コクラン共同計画のチームが、タミフルなど、抗インフルエンザウイルス剤を用いても合併症としての肺炎などを防止する効果は認められなかった、再検討結果をまとめて、英国医師会雑誌(BMJ)に発表しました。関連の記事はこのほかにも多数あります。
この検討の基本方針に、林敬次医師(小児科医、医療問題研究会代表、NPO法人医薬ビジランスセンター理事)の意見が全面的に取り入れられ、非常に重要な役割を果たしました。そのことが論文の経過にも、 随所に記載されています。
これまでタミフルが肺炎などの合併症予防に効くとされていた最大の根拠はKaiserらの報告でした。この報告は、オリジナルの論文ではなく、10件のランダム化比較試験を総合したものでした。
そのうち、学術雑誌に公表された論文は2つだけで、あとの8件は、抄録などの類であって、第三者が分析可能なデータでありませんでした。2件の公表データを合わせても、合併症を有意に低下していなかったのです。
Kaiserらの論文は、したがって全く根拠といえないものであったため、「肺炎を予防する」効果は日本を含めて世界のどの国もタミフルの正式効能としては認めていなかったのです。
それが、あたかも、効果を証明したかのように扱われ、本年流行した09Aインフルエンザ(いわゆる「新型」インフルエンザ)において、WHOや各国政府がタミフルの使用を推奨する根拠となっていたのです。正式に承認はされていないのに、実際にはあたかも効くかのように扱われてしまったのです。その点を、林医師は適切に指摘したものです。
10件のうち8件の論文は評価できないため除外した。他の2件の証拠では、下感染症(肺炎)合併の危険度は0.55(95% 信頼区間:0.22-1.35)であった。臨床試験結果から、タミフルは嘔気を生じる(オッズ比は1.79:95% 信頼区間1.10-2.93)であった。まれな有害事象については、市販後データの質が低く、報告率が低い可能性がある。
ノイラミニダーゼ阻害剤は、ふだん健康な成人にはインフルエンザの症状を軽減する効果が少しある。インフルエンザ感染の機会があってから服用した場合には、検査で確認できるインフルエンザの予防には効果があるが、これはインフルエンザ患者のわずかでしかないので、この目的には有効ではない。季節性のインフルエンザに対する症状の軽減のためには、ノイラミニダーゼは選択肢になりうるかもしれない。しかしながら、オセルタミビルによる合併症の防止という点に関する従来の知見は、良質のデータを欠くため、土台から崩れてしまった。これら不明の点を解決するためには、独立したランダム化比較試験が必要である。
今回のコクランチームの再検討は、合併症の予防の証拠が不確かである、という点が明らかになったこと、その過程で、コクランチームのメーカーに対する要求にもかかわらず、メーカーがデータの提出を拒否した点が明らかになったという点で、大変意義があるといえます。
しかしながら、タミフルの害については、まだまだ不十分です。
この点に関して、一連のコメントをしているところです。ぜひともご覧頂きたいと思います。
早期のオセルタミビルの使用:2回使用し、2回とも呼吸抑制を起こし突然死した一例
これ以降が、コクラングループの論文に対するコメントです。
これは、速報No110タミフルのインフルエンザ予防:臨床試験で精神障害が多発していたことが判明あるいは、速報No116(2008年臨床薬理学会学会で発表した内容) の中の講演の1つ。
すべての、観察研究が、NSAIDsについて吟味することなく結果を出しているので、信頼できない、という内容です。速報No123で報告したrapid responseの内容をさらに発展させたものです。
これは、速報No128タミフルによる害:米国妊婦、メキシコ重症者で死亡危険が増大の内容に、最新のデータを加えて分析したものです。