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アスピリンについていただいた問い合わせに一言。心筋梗塞の予防やリウマチに使用されるアスピリンの効果は世界的に定評がある。今、問題にしているのは、あくまでも解熱剤として使う場合の事です。

さて、米国ではアスピリンが解熱に使われなくなると脳症の1種「ライ症候群」は激減した。だが、日本でも同じように使わなくなったのにライ症候群やインフルエンザ脳症は少し減っただけ。毎年、数十人から200人余りの患者が出ている。

なぜか。日本では、もともと子供の解熱剤は、アスピリンがあまり使われず、メフェナム酸(商品名・ポンタールなど)やジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)の非ステロイド抗炎症剤が使われてきた。

抗炎症作用のてんでは、これらはアスピリンとほぼ同じか、むしろ強力なほど。だから当然、これらの抗炎症剤は危険と考えて使用を控えるべきだった。

私はずっとその危険性を訴えてきたが、ようやく一昨年から、その害がクローズアップされてきた。厚生省の研究班で、ジクロフェナクやメフェナム酸などを使うと、インフルエンザ脳症になって死ぬ危険が3〜14倍高まるとの結果が出たのだ。

私が調べたところ、94年度の厚生省研究班報告以来、多くのデータが見過ごされてきた。かぜやインフルエンザに使うとライ症候群になる危険は13〜50倍、死ぬ危険は18倍、などだ。

子供への危険性はわかったが、大人にはどうかという質問をよく受ける。やはり危険と考えるべきだ。医療現場ではまだよく使われている。患者さんは自営のために、抗炎症剤系の解熱剤は使わない方が良い。

子供が高熱を出した場合でも、解熱剤の副作用を考えると40度少しまでは我慢してよい。それまでなら、熱だけで脳にダメージがおきる事はない。

薬を使わない解熱法でも、欧米のようにぬれタオルで全身を拭いたり水風呂に入れたりする方法は、子供には不快なだけでなく悪寒せんりつを起こして有害だ。生姜湯などの温かい飲み物を飲み、水枕で頭を冷やすなどの日本のこれまでの方法が優れているようだ。

熱で死ぬ事はまずないが、解熱剤で死ぬ事は、少なくない。これは忘れないで。

薬の診察室 (朝日新聞家庭欄に2001年4月より連載)  医薬ビジランスセンター
                                  浜 六郎