イレッサによる肺傷害を主とする死亡の多発につき、厚生労働省の対策は遅々として進まない中、被害の数は増加の一途をたどっており、有害性に関する新たな事実が次々に明らかになってきている。承認前に判明していた有害性を示す動物実験結果を審査当局に提出しなかっただけでなく,研究者による研究結果の発表が妨害されていたことや,医師により最も重篤なランク(グレード4)として報告されていたイレッサによる副作用報告の重症度ランクが、厚労省の記録では低くなっているなど、途中で操作が加えられたことが明らかになってきた。
また、日本の臨床試験における有害事象の頻度、有害事象による死亡、副作用による死亡の頻度が、外国での臨床試験における頻度と比較してあまりにも低いことにこれまで注目していたところ、市販後の副作用死亡率はすでに臨床試験時の4倍もの高頻度となってきた。
ソリブジン事件やピモベンダンなど、これまでの臨床試験において有害事象の重症度や試験物質との関連を軽く分類する傾向があったが、この傾向は,最近のピオグリタゾン(アクトス)の臨床試験でも同様であった。
イレッサの臨床試験においても繰り返されているとすれば、外国に比較して低い有害事象死亡率、副作用死亡率は、すべての生データが開示され、再検討されるまでは信頼できない。当初からその可能性を指摘してきたが、今、それがまさしく証明されつつある。
この問題の重大性に鑑み、NPO法人医薬ビジランスセンター(理事長;浜六郎)、医薬品・治療研究会(代表:別府宏圀)、福島雅典(京都大学大学院医学研究科、社会健康医学系専攻健康解析学講座、薬剤疫学分野、教授)の連名で、2003年2月28日、公開質問書を厚生労働大臣およびアストラゼネカ社に提出した。
また、回答を待つ間にも、多数の被害者が生まれることが憂慮されるため、イレッサの販売および使用を(臨床試験による使用も含め)中止するよう、アストラゼネカ社および厚生労働大臣に対して申し入れる要望書を同時に提出した。