率

図4に、2回目接種後と、3回目接種後(ブースタ接種後)の、
A.非COVID-19年齢調整死亡率、参考に2021年予測年齢調整死亡率、および、
B.2021年の予測年齢調整死亡率を基準(1.0)とした死亡率比(リスク比)
の推移を示します。


ワクチン接種が開始された初期には、2回接種できた人の非COVID-19死亡率は、予測死亡率の0.2倍(註:約5分の1)でした。つまり、ワクチン接種者は、一般人口よりも5倍健康であるということを示しています。

註:2回目接種20日以内死亡率比0.25、21日以降の死亡率比0.15を平均したもの。これら、死亡率比が0.15、あるいは0.25についての詳しい統計学的な検定結果は示さないが、統計学的にも有意であることは確実である。

この傾向は、2021年9月以降に始まったブースタ接種(日本の3回目接種に相当)の初期における死亡率比が0.2(死亡率が0.2倍)であることと共通しています。

いずれにしても、真っ先にワクチン接種を受け、しかも2回接種できた人や、真っ先にブースタ接種した人は、もともと、非常に健康な人であった、ということができます。

2回目接種後初期と、3回目接種後初期の、非COVID-19死亡率が著しく低い現象が、まさしく、健康者接種バイアスです。

一方、9月以降にブースタ接種が開始されてから、2回目接種後、特に21日以降の死亡率が急上昇しているのは、健康に問題が生じたために、ブースタ接種を避けたためと考えられます。病者はワクチン接種を避けるという、病者除外バイアスの典型的な例でしょう。

3)1回接種後の非COVID-19死亡率

図5に、1回目接種後の
A.非COVID-19年齢調整死亡率、参考に2021年予測年齢調整死亡率、および、
B.2021年の予測年齢調整死亡率を基準(1.0)とした死亡率比(リスク比)
の推移を示します。


ワクチン接種が開始された初期には、1回目接種後の死亡率は予測死亡率よりも低かったといえます。1回目接種後20日以内の死亡率比は0.62でした。ここまでは、健康であることがうかがえます。

しかし、1回目接種後21日以降の死亡者は、死亡率比が1.05と上昇しています。これは、通常2回目接種が行われるのは、1回目接種後21日目ですが、このときに接種を受けられない健康上の問題が接種後に生じた可能性が高い、と考えられます。

そして、その傾向が、特に2021年5月以降のCOVID-19による死亡がほとんどない時期に顕著になってきました。予測死亡率の5.4倍~6.8倍にまで上昇していました。

1回でも接種を受けた人は、ある程度は健康であったはずです。2回目接種が受けられないまま死亡したということは、少なくとも、予測死亡率を超えた部分は、ワクチンの害を示している可能性があるのではないかと推察します。

4)非COVID-19調整死亡率比(接種状況別まとめ)

図6に、非COVID-19年齢調整死亡率をワクチン接種状況別にまとめて示します。


5)非COVID-19死亡率比(接種状況別まとめ)

図7に、2021年予測年齢調整死亡率を基準(1.0)とした、非接種、接種回数別の非COVID-19死亡率比を示します。接種回数別の非COVID-19死亡率比は、接種後20日以内の死亡率比と接種後21日以降の死亡率比の平均値です。


ワクチン1回目の接種をした人は、接種が始まった初期の頃は非接種者よりも健康であったはずです。しかし、接種が進むにしたがって、ハイリスクの人にも接種がなされるようになり、そういうリスクのある人が1回目接種後20日以内に死亡したり、21日以降も健康がすぐれないために2回目の接種を控えて(避けて)いるうちに死亡した人が、多数いた可能性があります。

少なくとも2回目の接種を控えた(避けた)ことは、病者除外バイアスの現象そのものと言えます。そのうえに、相当部分がワクチンの害作用による健康障害である可能性があるでしょう。

この現象は、ブースタ接種が開始されてから2回目接種21日以降の死亡者に、特に顕著に表れています。

6)COVID-19死亡率、非COVID-19死亡率、総死亡率(接種状況別まとめ)

最後に、COVID-19死亡率、非COVID-19死亡率、総死亡率の推移を、COVID-19ワクチン接種の状況別に図8にまとめて示します。

これまで、非COVID-19死亡率について、健康者接種バイアス(病者除外バイアス)が明瞭に影響していたことを指摘してきましたが、同様の影響が、COVID-19による死亡率にも影響していること、したがって両者を加えた総死亡率にも影響している、という点を考慮しながら、図8をご覧ください。


ワクチン接種者のCOVID-19死亡率が、非接種者に比較して著しく低いように見えますが、これは、非接種者の死亡率が約2倍に過大表示されていること、ワクチン2回接種者の死亡率は、最大で5分の1と過少に表示されていることを見落さないようにして解釈する必要があります。

なお、健康者接種バイアス(病者除外バイアス)の起こり方についての理論的な解説をスライド11(図9)~17(図15)に示しておきました。ご覧ください。

参考文献

  1. 薬のチェック編集委員会、COVID-19ワクチン:心筋炎死亡率がとくに20~30代で上昇、薬のチェック. 2022:22(101):70-72.
  2. 薬のチェック編集委員会、速報版 No198(2021.12.28号)、HPVワクチンの利益と害について-「性の健康医学財団」での講演記録を公開
  3. 薬のチェック編集委員会、薬のチェック速報版 No199(2021.12.30号)、HPVワクチンの再開はたいへん危険
  4. 薬のチェック編集委員会、HPVワクチン被害と「病者除外バイアス」、薬のチェック2016:16(65):62-63.
  5. 薬のチェック編集委員会、「医学研究の方法」基本の「き」:No92号(2020-12)付録
  6. Office for National statistics, Dataset:Deaths registered in England and Wales
  7. Our world in Data(OWID)、Coronavirus Pandemic (COVID-19)
  8. Office for National Statistics, Dataset、Deaths by vaccination status, England

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