薬のチェックTIP誌No57(p3~)SGLT-2阻害剤の記事の 追補資料表4をアップします。
ダパグリフロジンの膀胱がんの発症と関連した毒性所見として、がん原性試験に重要と思われるデータがあったので、 追補資料図3として紹介します。
2015年1月9日発表されたSGLT2阻害剤の重大な添付文書の改訂についても、お知らせします。
臨床試験で膀胱がんが多く認められたダパグリフロジンの毒性試験で、尿路感染につながりうる膀胱過伸展と腎盂拡張の割合が用量の増加とともに増えてた(依存性がある)ので、それを図示したものです。膀胱過伸展と腎盂拡張は、腎盂腎炎や膀胱炎など、尿路感染の増加につながりますし、臨床的にも、毒性試験でも認められていて、どのSGLT-2阻害剤の添付文書でも、注意が喚起されています。
また、尿路感染の持続は、膀胱がんの発生に関係していることが、大規模症例対照研究で認められています[1]。したがって、ダパグリフロジンはもちろんのこと、他のSGLT-2阻害剤においても、膀胱がんなど尿路系の腫瘍の発生の増加が十分に懸念されると考えられるため、特に、追補資料として示します。
なお、カナグリフロジンのがん原性試験では、最低量の30 mg/kgで腎尿細管腫瘍(癌も含む)が、ヒストリカルコントロール(当該施設のこれまでの対照群における発生率)に対し有意な増加を示していました。申請資料概要では、自然に発生するがんと同じタイプなので、カナグリフロジンによるものではないとしていますが、統計学的に有意ですし、膀胱がんの発生増加などとともに、尿路系のがんということで重要と考えます。
厚生労働省(厚労省)は1月9日、SGLT-2阻害剤6成分(国内未発売のエンパグリフロジン(ジャディアンス錠)を含む)の添付文書の「重大な副作用」の項目に、「脱水」関連事項の記載を追加するよう各製薬企業に指示しました[2]。
[2] http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/file/20150109frepno2.pdf 主な改訂内容は、これは、直近3年度で(販売開始から1年以内なので承認前からの症例を含めているのかもしれない)、イプラグリフロジン26例、ダパグリフロジン6例(うち死亡例1例)、トホグリフロジン9例(死亡例1例)が報告されたことから、注意事項の改訂となったものです。
SGLT-2阻害剤は、尿中にブドウ糖を大量に排出させることから、利尿作用と脱水などは、薬理作用であるとして、毒性試験では毒性扱いをしていませんでしたが、ヒトで実際に脱水が起きれば、厚労省も指摘しているように、血栓塞栓症や糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、不整脈、心不全、腎機能障害などが生じます。実際、すでに死亡例まで生じています。
ただ、厚労省の発表では、いずれの死亡例も因果関係が否定されていますが、否定の根拠は明らかでありません。
なお、トホグリフロジンの重大な副作用には、腎盂腎炎も追記されました(他のSGLT-2阻害剤にはすでに記載済み)。